今日の1枚(76)

今日からまたフルトヴェングラーに戻ります。東芝EMIの TOCE-3745 。

①ウェーバー/歌劇「魔弾の射手」序曲
②ウェーバー/歌劇「オイリアンテ」序曲
③ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
④メンデルスゾーン/「フィンガルの洞窟」序曲作品26
⑤メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲ホ短調作品64

①~④はウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏。⑤はベルリン・フィルハーモニー管弦楽団で、ソロは巨匠ユーディ・メニューインです。
データは、
①1954年3月5・6日 ウィーン、ムジークフェラインザール
②1954年3月6日 ウィーン、ムジークフェラインザール
③1950年2月1日 ウィーン、ムジークフェラインザール
④1949年2月15日 ウィーン、ムジークフェラインザール
⑤1952年5月26日 ベルリン、イエスキリスト教会
プロデューサーやエンジニア名の記載はありません。

①と②は同じセッションでの録音で、初出はLP。リヒャルト・シュトラウスの「ドン・ファン」「ティル」とのカップリングで出ていました(ヴィクター、LHMV 19)。
フルトヴェングラー最晩年のスタジオ正規録音だけに、音質は極めて優秀です。演奏もフルトヴェングラーのロマン派音楽への姿勢が良く表れたもの。

③は同じウェーバーでも4年前の録音。とは言いながらこれも優秀録音で、モノラル録音の最高峰でしょう。
音楽以外の音がいろいろ入っている録音で、極めて低いレベルながら人声が確認できます。音楽が鳴っているときには判りませんが、休止やフェルマータのあとなど。特に9小節目のフェルマータ休止で明瞭に聞こえます。遠くでラジオが鳴っているような感じ。
ブックレットはもちろん、一般的なレコード紹介記事にも指摘は無いようですが、当CDではこの曲だけですから、オリジナルに混入しているものと思われます。
当初の発売はSP(DB 21104)でした。

④は③のわずか1年前でありながら、音質ははるかに落ちます。この1年で技術革新が大幅に進んだのでしょう。それとも単に技術的な問題か。
これもオリジナルはSP(DB 6941)。いかにもSPという音です。

⑤は③より2年も後の録音ながら、かなり酷い音。1952年という年代が信じられないほど残念な結果になっています。特に第3楽章の音ムラは耳障りで、鑑賞に辛うじて堪える程度。
この録音の初出はLP。同じメンデルスゾーンの二短調ヴァイオリン協奏曲とのカップリング(ヴィクター、LM 1720)でした。もちろん二短調はフルトヴェングラーとの共演ではなく、ヴィクター弦楽合奏団という名称の団体。レコード用の覆面アンサンブルでしょう。
ただし演奏は素晴らしいものです。メニューインのテクニックはピークだった頃の録音で、巨匠の素晴らしい音楽性は貴重。
フルトヴェングラーは「どの時代のどの作品であれ、徹底して自己の色彩で塗りつぶした」という批判がありますが、この盤に聴くメンデルスゾーンはスタイリッシュなクラシズムに徹していますね。ウェーバーとは様式が異なることをキチンと把握していることが判ります。
人の評価が、単なる思い込みから生まれていることを証明出来る一枚。

参照楽譜
①オイレンブルク No.915(歌劇全曲版)
②オイレンブルク No.635
③オイレンブルク No.607
④オイレンブルク No.637
⑤オイレンブルク No.702

 

Pocket
LINEで送る

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください