今日の1枚(95)

今朝、拙宅の鰻の寝床のような庭でシランが開花しました。ヤマブキも黄色の花を開き始めています。
散歩の途中でシロヤマブキの見事に咲いたお宅を発見。シロヤマブキはヤマブキの白花ではなく、同じバラ科ながら属も種も全く別の植物。ヤマブキと違って実がなり、花と同時に黒い実が目立つのが特徴。
朝の植物講座でした。

さてCDの話題、東芝EMIのフルトヴェングラー大全集の手持分は全て聴き終わりましたので、今日から海外盤のフルトヴェングラーに移ります。
先ずはEMIが定期的に出している Great Recordings of the Century シリーズの1枚、7243 5 66953 2 という長ったらしいカタログ番号で、ベートーヴェンの交響曲第9番二短調作品125。有名なバイロイトの第9です。ART という自慢のマスタリングを施した一品。

データは、
1951年7月29日 バイロイト祝祭大劇場でのライヴ録音。
ウィルヘルム・フルトヴェングラー指揮バイロイト祝祭劇場管弦楽団と合唱団。ソプラノはエリザベート・シュワルツコップ、アルトはエリザベス・ヘンゲン、テノールはハンス・ホプフ、バスがオットー・エーデルマン。
プロデューサーは Walter Legge 、エンジニアは Robert Beckett と明記されています。

ブックレットの執筆は Alan Sanders 、面白い読み物で、一部引用すると、
1951年はバイロイト音楽祭が戦後初めて開催された復活の年。6年ぶりの再開とあって、音楽祭そのものが異常な緊張に包まれていたそうです。第9はそのオープニング・コンサート。
この年の音楽祭でフルトヴェングラーが指揮したのはこのコンサートだけ。翌日にはザルツブルクに旅立っています。
この年フルトヴェングラーは、バイロイトと日程が重なるザルツブルク音楽祭の監督に就任していましたし、バイロイトでは宿敵カラヤンが名歌手と指輪を振る契約になっていたため、ワーグナー一家とは険悪な関係にあったのですね。

シュワルツコップの回想によると、演奏会当日の朝にリハーサルがあり、本番前に通しのゲネプロが行われた由。オーケストラには錚々たるメンバーが顔を揃え、異様な熱気に支配されていたとか。
(錚々たるメンバーというのが具体的に誰なのかは判りませんが、一部にはミスがあるものの、かなりハイレヴェルの演奏になっています)

この年はEMIとデッカが正規の録音を許され、両社が競演するように音楽祭のライヴ収録を行っています。
レッゲは第9の他カラヤンの名歌手と指輪を、デッカ・チームはクナッパーツブッシュのパルシファルを録音。
第9をライヴで収録する件について、レッゲは7月6日にフルトヴェングラーから、“ホールの音響が録音には相応しくない”との理由で断りの手紙をもらったのだそうですね。それでもレッゲは何とかフルトヴェングラーを説得して実現に漕ぎ付けた因縁の録音。

フルトヴェングラーが言うように音響はややデッドで、録音には理想的とは言い難いもの。特に合唱団は置かれている位置の問題でしょうか、冴えない音質になっているのが残念です。

演奏はフルトヴェングラー独特の緊張に満ちたもので、テンポの変化も極端に感じられます。
第3楽章の最後のリタルダンドの極端なこと。全曲の最後のプレスティッシモなど指定のアラ・ブレーヴェの倍の速度で、1小節1拍という凄まじい速さ。最後には拍手も収録されていますが、どことなくとってつけたような印象。
第1楽章のコーダ、第538小節は一瞬のパウゼを置く古いスタイル。
第2楽章のスケルツォ主部の繰り返しは、前半のみ実行して後半は省略。トリオの繰り返しは全て実行。
また276小節と280小節のヴァイオリンは楽譜より1オクターヴ上げて演奏しています。これも当時の慣例。
第3楽章の最後、149小節のティンパニに変更を加えています。8分の12拍子を4拍子に読み替えると、オリジナルは、休-B-F-F であるのに対し、B-F-F-F と変えています。
156小節の2拍目のティンパニは叩き損ねでしょう、頼りなげに叩いています。フルトヴェングラーのテンポが極端に落ちたためでしょうか。
第4楽章は色々手を加えています。先ずファンファーレのトランペットは木管と同じ旋律を吹かせます。3度とも同じ。

有名な歓喜の主題が出る直前の長いパウゼ、これは後のマーチ直前の長いパウゼと辻褄を合わせていると思われます。
声楽登場直前のファンファーレの前、206小節(4拍目)と207小節(2拍目)にティンパニ加筆。
二重フーガの最後、726-727小節にティンパニ加筆。ここは次の728-729と同じリズムでの加筆。
コーダに入って出るソリストの二度目の歌詞は Tochter, Tochter aus Elyseum ではなく、Freude, Tochter aus Elyseum 。

参照楽譜
ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.30

 

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