今日の1枚(104)

DGのフルトヴェングラーは今日が最後です。他にライヴ録音を集めたセットや、戦前のポリドール時代のSP録音なども聴くことができますが、私は基本的にはスタジオ正規録音に絞ってきました。
フルトヴェングラー/交響曲第2番ホ短調、作曲者自身の指揮するベルリン・フィルハーモニー管弦楽団による演奏。
1950年11月と12月、ベルリンのイエス・キリスト教会での収録、エンジニア名として Heinrich Keilholz の名前だけが挙がっています。エルザ・シラーがDGのエクゼキュティヴ・プロデューサーに就任する以前の録音ですね。
さすがに1950年というと音質そのものにも限界がありますし、大編成オーケストラを録り切れていない恨みはあります。
それでもカイルホルツの特徴である「DGサウンド」、教会の残響が豊かに取り込まれたもの。
演奏は他と比較しようもありません。特に終楽章での金管楽器や弦楽器の厚味ある響きはベルリンフィルそのもの、という感じがします。
フルトヴェングラーの第2交響曲は、主に彼が戦争直後の活動禁止時期に集中して作曲されたもので、ブルックナーの流れを汲むドイツの長大なシンフォニストとしての伝統を受け継いだ音楽と言えそうです。
フルート3、オーボエ2、イングリッシュホルン、クラリネット3、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット3、トロンボーン3、チューバ、ティンパニ、打楽器1人、弦5部という編成。
打楽器は大太鼓、シンバル、タムタムが登場しますが、同時に鳴らされる箇所はないので、1人で演奏が可能です。
全体は4楽章。1枚目に第1楽章が収録され(25分)、2枚目に残りが入っています。(第2楽章13分、第3楽章16分、第4楽章29分)
第1・4楽章はソナタ形式が基本だと思いますが、古典的なソナタと違って、主題に複数の要素が含まれるのが特徴。提示・展開・再現の方法が一筋縄ではいかず、スコアを見ながら聴いても全体のアナリーゼがかなり難しい構成になっています。
しかも楽章間にも共通のイディオムが使われ、全体の統一にもきめ細かい配慮が巡らされていることが判ります。
第4楽章の第2主題部再現(我流のアナリーゼでは)の冒頭の木管に、スコアと違う動きがあって戸惑います。
スコアの冒頭に当録音の品番が明記されているので、録音後にフルトヴェングラーが改訂したか、単なる演奏ミスかの可能性が考えられますが、真実は不明。
(最近リース・アンド・エアラー社からもスコアが出ていますので、それと比較すれば真実に近付けるかもしれません)
当盤のブックレットは Richard Osborne の執筆。
参照楽譜
ブルックナーフェルラーク(ヴィースバーデン)

 

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