今日の1枚(164)

「トスカニーニ・ベスト・セレクション」、続いてはロシア音楽です。第20集、BVCC-9930 を聴きましょう。

①チャイコフスキー/交響曲第6番
②ムソルグスキー(ラヴェル編)/組曲「展覧会の絵」

録音年月日は、

①1947年11月24日 カーネギーホール
②1953年1月26日 カーネギーホール

どちらもセッション録音ですが、両者には年代に開きがあり、当然ながら録音水準も大きく異なります。

①はSP録音。ヴィクターから 12-0711/5 の5枚組10面で出たのが初出。当時の録音としてはダイナミックな演奏を良く捉えていますが、低音部が物足りないのは止むを得ないでしょう。
例えばメンゲルベルクのようなアクの強い解釈ではなく、トスカニーニらしくイン・テンポに徹した現代風の「悲愴」。
トスカニーニのチャイコフスキー録音は比較的少なく、交響曲は6番以外には録音がないと思います。演奏そのものもあまりやっていないのでしょうね。

第1楽章の展開部に入る直前、有名な第2主題がクラリネットからファゴットに引き継がれる個所。伝統的にバス・クラリネットに置き換えて演奏する習慣がありますが、トスカニーニはスコア通りファゴットに吹かせています。何分にも録音が古いので明瞭ではありませんが、これはファゴットで間違いないでしょう。

第2楽章の繰り返しは全て実行。

②はトスカニーニの代表的な録音。LP初期を代表する名演・名録音で、HMVから ALP 1218 として発売されたLPが初出でした。
確か私も展覧会入門はこの録音で、中学時代に盤面が擦り切れるほど聴いた思い出があります。当盤のブックレットは、昔懐かしい画家のパレットをあしらったオリジナルLPのデザインを使用。

トスカニーニはラヴェルのオーケストレーションよりもムソルグスキーの原曲を大切にしているようで、「古城」ではラヴェルが追加した1小節をカットし、ピアノ原曲に戻して演奏しています。(練習番号22の1小節前)
それはもう一か所あって、「ビドロ」の最後(練習番号45の3小節目)。低弦に乗る pp のバスクラリネットをラヴェル編の2拍目ではなく、ピアノ原曲の1拍目に戻しています。ウッカリすると聴き逃す場所ですから、注意してスコアを見てください。

「鶏の足の上の小屋」は指揮者によって打楽器をいろいろ変更するピースですが、トスカニーニのは以前に紹介したアンセルメと全く同じ変更です。

最後の「キエフの大門」にはトスカニーニならではの打楽器加筆があって、練習番号115の直前ではティンパニの前打音クレッシェンド、
練習番号116の5小節目にシンバルの一撃、
練習番号118から120まではシンバルの長いトレモロによるクレッシェンド、
練習番号120の1小節前の2拍目からはティンパニのクレッシェンドを追加しています。

参照楽譜
①ユニヴァーサル(フィルハーモニア) No.64
②ブージー&ホークス Nr.32

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