今日の1枚(62)

今日は2枚組みのCDを取り上げます。「ブラームス交響曲全集」、ユニバーサル・クラシックの UCCP-3338/9(476 9511) というもの。

①ブラームス/交響曲第1番ハ短調作品68
②ブラームス/交響曲第2番二長調作品73
③ブラームス/交響曲第3番へ長調作品90
④ブラームス/交響曲第4番ホ短調作品98

1枚目に①と②、2枚目に③と④が収録されています。全てエドゥアルド・ヴァン・ベイヌム指揮アムステルダム・コンセルトへボウ管弦楽団の演奏で、本拠地アムステルダムでの録音。録音日付は、
①1958年10月6日と7日、ステレオ録音
②1954年5月17~19日、モノラル録音
③1956年9月24日と25日、モノラル録音
④1958年5月1~3日、ステレオ録音
①と④は「今日の1枚」(47)と(48)で取り上げたものと同一音源ですから、今回は省略。従って②と③だけを扱います。

②はベイヌムとコンセルトへボウ管弦楽団のフィリップスへの初録音でした。
オランダをベースにするフィリップスがコンセルトへボウを録音するのは至極当然の成り行きですが、レコード事業をスタートさせた1950年の時点で、ベイヌムはデッカの専属アーティストでした。ベイヌム/コンセルトへボウはデッカの看板でもあったわけですね。
当初フィリップスはコンセルトへボウとも録音していますが、指揮者はケンペンとヨッフム。特にケンペンは政治的理由でコンセルトへボウからは嫌われていた存在でしたから、ベイヌム獲得はフィリップスにとって悲願だったはずです。
ベイヌムは1951年シーズンでロンドン・フィルの指揮者を降り、デッカとの専属契約も満了したことから、漸く1954年になってコンセルトへボウとフィリップスへの録音が可能になったわけです。
ブラームス第2は、その第一号。
これまでのデッカ録音に比べると、各パートの分離や解像度こそ落ちるものの、オーケストラ全体の響きはより円やか。フィリップスの特徴が早くも現われています。
デッカが指揮台で聴くようなバランスなのに対し、フィリップスはホール中央から後方の席で聴く感じに録られています。
演奏も当時の傾向からすれば中庸の美徳。トランペットやティンパニを強調する「爆演」が好きな人には物足りなく感じられるかも知れませんが、聴けば聴くほど味が出てくる「スルメ」タイプの名演です。
第1楽章の繰り返しは省略。当時は省略することが普通でした。

③は第2の1年後の録音だけあって、演奏・録音共一層滑らかになった感じがします。
個人的には、ブラームスの第3を初めて手にしたのがベイヌム盤。最初は曲そのものがよく判りませんでしたが、繰り返しこれを聴いて育ったので、懐かしさは一入です。
(因みに、第1はクリップス/ウィーン、第2がベーム/ベルリン、第4はクレンペラー/フィルハーモニアで初体験しました)
今回改めて聴き直し、初めて気付いたことがあります。
それは第4楽章の展開部、第141、143、146、147小節(もしかすると148小節も。モノラル録音なのでハッキリ聴き取れませんが)のトランペットはスコア通りではなく、木管と同じ音型を吹かせています。
恐らく伝統的な加筆だと思いますが、他の演奏も注意して聴いてみましょう。
こちらも第1楽章の繰り返しを省略しています。ベイヌムとしては意外ですが、収録時間の制約でもあったのでしょうか。

参照楽譜
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.131
③ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.132
ところで、ユニバーサル・クラシックのベイヌム・シリーズは、全てベイヌムの写真を使った何種類かのデザインによるカヴァーで統一されていて、あまり感心したものではありません。
(日本では「ジャケット」という言い方が一般的ですが、英語では Cover が普通に使われているようです)
この点では、既に47と48で紹介したフィリップス50周年のディスクに使われたカヴァーが断然優れていますね。
これは所謂LP初出の際のオリジナル・カヴァーで、デザイン的にも美しいと思いました。
特に(48)は、以前の日記で紹介した CLASSIQUE, Cover Art for Classical Music にも掲載されている一品。

 

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