今日の1枚(2)

今日は冬至です。「冬」に因んで、というわけでもありませんが、今日の1枚はシューベルトの「冬の旅」です。やや変わった趣向で、
シューベルト/歌曲集「冬の旅」(バリトンと管弦楽のための)(管弦楽編曲/鈴木行一)
バリトン/ヘルマン・プライ
オーケストラ・アンサンブル金沢
指揮/岩城宏之
レーベルはオーケストラ・アンサンブル金沢の自主レーベルです。OEK-1001 という品番。
1997年10月7日、ミュンヘンのプリンツレゲンデン劇場におけるライヴ録音。もちろんディジタルによるステレオ。
Executive Producer は Hiroshi Hizawa, Recording Producer が Takashi Sakurai, エンジニアは Juri Pospichal とクレジットされています。
ブックレットには EP の樋澤弘士氏とオーケストレーションを行った鈴木行一氏の解説。
この解説によると、1995年にアンサンブル金沢の定期に出演したプライが、曲目だったシューベルト歌曲の管弦楽編曲版を録音(DG)。この時に冬の旅からの3曲を編曲したのが鈴木氏。
この編曲が気に入ったプライは、冬の旅全曲を1997年2月に金沢で初演し、その後ドイツ各地でも披露することを約束した由。
金沢での初演はプライの体調不良により叶わなかったものの、ドイツ各地での公演は実現し、本録音はツアー3日目の記録。
管弦楽版のスコアは市販されていないので、詳しいことは判りません。
しかし録音の際のメンバー表から推察すれば、
フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、弦5部(8-6-4-4-2)という編成。ピッコロとイングリッシュホルンも聴こえるので、夫々持ち替えと思われます。
プライが気に入ったというように、シューベルトの美質を主眼に置いた編曲。ホルンのゲシュトプフ奏法や木管のフラッターツンゲ奏法を使用している箇所もあるけれど、編曲者自身の解説の通り、決して奇を衒ったものではありません。
シューベルトは3曲(「憩い」「孤独」「辻音楽師」)について二つの版を残していますが、ここでは後の改訂版を下地にしているようです。(この点についてはブックレットには一切触れられていません)
録音は最初と最後に拍手が収録されています。比較的小さいホール(だと思われますが)の残響を適度に生かした聴きやすいもの。オケに被されないように声をやや大きめに収録した感じですが、不自然ではありません。
ヘルマン・プライは1929年にベルリンで生まれ、1998年、69歳でミュンヘン近郊に没したバリトン。
この演奏の1年後に亡くなっているので、最晩年の録音。高音などはやや衰えを感じさせるものの、リートを最も得意とした人だけに貫禄で聴かせます。
ホーエムネスのシューベルト祭を創設(1976年)した立役者で、シューベルトの最高権威。
岩城宏之も2006年には故人となり、今や貴重な記録というべきか。
参照楽譜/上記のように管弦楽版は市販されていないので、リー(Lea)のポケット・スコア LPS No.24 を使用。

 

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