ウィーン国立歌劇場公演「ナブッコ」(無観客オンライン)

虫の知らせと言うんでしょうか、もしやと思って今朝ウィーン国立歌劇場のホームページを開いて正解でした。日本時間の1月23日の早朝からヴェルディ「ナブッコ」の無観客公演が配信されています。
当初の発表では現地22日夜に舞台上演があり、その模様を24日に放送する予定でしたが、急遽ライブでのストリーミングに変更されたようですね。いずれ再放送があるものと思いますが、ウィーン国立歌劇場に登録されている方は、早速回線を繋がれるよう注意を喚起しておきましょう。以下のキャストです。

ナブッコ/プラシド・ドミンゴ Placiso Domingo
イズマエーレ/フレッディー・デ・トマソ Freddie De Tommaso
ザッカリア/リッカルド・ザネラート Riccardo Zanellato
アビガイッレ/アンナ・ピロッツィ Anna Pirozzi
フェネーナ/シルヴィア・ヴェレシュ Szilvia Voros
バールの祭司長/ダン・パウル・ドゥミトゥレスクー Dan Paul Dumitrescu
アブダッロ/ダニエル・イェンツ Daniel Jenz
アンナ/オーロラ・マルテンス Aurora Marthens
指揮/マルコ・アルミリャート Marco Armiliato
演出/ギュンター・クレーマー Gunter Kramer
舞台装置/マンフレッド・ヴォス Manfred Voss 、ペトラ・ブッフホルツ Petra Buchholz
衣装/ファルク・バウアー Falk Bauer
照明/マンフレット・ヴォス Manfred Voss

9月に始まったウィーン国立歌劇場の新シーズンは、ロックダウンに伴って無観客公演が続いていました。前回は大晦日に行われた「こうもり」でしたが、今回の「ナブッコ」は2021年最初の舞台上演。
実は前日の1月21日、今回のタイトルロールを歌うプラシド・ドミンゴが80歳の誕生日を迎えたということで、ウィーン国立歌劇場で内々のお祝いも行われたようです。もちろん感染防止に配慮してささやかな催しだったことは想像に難くありませんが・・・。

そんなこともあり、この日の配信は80歳のドミンゴの初仕事。それをほぼ同時間に日本でも楽しめたのですから、クラシック音楽の楽しみ方も変わってきたものです。先ずはドミンゴに祝意を贈ろうではありませんか。
映像が飛び込んできて最初に気付いたのは、オーケストラのピットが思い切り広げられていること。もちろんピット内が密になることを避け、客席前方を取り払って舞台も手前に広げているようにも見えます。「こうもり」でも触れましたが、無観客であることを巧みに利用し、カメラワークもこれまでのアーカイブ放送とは違って様々なテクニックを駆使したもの。何より画質が素晴らしく、これを大画面のモニターで見れば実際に劇場で体験する以上の情報が得られること間違いなしですね。

クラシック音楽の楽しみ方はあくまでも実際に演奏現場に出掛けてナマ体験することが基本でしょうが、レコード録音が発明され、更には映像を伴う収録技術が進んでより多くのファンを産み出してきました。
昨今はライブストリーミングというジャンルが疫病の流行を受けて急速に拡大してきましたが、これまでの録音録画とは比べ物にならないほどのリアリティーを実現しているように感じます。音楽生活がコロナ以前に復活したとしても、この新たなジャンルは消えることなく、更に発展していくのではないかと思慮するほど。そんな妄想も膨らむほど、「ナブッコ」配信は優れた出来栄えだと感心しました。

クレーマー演出は、何処でだったかは思い出せませんが、かつて見たことがあります。紗幕と鏡を使い、紗幕に古代文字を映し出していくもの。現代に読み替えた舞台とも言えるものですが、セミステージを設けた演奏会形式に近い上演形態とも見れるでしょう。
序曲のアンダンティーノで子供のバレエがあり、有名な第3幕第2場の合唱「行け我が思いよ、黄金の翼に乗って」は全員が横になって歌い始め、徐々に立ち上がって歌い進められます。

無観客なので、当然ながらアリアの後での拍手歓声はありません。しかしこれが却って好都合。「ナブッコ」の様な伝統的な番号オペラでは、一定の規則が存在していることを改めて実感できました。
例えばアリアの形式は、(1)序奏 (2)シェーナ (3)カヴァティーナ (4)シェーナ (5)カバレッタ という具合に五つの部分で構成され、登場人物も複数であるのが当たり前。そしてカヴァティーナでは主役が聴かせ所のアリアを歌い、その後に客席からブラヴォ~が掛かって音楽は暫し中断というのが現代の慣習ですが、客席からの邪魔が入らない無観客公演なら、作曲者が意図した本来のアリアの形が味わえることになります。

その意味でも、ライブストリーミングがもたらした芸術的効果は大きいと言えるのではないでしょうか。皆様も是非、その辺りを念頭に置いて楽しんでください。
実際に現場で上演されたものの配信ですから、第2幕と3幕の間に休憩が入ります。休憩の間に放映されるプラシド・ドミンゴのプロフィールも貴重なもの。但しドミンゴは英語で話し、字幕はドイツ語だけです。あ、本編では日本語字幕も選択できますから安心してくださいな。

全編が終わり、カメラに向かってのカーテンコール。舞台の上と下で互いの健闘を拍手で称え合います。
番組は最後まで見てください。映像が終了したあと微かに聞こえてくる、出演者が唱和する「Happy Birthday dear Placido!」を聴き逃さないように。

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2件のフィードバック

  1. 愛好家 より:

    いつも楽しみに拝読しております。
    オケピットですが、おそらく通常通りの広さだと思います。カメラが超広角、かつ、いつもと異なる高さからの撮影であるために広げられているように見えますが、両袖の出入口の位置関係を見る限り通常通りです。
    私も最初「オケピット広っ!」と思いましたが、よくよく見たらいつも通りだと。
    それにしてもドミンゴが80歳で、未だこうして主役を務めるとは。ただただ驚嘆です。

    • メリーウイロウ より:

      愛好家さま

      オケピットのご指摘、ありがとうございます。現地に行ったことがないもので、見た目で決めつけてしまいました。
      やはり広角レンズを使用しているのでしょうね。舞台もこれまでの配信に比べて隅々まで映し出されており、斬新な感じでした。客席の配列が湾曲しているように見えるのもその所為でしょうか?
      コロナが収まったら、一度出かけてみたいと思っています。

      メリーウイロウ

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