今日の1枚(99)
今日はフルトヴェングラーのブラームスを聴きます。テスタメントの3枚目、STB-1142 。
①ブラームス/ハイドンの主題による変奏曲作品56a
②ブラームス/交響曲第1番ハ短調作品68
共にウィーン・フィルの演奏ですが、①はライヴ収録、②はスタジオにおける正規録音です。
①1952年1月27日 ウィーン、ムジークフェラインザール
②1947年11月17~20日 ウィーン、ムジークフェラインザール
①はライヴですからプロデューサーとエンジニアは不明、②のプロデューサーは Walter Legge 、エンジニアは Douglas Larter 。
フルトヴェングラーはブラームスを得意にしていましたが、スタジオ正規録音は珍しい部類です。中では②は二度も正規録音している作品ですが、ライヴで取り上げることも多かったようですね。悲劇的序曲と大学祝典序曲は滅多に演奏しなかったのとは対照的。
1952年のライヴは3日間行われた同じ曲目によるオール・ブラームス・プログラムの中日の収録。他には二重協奏曲(ウィリー・ボスコフスキーとエマニュエル・ブラベッツ)と第1交響曲が演奏されています。
フルトヴェングラーのライヴとしては極めて優れた音で、会場のノイズも僅少。立派に鑑賞に堪えるレベルです。
演奏はスタジオ収録に比べるとテンポも遅く、より自由な表現になっているのが聴きどころ。
①は珍しい交響曲の正規録音。戦後、非ナチ化裁判の結果により活動が認められて最初の録音セッションでの仕事です。
この当時はウィーンフィルも仕事がなく、ギャラも廉かったので充分な時間をかけてセッションが進んだ由。同時にベートーヴェンの第3交響曲、モーツァルトの管楽セレナードも録られています。
ブラームス録音の4日間の間に、一休みしてモーツァルトのセレナードの一部を入れたのだとか。ウィーンフィル貸切状態だったのでしょう。
録音はいかにもSPで、面による音質や演奏の差が目立ちます。第2楽章など信じられないほど遅い。
第1楽章の繰り返しは省略、第3楽章実行は普通のスタイル。第4楽章の269、270小節で木管にホルンを重ねている他にスコアの加筆・改変は無いようです。
フルトヴェングラーによるブラームス交響曲の録音が少ない理由は二つあって、第一は彼のブラームスはテンポが遅めなため、どうしてもSPの枚数が増えてしまうため営業上不利だったこと。
第二は、EMIは英国の会社ですが、イギリスではフルトヴェングラーのブラームス演奏は評価が低く、出しても売れないという、これまた営業的な問題があったのだそうです。
英国人は古典的なブラームスが好み。フルトヴェングラーはコッテリし過ぎるという批判ですね。
参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.134
②ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.130
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