NHK交響楽団第1640回定期演奏会

NHK交響楽団をマトモな席で聴くのは実に久し振りです。この前は何時だったか思い出せないほど昔。
今日のコンサートは1640回定期の二日目で、知人の知人が都合で行けなくなり、直前になってご案内頂きピンチヒッターに立ったものです。渋谷に降り立ったのも久し振り、キョロキョロしながらNHKホールに向かいます。
実は演奏曲目だけは聞いたのですが、指揮者が誰なのかも知らずに出掛ける体たらく。プログラムを開いて初めて目にしたのは、
スメタナ/交響詩「わが祖国」全曲
 1.高い城
 2.モルダウ(ヴルタヴァ)
 3.シャルカ
     ~休憩
 4.ボヘミアの牧場と森から
 5.ターボル
 6.ブラニーク
  指揮/ラドミル・エリシュカ Radomil Eliska
  コンサートマスター/堀正文
私がN響の定期会員だったのは気の遠くなるほど昔のことで、最近はナマはおろか、放送すら聴いていない始末。とても普段のN響と比べて云々は語れません。
しかしそれでも、この日の演奏がとてつもなく素晴らしいものであったことは断言できましょう。
冒頭のハープから最後の一音まで、音楽には何処にも緩みが無く、終始充実したオーケストラの響きがホール一杯に鳴り渡っていました。
私はNHKホールで音楽を聴けば必ず何か不満を抱くのですが、今日は全くそういうことはなく、満足し切って家路につく事が出来ました。(1階L席)
エリシュカという指揮者は1931年生まれ、何故今まで視界に入ってこなかったのか不思議なほどですが、相当な実力の持主に違いありません。
スメタナやドヴォルザークを得意にしているのは当然でしょうが(チェコのドヴォルザーク協会会長だそうです)、スコアの隅隅まで熟知し、些かの妥協も無く、毅然とした態度で作り上げる音楽の立派なこと。
その指揮振りは一切の無駄を排し、それでいて必要な支持は全て与えていきます。
一箇所、ターボルの冒頭のホルンが落ちかけた時、エリシュカの鋭い視線がホルン群を射抜きます。ビリッとした電気が走り、オーケストラは極度の集中力を維持し続ける。
恐らく相当に厳しいリハーサルをする指揮者だと思われます。彼のような説得力と権威に満ちた巨匠の手に掛かった時のN響の凄さ。それは間違いなくわが国のザ・ベスト・オーケストラと称えて憚りません。
帰ってから慌てて Radomil Eliska を検索してみましたが、海外のネットでも真っ先に出てくるのが札幌交響楽団のサイト。
どうやらこういうことのようです。
エリシュカは2004年に東フィルと名古屋フィルに客演。続いて2006年に札幌交響楽団を指揮したときに大ブレイクしたそうです。
何でも金曜日(定期初日)にエリシュカを聴いた会員が素晴らしさに気付き、これが口コミで伝わって土曜日(二日目)のチケットが完売。
これが切っ掛けで、エリシュカは札響の首席客演指揮者に就任するのです。
要するに、札幌の客演がなければ、その定期を聴いた人達が彼の凄さに気が付かなければ、現在の日本での評価は無かったのかも知れません。
ここは彼を客演に選んだ尾高監督の慧眼と、札幌の聴衆の耳の確かさに感謝しなければなりますまい。
これでまた札幌に行く口実が出来たようなもの。次は何時じゃ。

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