またしてもオブライエン厩舎の2歳馬!!

11月最初のパターン・レースは、昨日行われたサン=クルー競馬場の二鞍です。

最初はクリテリウム・インターナショナル(GⅠ、2歳、1600メートル)。
このレースは、フランスの競馬体系が大幅に見直された年、即ち2001年に導入されました。
それまでフランスの2歳路線は10月第2週のグラン・クリテリウムを頂点としていたのですが、2歳馬の距離に対する順応具合を考慮して、距離の延長をもっと緩やかにしたローテーションに変更されたのです。

その結果、1400メートルだったサラマンドル賞(GⅠだった)が廃止され、グラン・クリテリウムの距離を1400メートルに短縮。従来のグラン・クリテリウム距離であった1600メートルのGⅠ戦として、施行時期を11月初めに先延ばししたクリテリウム・インターナショナルが新設されたわけ。

フランスの2歳GⅠ路線は更に続き、11月中旬には同じサン=クルー競馬場で2000メートルのクリテリウム・ド・サン=クルーが組まれています。
こうした変更が結果を生む、即ち健全な2歳戦を経験した馬から優れたクラシック馬が誕生するかは、長い年月の積み重ねによる検証が必要でしょう。

そもそもフランスにクリテリウム・インターナショナルという名前のレースは古くから存在していましたが、それは確か1000メートルで行われていたもので、現在の同名レースとは全く別物と考えるべきです。
謂わば新クリテリウムからは、これまでの9回の歴史の中で既にダラカニ Dalakani (2002年の勝馬)とバゴ Bago (2003年)という2頭の凱旋門賞馬が既に育っています。

さて前置きが長くなりましたが、今年は地元フランスはもちろん、イギリスとアイルランドからの挑戦も含めて7頭が顔を揃えました。
レース前の話題は、凱旋門賞の日にマルセル・ブーサック賞を制した無敗のロザナラ Rosanara に集中。フランスのデュプレ厩舎、アガ・カーン所有ということも手伝って7対10の圧倒的支持を集めていました。

しかしレースは一方的な内容。この時期特有の重馬場ということも手伝ったか、スタートから先頭に立ったヤン・フェルメール Jan Vermeer がそのまま他馬を寄せ付けず逃げ切り勝ち。
2着に4馬身遅れてエメラルド・コマンダー Emerald Commander が入り、更に1馬身半差で漸く本命のロザナラが入っています。
2着はイギリスから遠征してきたゴドルフィンの馬。

勝ったヤン・フェルメールはアイルランドのエイダン・オブライエン厩舎の馬。オブライエン師は2頭を送り込み、主戦のムルタ騎手はミダス・タッチ Midas Touch (こちらは4着)を選んでいましたから、ヤン・フェルメールは2番手の馬。こちらにはオダナグー騎手が騎乗していました。

重馬場という条件は付きますが、この日のヤン・フェルメールは明らかにスピードもスタミナも上位。たちまちダービー候補の1頭にのし上がっています。前走のゴウラン・パークで未勝利戦に勝ったばかり、これで3戦2勝のキャリア。

オブライエン厩舎はシーズン最後になって2歳のGⅠを3連覇。即ちデューハーストのベートーヴェン Beethoven 、レーシング・ポストのセント・ニコラス・アベイ St Nicholas Abbey 、それにヤン・フェルメール。
現在の時点で来年のダービー・オッズは、1番人気にセント・ニコラス・アベイ、2番人気にヤン・フェルメールという状況で、今年やや不振という感もあったオブライエン軍団の巻き返しが楽しみになってきました。

続いてパース賞(GⅢ、3歳上、1600メートル)。レース名のパース Perth はフランスの歴史的名馬。フランス3冠(プール・デッセ・デ・プーラン、ジョッケ・クラブ賞、ロワイアル=オーク賞)とパリ大賞典の4冠を達成した唯一の馬ですね。

パース賞は1901年創設、1949年から距離が1600メートルでほぼ定着し、パターン・システム導入の1971年からずっとGⅢにランクされてきた伝統の一戦です。

今年は重馬場に12頭が参戦。結果は英国勢のワン・ツー・フィニッシュとなりました。

即ち優勝はザフィシオ Zafisio 、2着に1馬身半差でボーダー・パトロール Border Patrol 、更に半馬身で地元フランスのヘッド厩舎のラシンガー Racinger の順。
1番人気(31対10)に支持されたルルーシュ厩舎のダンス・グレック Danse Grecque は10着惨敗でした。

勝ったザフィシオは、何と去年のクリテリウム・インターナショナルの勝馬。出走馬中で唯一のGⅠホースでしたから、勝たれてみれば順当か。36対5という賭け率でした。

去年はポール・ブロックリー厩舎で勝ったのですが、この厩舎は現在免許停止中。今年はロジャー・カーティス師が調教しています。騎手はフランスのドミニック・ブフ。重馬場がめちゃめちゃ巧く、ブフ騎手との相性は抜群で、正にピタリと嵌った一戦と言えましょう。
フランス・ダービーこそ距離が長く惨敗(13着)しましたが、堅実に走るタイプ。

2着のボーダー・パトロールはチャールトン厩舎。実はこの2頭、9月13日にカラ競馬場で行われたソロナウェー・ステークス(GⅢ)でも対戦し、その時はボーダー・パトロールが優勝、ザフィシオは3着でした。その時の馬場はこの日より重い不良馬場。
因縁の2頭でした。

 

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