竹澤恭子・ヴァイオリン・リサイタルⅢ

前日とは一変、冷たい雨の中をサントリーホールに向かいます。其々に用事があるので現地集合ということで、今日は電車。駅に付くまでの間に濡れ鼠になりましたワ。

そんな雨でも、ホールは良く入っていました。確か日本フィルの定期二日目が終わった後、7時からが竹澤リサイタルです。
会場には見慣れた顔も多く、熱心な室内楽ファンから批評家まで。家内の話では往年の大女優も来ているとかで、開場は華やかな雰囲気に包まれていました。

プログラムは、

ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第1番ト長調作品78「雨の歌」
ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第2番イ長調作品100
     ~休憩~
ブラームス/ヴァイオリン・ソナタ第3番ニ短調作品108
 ヴァイオリン/竹澤恭子
 ピアノ/イタマール・ゴラン

ご覧の通りオール・ブラームスで、竹澤のデビュー20周年を記念するシリーズの3回目。去年の11月に紀尾井ホールで行われた2回目は、小日記でもレポートしました。

その時にも書きましたが、これは「竹澤恭子/イタマール・ゴラン・デュオ・リサイタル」と表記するのが正しいはず。もちろん竹澤がメインの企画ではありますが、表記は正しくすべきでしょう。

そもそも出演者が二人までをリサイタルと言い、三人以上が登場するのはコンサートと言います。その上で、二人の場合はデュオ・リサイタルが正しい呼称。尤も、伴奏そのものがあまり重要でなく主役の存在が極端に大きい場合は、たとえ演奏者が二人であっても個人のリサイタルでも構わないでしょうが・・・。
ということで、この日は内容から考えても立派なデュオ・リサイタルです。

この地味なプログラムをサントリーの大ホールという大きな空間で聴くこと自体が私には馴染めないのですが、リサイタルが始まってしまえばほとんど気にはなりません。
それでももっとインティメートな空間で聴きたかった、という恨みは多少残りますね。これは、このホールで室内楽を聴くときにいつも感じること。

因みに、このプログラムによるリサイタルはツアーになっていて、11月29日が名古屋(愛知芸術劇場コンサートホール)、12月3日・大阪(いずみホール)、4日・浜松(浜松市教育文化会館)と開催され、この後は6日・松本(ザ・ハーモニーホール)、9日・札幌(札幌コンサートホール・Kitara)と続きます。
(年を越した1月30日には京都でも行われる由。京都コンサートホールの小ホールで、ピアノは江口玲に替ります)
ま、何処もあまり室内楽向きのスペースではなさそうですね。

今回のプログラムは既に今年の5月から6月にかけて軽井沢でレコーディングされ、正に満を持してのツアー。竹澤の意気込みが開場を圧するという雰囲気で進められました。

第1番を終えた後、二人は一度袖に戻っただけで続けて第2番を演奏。休憩なしで第3番も弾けてしまいそうな迫力を感じます。

パートナーのゴランのピアノ(もちろんスタインウェイ)もブラームスにはピッタリ。タップリとした音量と暖かい音色が竹澤のソロを引き立てます。いや、引き立てるという表現は間違いで、ブラームスには不可欠な対等の存在です。
特にハンス・フォン・ビューローを念頭に置いて書かれた第3番での合奏は立派。客席も見事に反応して大喝采に包まれました。

竹澤のヴァイオリンはプログラムが進むごとに情念が高まって行くようで、3曲共に緩徐楽章の歌い込みに現在の彼女の心境が良く出ていると思いました。一言で言えば「充実」。
脂の乗り切った竹澤、創作の絶頂期にあるブラームスを堪能しました。

リサイタルには付きもののアンコール。予想されたスケルツォ楽章ではなく、先ず取り上げたのがシューマンの「ロマンス」。詳しくないので判りませんが、多分オーボエ用のものをヴァイオリンにアレンジした1曲でしょう。

続いてはお馴染、ブラームスのハンガリー舞曲第1番。ここでは思い切りルバートを利かせて、開場は興奮の坩堝と化します。

最後は竹澤自らが曲名を告げ、“フォーレの「夢のあとに」” 。彼女はヴァイオリン演奏の逞しさからは想像が付かないほどに可愛い声の持ち主。そのギャップもまた楽しいのですよね。

終演後、当然ながら長いサイン会の列が出来、彼女の人気の高さを証明していました。

 

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