第390回鵠沼サロンコンサート

昨日12月1日から今年も愈々師走、今年最後となった鵠沼サロンコンサートに出掛けました。帰りが遅くなることもあり、今シーズン初めてコートを引っ張り出します。
2020年12月初めの段階で未だ海外、特にアメリカやヨーロッパとの海外渡航が制限されている中、鵠沼ではこれを逆手に取って若い日本人演奏家を紹介しています。昨日は将来を大いに嘱望されているヴァイオリニスト、外村里紗(ほかむら・りさ)が登場し、ピアノの横田知佳(よこた・ちか)と組んでのデュオ・リサイタルが行われました。曲目は当初のチラシ等で発表されていたものから若干の変更があり、以下のもの。

ベートーヴェン/ロマンス第2番ヘ長調作品50
ベートーヴェン/ヴァイオリン・ソナタ第8番ト長調作品30-3
     ~休憩~
グリーグ/ヴァイオリン・ソナタ第3番ハ短調作品45
サン=サーンス/序奏と輪舞・カプリチオーソ作品28
 ヴァイオリン/外村里紗
 ピアノ/横田知佳

感染症対策の為に客席の間は広めにとられ、30名弱の聴衆はほぼ年間会員で満席。この状態はいつまで続くのでしょうか。

冒頭、平井プロデューサーが発したのは、“今日は外村里紗さんのリサイタル。外村さんは2001年生まれ、若いですねェ~” という一言でした。女性の年齢を明かすのは御法度かも知れませんが、未だ19歳という若さが許してくれるでしょう。プログラムにも明記されていましたから、ここでも書かせて貰います。
続いて2018年、インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで2位。最年少ファイナリストを記録し、日本人としては6大会24年振りの受賞という経歴も紹介。インディアナポリスのコンクールは相当な難関で、4年に一度開催され、ここでの第2位は快挙なのだそうです。このコンクール、第1回は1982年に開催され、第2回となる1986年に竹澤恭子が優勝。外村は竹澤以来の快挙なんですね。
同じ2018年にはニューヨークで開催されたヤングコンサートアーティスツ(YCA)国際オーディションにも合格。こちらは3年間のマネジメント契約とニューヨーク、ボストン、ワシントンでのデビュー・リサイタルを約束され、これまた日本人としては神尾真由子以来の快挙となりましたが、例の流行病のため予定が立たず、偶々日本に残っていた彼女にプロデューサーが声を掛け、実現したのがこの日のリサイタルなのです。

本来なら今頃はニューヨークを中心にアメリカ中を駆け回っていたはずですが、何と鵠沼に出現。その圧倒的なパワーを全開させてくれました。余り遠くない将来、鵠沼で外村里紗を聴いたよ、というのがファンにとっても勲章になることは間違いなさそうです。
一方ピアノの横田は、2008年大阪国際室内楽コンクール・ピアノトリオ部門で日本人としては初の第3位。ソロの他、アンサンブル・ピアニストとして活躍中という若手。これまた達者なピアニズムで外村をサポートします。

前半は、今年生誕250年のベートーヴェンから2曲。本来は管弦楽伴奏のロマンスをピアノ伴奏版で。続いては作品30の3、今年は聴く機会が極めて多いト長調のソナタです。確か秋のヴィグモア・ホールからのライブ配信でも2度取り上げられていたと思いますが、一部でドラえもん・ソナタと呼ばれているもの。出だしがドラえもんのテーマにそっくりなことから名づけられた一般には通用しないニックネームですが、すっかり耳に馴染んでしまいました。
前半から外村の音楽が卓越したものであることは明らか。ピンと張りのある音色、小気味よいフレージング、迷いのない推進力と、予想以上に音楽の大きさを感じました。2018年の二つの快挙に納得です。

後半のグリーグは、G線が唸る、唸る。ホールでの演奏では残響や演奏者との距離で細部がボカされることもありましょうが、眼前のサロンではテクニック上の誤魔化しは一切無用。まるで楽譜と首っ引きで聴いているようで、曖昧さの微塵もないグリーグを満喫しました。手が痛くなるまで拍手、拍手。
トリはサン=サーンスの誰でも知っている名曲。多分殆どの人は気付かなかったと思いますが、サン=サーンスの没年は1921年ですから、あとひと月で年が明ける来年は没後100年の記念の年になります。生誕250年のベートーヴェンで始め、来年没後100年を迎えるサン=サーンスでリサイタルを締め括って2021年にバトンタッチ、というプログラム。中々洒落ているじゃありませんか。

尤も、嵐のような拍手に応えてクライスラーの中国の太鼓がアンコールされましたが・・・。

鵠沼サロンコンサートは、これまで9月から6月までをサイクルとするシーズン制になっていましたが、今期は春シーズンが全て中止に追い込まれたため、丁度半年づれ込んだことになります。ということで、来年からは暦の一年を1シーズンとすることに変更されました。新たに会員になられたい方は、2021年3月からの1年が年間会員の対象となります。(厳寒期の1・2月、猛暑の7・8月は演奏会がありません)
この12月例会が390回だったということは、節目となる400回が迫ってきたということでもあります。順調にいけば2022年4月が記念の回。どんなプログラムが組まれるのか、誰が登場するのか、楽しみに待つことにしましょう。

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