ヴィグモア日誌(11)
ヴィグモア・ホールの秋シリーズ、11月の第4週は月曜日の昼・夜に加えて、火曜日の夜にもコンサートがありました。何れも無観客、3つのコンサートを紹介しておきましょう。1か月間はユーチューブで視聴可能です。
11月23日(月)のマチネは、エリアス弦楽四重奏団 Elias String Quartet にクラリネットのロバート・プレーン Robert Plane を迎えてのコンサート。とは言いながら、エリアス弦楽四重奏団のメンバーのうち、ヴァイオリンのセーラ・べトロック Sara Bitlloch とヴィオラのシモーン・ヴァン・デア・ギッセン Simone van der Giessen が海外渡航規制のため出演できず、代わってヴァイオリンがジョナサン・ストーン Jonathan Stone 、ヴィオラはエレーヌ・クレマン Helene Clement が代演しました。プレーンは英国のクラリネット奏者で、現在はBBCウェールズ・ナショナル管の首席クラリネットでもあります。ナクソスやシャンドスに多くの録音があり、NMLでも視聴可能。
曲目は2曲、前半のベートーヴェン、弦楽三重奏曲ハ短調作品9-3はストーン、クレマンと、エリアスのメンバーであるマリー・べトロック(チェロ)の3人による演奏です。後半はサー・アーサー・ブリスのクラリネット五重奏曲。この作品はどうやら二つの版があるようで、nkoda でスコアが閲覧できる第2版での演奏でした。
月曜日の夜は、本来ならトリオ・ガスパール Trio Gaspard が出演してベートーヴェンやサン=サーンスを弾く予定でしたが海外渡航制限のため出演できず、アラン・クレイトン Allan Clayton とジェームス・ベイリュー James Baillieu のデュオ・リサイタルに変更されました。このコンビは10月21日にもブリテンなどのプログラムでリサイタルを行っていて、この秋二度目の登場となります。
この日もブリテンへのオマージュで、二つの歌曲集、ヘルダーリンの6つの断章作品61と「この子らは誰か Who are these Children? 」作品84が取り上げられました。2曲の間にシューマンのリーダー・クライス作品39が歌われましたが、この作品もピーター・ピアースとブリテンがヴィグモア・ホールで演奏し、録音もCD化されているもの。ヴィグモア・ホールと関係が深かったブリテンを中心にしたプログラムと言えるでしょう。
最後に演奏された作品84は、12曲から成る歌曲集です。アンコールは、英国民謡「There’s none to soothe」をブリテンが編曲したものでした。
そして11月24日(火)の夜、当初の発表ではレオニダス・カヴァコスとエンリコ・パーチェによるベートーヴェン・プログラムが予定されていましたが来英できず、最近話題となっている英国の若手による弦楽アンサンブル、12アンサンブル 12Ensembleに変更となりました。
彼らは去年プロムス・デビューを果たし、これがヴィグモア・ホールのデビュー・コンサートとなります。男女6人づつ、構成は4-3-2-2-1の12人で、中央奥のコントラバスを中心として扇状に対向配置され立奏するスタイル。ヴィグモア・ホールの狭い舞台では全員が乗り切らず、客席との間に特設ステージを設けて2人(ファーストとセカンド・ヴァイオリン)が乗っていました。
演奏されたのは4曲、冒頭のダウランド/Lachrimae Antiquae(マックス・ルイージ編)と次のキャロライン・ショウ Caroline Shaw (1982-)/間奏曲は、休みを置かず続けて演奏されます。ショウは、アメリカのノース・カロライナ生まれ。2013年にピューリッツァ音楽賞受賞しており、ヴァイオリンにスト、歌手でもあるそうな。
3曲目がメインで、バルトークの弦楽のためのディヴェルティメント。最後は演奏の熱気を冷ますようにトーマス・アデスの弦楽四重奏曲「アルカディアーナ」作品12から第6楽章「O Albion」で締め括られます。アルカディアーナは7楽章で構成されている弦楽四重奏曲で、12アンサンブルは弦楽合奏版として演奏しました。
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