真夏のスター・ウォーズ

昨日、ヨーク競馬場恒例のイボア・ミーティングがスタートしました。火曜日から金曜までの四日間、連日パターン・レースが組まれ、熱戦が続きます。
今開催は、今年のダービー馬とオークス馬が登場するのが大注目。即ちシー・ザ・スターズがジャドモント・インターナショナルに、サリスカはヨークシャー・オークスに出走する予定。
その初日、いきなりジャドモント・インターナショナル(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)が行われました。
当初は5頭が最終登録を済ませましたが、タータン・ベアラーが脚を痛めて直前で回避。結局4頭立てという寂しいメンバーになってしまいました。
しかし寂しいのは頭数だけ。2強対決に注目が集まります。
2冠+エクリプスの名馬シー・ザ・スターズ Sea The Stars に挑戦する3頭はいずれもエイダン・オブライエン厩舎の馬たち。
そのエース格が愛2000ギニーとセント・ジェームス・パレスを制したマイラーのマスタークラフツマン Mastercraftsman 。残る2頭はペースメーカーを務めるジョージバーナードショウ Georgebernardshaw とセット・セイル Set Sail です。
人気もシー・ザ・スターズの1対4とマスタークラフツマンの3対1に集中。あるゆる観点からしても2強対決の様相を呈していました。
レースはジョージバーナードショウが引っ張り、セット・セイルが追走する理想的な展開。小頭数に有り勝ちなスロー・ペースにはなりませんでした。
2頭からやや離れてマスタークラフツマンが、シー・ザ・スターズは最後方から悠然と進みます。
レースが動いたのは最後の2ハロン、先ずマスタークラフツマンが先行2頭の間を割って先頭に立つと、すかさずシー・ザ・スターズが同じ進路を取って追い上げる。一瞬マスタークラフツマンが逃げ込むかに見えた場面もありましたが、さすが2冠馬。キネーン騎手の仕掛けに応えて末脚を爆発させると、キッチリ1馬身の差を付けてマスタークラフツマンを捉えました。
最後の1ハロンでマスタークラフツマンと3着のセット・セイルの間に開いた着差は何と大差。「大差」は英語では distant と表記します。
馬場がやや固く速かったことも手伝い、シー・ザ・スターズの勝ちタイムはコース・レコード。
勝った馬が強いのはもちろんのこと、1マイルから2000メートルに初挑戦したマスタークラフツマンの強さも並みのものじゃないでしょう。
ミック・キネーン騎手はこれまでもモンジュー、ジャイアンツ・コーズウェイ、ハイ・シャパラル、ガリレオなどの名馬に騎乗してきましたが、シー・ザ・スターズこそ自分が乗った「最強馬」とレッテルを押しています。
この馬の賢いところは、決して大差勝ちはせず、キッチリ1馬身だけ抜け出すところとか。この日もその典型的なレースを見せてくれました。
シー・ザ・スターズはこれが4つ目のGⅠ、2歳から数えて6連勝になります。
オックス師は次走をアイリッシュ・チャンピオン(9月5日)に決定。その後のことは馬主と相談とのことです。
馬主のクリストファー・ツイ氏も香港から駆けつけ、“なんも言えねぇ、アンビリーバボー” とコメントしていました。
2着のマスタークラフツマンも手応え充分、最終的にはブリーダーズカップ・クラシックに照準を合わせるようです。
最後の叩きあいで鞭を過剰使用したムルタ騎手には4日間の騎乗停止。9月1日から4日までは乗れませんが、5日の愛チャンピオン、フェイム・アンド・グローリーでの雪辱には問題なさそうですね。
この日のパターン・レースはあと二つ。
エイコム・ステークス(GⅢ、2歳、7ハロン)は10頭立て。7対4で1番人気に支持されたポエツ・ヴォイス Poet’s Voice がフライングでゲートを出てしまうアクシデントがあり、スタートをやり直し。
勝ったのは7対2のエルーシヴ・ピンパーネル Elusive Pimpernel 。2着は頭差でエメラルド・コマンダー Emerald Commander 、3着には半馬身で本命ポエツ・ヴォイスが粘りこみました。
エルーシヴ・ピンパーネルは先月ニューマーケットの新馬戦に勝ったばかりの馬。これで2戦無敗となり、今シーズンはこのまま休養に入る予定です。
調教師はジョン・ダンロップ、騎手はエディー・エイハーン。
大柄でややズブい所があり、7ハロンは短過ぎる感があります。この日もエンジンが掛かったのが遅く、大外から最後の一歩で先行馬を捉えた結果となりました。
グレート・ヴォルティジュール・ステークス(GⅡ、3歳、1マイル4ハロン)はセントレジャーへの重要なトライアル。クラシックに最も近い1頭と思われていたハービンガー Harbinger が13対8の1番人気を集めましたが、何と7頭立て7着のどん尻負け。もう1頭の有力馬アルワーリー Alwaary も6着という番狂わせです。
勝ったのは28対1の大穴モニター・クローズリー Monitor Closely 、2着は4馬身半でマスターリー Masterly 、3着は1馬身4分の1でファーザー・タイム Father Time の順。
モニター・クローズリーを管理するチャップル=ハイアム師は同馬のスタミナを疑問視しており、10ハロンのインターナショナルでの3着狙いが本音。こちらに回ったのはあくまでも馬主サイドの要望だったそうです。
ジミー・フォーチュン騎手の巧みなペース配分での逃げ切り勝ち。
モニター・クローズリーのセントレジャーへの可能性は未定ですが、出走に踏み切れば追加登録料が必要です。
レース振りを見る限りでは14ハロンも行けそうですが、いずれにしても最後のクラシックは混沌としてきました。
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