読売日響・第513回名曲シリーズ

「チケット求む」というビラを手にした人が立つほど人気のコンサートです。前日も同じプログラムの公演があり、それでも満席になるのですから昨今の読響人気は凄まじいものがあります。
4月名曲は、世界で一・二を争うトップ・オケに来期から首席指揮者を任されるカンブルラン登場。何を置いても聴くべきコンサート、という判断でしょうか。
モーツァルト/歌劇「劇場支配人」序曲
ベートーヴェン/交響曲第4番変ロ長調作品60
     ~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調作品67
 指揮/シルヴァン・カンブルラン
 コンサートマスター/藤原浜雄
 フォアシュピーラー/小森谷巧
先ず目に入ったのはコントラバスが6台しかないこと。これは予想されたことですが、現代のベートーヴェン演奏の主流はダイエットしたスタイル。恐らくキビキビ・スッキリ系の演奏なんでしょう。
カンブルラン、私は以前にトゥーランガリラを聴きましたが、改めてどんなマエストロか観察。
譜面台が置かれ、スコアを見ながら指揮します。ベートーヴェンの第5の繰り返しすら譜面を戻して振っていましたから、「暗譜」作業には全く関心が無いものと見えます。
これは好印象。中には暗譜することに意味を見出している人もいますが、ソリストじゃないのですからスコアの隅から隅まで暗記するのは無駄なことだと思います。
暗譜はスコアを読み尽くした結果であるべきもの。
歩幅大きく颯爽と登場、指揮棒を持って振ります。両足をやや広く開け、アクションも派手ではないものの大きめ。誰かの真似はないようですが、見ていて感興を誘うというほどのものでもありません。一つ気になることがありますが、それは最後に・・・。
冒頭のモーツァルト。コントラバスは4人しか登場せず、ということは12型。これは名刺代わりの1曲でしょうか。
それにしてもベートーヴェンの交響曲2曲に何でモーツァルトのドタバタ風オペラの序曲なんでしょう。やや??
期待のベートーヴェン、弦も残り1プルトのメンバーが勢揃いして14型。楽譜係りが持参したのはベーレンライター版。
予想通り、速いテンポが軸。時にアクセントを激しく付け、スリムなベートーヴェンを目指します。微笑みに満ちたベートーヴェンからは遠く、怒りっぽく不機嫌なベートーヴェンか。
私の体内メトロノームでは、第4はもう少しゆったりして欲しいし、第2楽章は美しく歌い上げる演奏が好みです。フィナーレもヴィオラやチェロは激しく弦を擦り、レガートにはしません。
(この前も読響でこのタイプの第4を聴いたばかりのような気がします)
ピリオド系の演奏とは無縁ですが、繰り返しは全て実行。お、ひっとすると第5の第4楽章も繰り返すのかな?
休憩を挟んでメインの第5。ホルンだけが倍管(4人)で他はオリジナル通りの編成です。
繰り返しは予想通り、第4楽章も含めて全て実行していました。
第4交響曲がアグレッシヴな姿勢を貫いていたのに対し、第5はむしろ機敏な印象。
「運命」と言えば世界の苦悩を一身に背負うたかの如く、深刻なシンフォニーというイメージがありますが、カンブルランのは正反対。実に軽い第5で、メンバーも楽しそうで踊り出さんばかり。エッ、これ第5???
出だしの「タタタター」にしても、音一つ一つに意味を籠めるようなものではなく、ただのアレグロ・コン・ブリオ。
第2楽章を聴いてみましょうか。
“テーマは付点16分音符と32分音符の組み合わせです。リズムをシッカリ取って下さい。そう、ピアノを美しく、フォルテをハッキリ区別して下さい” と指示するカンブルランが目に見えるよう。
そりゃ楽譜にはそう書いてありますけどねぇ。うぅん、ベートーヴェンってこれでいいんですかねぇ、マエストロ。
楽譜に忠実か、というとそうでもない。トランペットやティンパニが思いついたように「ウワッー」とクレッシェンドしたり元に戻したり。そんなこと譜面に書いてありませんぞ。
どうもカンブルラン親方にとって、ベートーヴェンのスコアは色彩を散りばめた万華鏡のように見えるらしい。
第4楽章に突入した時、今日はアンコールがあるな、と直感しました。
その感が当たって、シューベルトのロザムンデ間奏曲がおまけ。
そもそもベートーヴェンの交響曲2曲のあとにアンコールしますかね。それが必要なベートーヴェン演奏と言ってしまえばそれまでですけど。
(第5の後のアンコールって、確かコバケンがやってましたな。ブラームスを)
それにしてもロザムンデ、何で最後のフレーズでとって付けた様なギア・ダウンするんでしょうか。
カンブルラン、この回だけでは何とも言えませんが、やっぱりベルリオーズ→メシアン路線が相応しい人でしょう。
表情もにこやか、これで読売日響も大分雰囲気が変わるでしょうね。
余計なことですが最後に。あの髪型なんとかなりませんかね。植木鋏でバッサリ切ってしまいたい・・・。
ひょっとしてこの人、お笑い系?

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