日本フィル・第613回東京定期演奏会

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シーズンの開始を秋からに変更した日本フィル。このスタイルもすっかり定着したようです。
その新シーズン開幕を告げる定期を聴いてきました。真に開幕に相応しいプログラムと演奏は、
【ピエタリ・インキネン首席客演指揮者就任披露演奏会】
ショスタコーヴィチ/祝典序曲
シベリウス/ヴァイオリン協奏曲
     ~休憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番
 指揮/ピエタリ・インキネン
 ヴァイオリン/樫本大進
 コンサートマスター/扇谷泰朋
 フォアシュピーラー/江口有香
 ソロ・チェロ/菊地知也
プログラムの冒頭に大書されていたように、インキネンが目出度くも日本フィルの首席客演指揮者のポストを快諾した最初のコンサート。
更に今年は日本・フィンランド修交90周年に当る記念の年。偶然とは言いながら、この記念すべきコンサートに因み、フィンランド大使館からも同国の若きマエストロ・インキネンの就任に寄せた一文がプログラムに掲載されていました。
私のインキネン/日本フィルとの出会いは去年の4月、横浜定期でのこと。今改めてそのときの感想文を読んでみると、指揮者インキネンの特質や彼に寄せる期待が全て書いてあります。
参考までにこちらを↓
 
コンサートを聴いた直後に“インキネン、押さえるべし”を進言した一人として、こうも早く夢が実現したのは嘘のよう。
ここは楽団の素早い行動力を称えたいと思います。聞けばインキネン招聘については水面下で激しい競争が行われた由。それは国内だけでなく世界的レヴェルでの話ですから驚くじゃありませんか。
実は、ああまで絶賛した印象がフロックだったらどうしよう、という不安も無いわけではありませんでしたが、今回の就任披露定期を聴いて、私のインキネン讃はより高くなった感があります。
詳しいことは前回の日記で充分でしょう。同じことを書いても屋上屋を架すが如し。
今回はプログラムにも良く練った跡が見えていました。
指揮者とオーケストラの新しい関係を祝す意味も籠めた「祝典序曲」。
かつて敵対関係にあったフィンランドとロシアを代表するシベリウスとショスタコーヴィチ。
(これはプログラム・ノートを担当した池田卓夫氏も指摘しています)
協奏曲を弾いた樫本大進にとっては、承知の通りベルリン・フィルのコンマス内定のニュースが流れて最初の大きなコンサート。
日本フィルがソリストに選んだのはニュース以前のことですから、偶然に過ぎません。
上昇気流を捉えた感のある日本フィルにとって、来年7月の辻井伸行共々(彼のコンクール優勝も、出演が決定して以後の快挙)ラッキーと言えましょう。
古い言い回しながら、運も実力の内。物事には「追い風」というのは必ずあるもので、良い方向に動き始めた時には幸運の女神も味方するものですな。
その表れでしょうか、昨夜は客席の入りも良く、普段は日本フィルの演奏会には足を運ばない知人の顔もいくつか見られました。
樫本効果、インキネン効果もかなり貢献していたと思います。
樫本大進。同じブロン門下生のインキネンの棒にも支えられ、彼らしい繊細なシベリウスを披露して喝采を浴びました。
個人的にはもう少し大胆な表現があっても良いと感じましたが、これは彼のテンペラメントや音楽性によるものでしょう。
ベルリンフィルのコンマスを目指す彼の志向は、ソリストとしての活動よりもアンサンブルに適している資質に符号していると見ました。
使用している1674年製のアンドレア・グァルネリという楽器の質も然り。
日本にはより優れた楽器、例えばストラディヴァリウスを貸与する財団などもあるはずですから、ここは一つ太っ腹を発揮してもらいと思うものでもあります。
そしてこの日も圧倒的な印象を残したのはメインのショスタコーヴィチ第5。
前回のチャイコフスキーでも感じましたが、オーケストラと一緒に音楽を作っていく過程が如何に素晴らしかったかを連想させる演奏ですね。
プレイヤーを「その気」にさせるインキネンの魔力は恐らく天性のものでしょう。言葉は真に不適切ですが、「あげまん」指揮者の代表的な逸材。
私は敢えて彼に「若鷹」の称号を与えたいと思います。
空高くからオーケストラと作品を見つめ、冷静且つ的確に指示を与えてゆく鋭い目。しかしその目は冷静ながら慈愛に富み、繰り出す音楽は熱く、集中力と推進力とをエネルギーに変換して行く。
新しく客演首席奏者として加わったトランペットのオッタヴィアーノ・クリストフォーリも実力を遺憾無く発揮し、日本フィルの新しい顔として存在感を見事に示していました。
インキネンの首席客演指揮者としての拘りは、例えば弦楽器が主題を歌うときに、面と裏でボーイングをアップとダウンに分ける(第1楽章のヴァイオリン群など)という芸の細かささえ見せていました。
こうした細部の彫琢が演奏のレヴェルを格段に押し上げていた事実に、聴き手は注目すべきでしょう。
この日、ホワイエで真っ先に立ち寄ったのはCD販売コーナー。先の横浜でのラザレフ指揮するブラームスがSACD化されたというニュースを聞いたからですが、嬉しくも前回のインキネンによるチャイコフスキーもこの日から売り出しの由。しかも先着○名に限りインキネンのサイン色紙付き。
サインを集める趣味はありませんが、売場で散在したら色紙がプレゼントされました。
でもねえ、インキネンくん。これ、何処をどう読めば INKINEN と読めるのかしら?
二日目の今日もサイン付きCD販売やるでしょう。欲しい人は早い者勝ちですよ。聴いてからじやなく、ホールが開いたら迷わず直行しなさいね。
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