今日の1枚(75)

今日は時間を遅らせて品川区民公園をふらついてきましたが、既にシャガやムラサキケマンが開花しています。
脚を伸ばして八潮公園にいくと、思いがけずカワセミの食餌に遭遇。ついつい長居をしてしまいました。
昨日はナマ演奏による素晴らしいピアノを聴きましたので、とてもレコードなどには手が出ません。あれだけの演奏なら数日間は何も聴かずに過ごしたいところ。
しかしそれでは何時まで経ってもレコード棚の整理が付きませんので、鞭打つように「今日の1枚」を再開しましょう。来週のコンサートに備えて予習するのは、アッテルべりの第6交響曲です。
これは来る18日に大阪シンフォニカーによって日本初演が予定されていますが、そのまま東京でも公演が行われます。好奇心あるクラシック・ファンは必聴のコンサートと申せましょう。
予習CDはスウェーデンのBISから発売されていたもの。CD-553 というアルバムで、
①アッテルべり/交響曲第6番ハ長調作品31「ドル交響曲」
②アッテルべり/「ヴェームランド狂詩曲」作品36
③アッテルべり/「言葉の無いバラード」作品56
いずれも広上淳一指揮ノールショピング交響楽団によるディジタル録音。データは、
①1992年1月17・18日
②と③は1992年2月7日
スウェーデンのリンケーピング・コンサートホールでの収録、プロデューサー名は記載が無く、エンジニアは①が Siegbert Ernst 、②と③は Robert Suff とクレジットされています。録音機材についても記載がありますが、それは煩わしいので省略。
プロデューサー名がありませんが、恐らくBISですから創設者のロベルト・フォン・バールではないかと思われます。
広上の録音ということで発売早々に購入しましたが、曲に馴染みが無く、長い間眠らせておいたもの。最近になってスコアが復刻され、今回改めて聴き直しました。中々素晴らしい録音であることを確認。
スコアの解説が詳しく、それによると「ドル交響曲」の世界初演は1928年10月15日、ケルンにてヘルマン・アーベントロート指揮ギュルツェニッヒ管弦楽団の演奏。
世界初録音はこれに先立ち、内密にその年の8月12日、トーマス・ビーチャム指揮ロイヤル・フィル。ロンドンのスカラ劇場でコロンビアによってなされています。
この年にはアッテルべり本人の指揮、ベルリン・フィルによる録音もポリドールから発売。
第3の録音は15年後の1943年、トスカニーニ指揮によるもの。それから暫く正規な新録音は現われず、何とほぼ半世紀が経過した1992年に広上淳一とノールショピングがレコーディングした、ということがスコアにも書かれています。
このCDはやや問題があって、それは録音レヴェルが極めて低く抑えられていること。アンプのヴォリュームを通常聴くレヴェルに設定していたのでは、何とも頼りない音に聴こえてしまいます。
ここは思い切りヴォリュームを上げて聴くことが必要。そうすれば極めてバランスの良い、音響的にも音楽的にも素晴らしい音空間が拡がります。
ただしヴォリュームを上げ過ぎて近所から苦情が来ても当局は一切関知しませんから、その積りで・・・。
①はアメリカ・コロンビアがシューベルト没後100年を記念した国際作曲コンクールで優勝した作品。長い経緯が面白いのですが、それは別途記事にしましょう。
全3楽章、特に第2楽章の出だしは一瞬シューベルトの「未完成」交響曲を連想させますが、偶然とも思えません。
この楽章のメイン・テーマを吹くのはクラリネット首席?奏者、ジョニー・ヤンネソン Johnny Jannesson とクレジットされています。まるで日本の演歌を思わせるようなメロディー。三度繰り返されますから、何度か聴いている内に覚えてしまいました。
②はスウェーデンのノーベル文学賞作家であるセルマ・ラーゲルレーヴ Selma Lagerloef (ラーゲルリョフと表記されることもあります)の75歳の誕生日を記念して、スウェーデン放送協会がアッテルべりに委嘱した作品。
8分半ほどの作品ですが、ラーゲルレーヴがこよなく愛したスウェーデンのヴェームランド地方の民謡を用いた親しみ易いもの。
ラーゲルレーヴの作品では、「ニルスの不思議な旅」がアニメ化されて放映されていましたっけ。
ヴェームランド地方というのは、正に演奏しているノールショピング管がある地方でもあります。これ以上適切な録音はありません。
③はアッテルべりイのほとんど最後に近いオーケストラ曲。彼は交響曲を9曲! 残してしますが、第9の後で作曲された18分以上かかる大作です。
全体はソナタ形式で書かれ、展開部には複調の技法も使われている由。とは言っても、アッテルべりの作風である豊かなメロディーと多彩なオーケストレーションで書かれていますから、直ぐに耳に馴染んでくる作品です。
アッテルべりは賞金の1万ドルで新しいフォード車を購入したのですが、本盤のカヴァーは、フォードの横に立つアッテルべりと車中の息子の写真にドル紙幣をあしらったデザイン。昨今の金融危機、ドルの基軸通貨没落を思うと笑えないカヴァー・アートと申せましょうか。
参照楽譜
①ヘフリッヒ No.153(ユニヴァーサルの許可の下で復刻された版)
②③は、無し

 

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