フェスタサマーミューザ2009(2)

今年のサマーミューザは摘み食い。私の選んだ第2弾はこれです。
日本フィルハーモニー交響楽団
 ハイドン/テ・デウム ハ長調
 J.S.バッハ/ブランデンブルク協奏曲第5番 ニ長調
 メンデルスゾーン/交響曲第4番 イ長調「イタリア」
  指揮/広上淳一
  合唱/ガーデンプレイスクワイヤ(合唱指揮/中島良史)
  チェンバロ/曽根麻矢子
  フルート/高木綾子
  ヴァイオリン/江口有香
もし今年のミューザで一つだけ、と言われればこれでしょう。私にとっては広上の指揮も理由の一つですが、それ以上に選択の基準になったのがハイドン。
この作品を聴くのはナマと録音とに限らず初めてのこと。しかしスコアだけは古くから手元にあって、それを見る限りでは、“何故取り上げてくれないのだろう” という音楽。
「天地創造」の補完とでも言うような充実した作品で、マリア・テレージアに捧げられた一品。主君エステルハージ公の目を盗んだ行為だったみたいで、楽譜も様々なパート譜の形でしか残っていなかったようなのです。
それを彼のロビンス・ランドンがスコアの形で初めて出版したのが、1959年のこと(ユニヴァーサル)。これまで余り演奏する機会がなかったのは、アクセスできる楽譜が存在しなかったからだと想像されます。
オーケストレーションも異稿があるようで、ランドン校訂ではトロンボーン3本はオプション。今回の演奏ではトロンボーンを加えた編成で演奏されていました。
この会もプレトークがありました。プログラムの主旨は、今年アニヴァーサリーを迎える作曲家の作品を中心に、やや捻りを効かせたもの。
即ち、ハイドン(没後200年)とメンデルスゾーン(生誕200年)に加え、没後250年のヘンデルと同じ年に生まれたバッハ。そのバッハを現代に蘇らせたのがメンデルスゾーンという繋がりでもあります。
プレトークは、今日の合唱団とチェンバロについての紹介が中心。その名の通り恵比寿にある記念館を本拠にするアマチュア・コーラスが、ヘンデルのハレルヤ・コーラスで実力を披露。
一方チェンバロは、曽根自身がスペイン風のアレンジを加えたというスカルラッティを一曲。
ということで、発表されたプログラムには無い曲も聴ける、お徳用コンサートでもありました。
演奏の細部には触れませんが、やはり広上淳一の指揮に尽きるでしょう。
「良い演奏」というものは、演奏家が独自の解釈を加えたり、自己主張を声高に張り上げるものではありません。
演奏家は、作品の真価を聴き手に伝えることに専念する。その結果、聴衆の耳に残るのは「音楽作品そのもの」の素晴らしさ。
この日の演奏もその一言で充分でしょう。例えばメンデルスゾーンには作曲家自身が改訂を試みたという版があり、敢えてそれを謳い文句のように取り上げることが流行しているようですが、広上は決して流行を追う人間ではありません。あくまでも正攻法。
書かれた音楽を、書かれたとおりに誠実に演奏すれば、作品の正しい姿がクッキリと浮かび上がってくる。それを見事に証明したじゃありませんか。
最近の広上はアンコールも妙に捻る悪い(?)癖がありますね。地味に撤するというか・・・。
先月の横浜(オール・メンデルスゾーン・プロ)ではリャードフでしたが、この夜はバルトーク。(何でや!)
オリジナルのピアノ曲を小オーケストラ用にアレンジした「ルーマニア民俗舞曲集」、その4番目。「ブチュム人の踊り」と題された短いもので、後半に加わる管楽器を省略して弦だけで演奏していました。
この曲集の中では一番馴染みが無いものでしょう。中途半端な終り方だったのは、次のピースにアタッカで流れ込むようになっているから。
いかにも広上らしい締め括り。
余談を一つ。いつものようにCDの会場販売がありましたが、そこで広上/日フィルのレスピーギ三部作を発見。今まで買い損なっていたもので、公には廃盤のはず。
私が初めて広上をライブで体験して腰を抜かしたときの記録。躊躇いも無くゲットしてしまいました。
恐らく並べられていたのが最後の在庫。買い損なった広上ファンの皆様、見つけたら即購入すべし。ああいう時代もあったんです。
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