日本フィル・第296回横浜定期演奏会

4月の日フィル横浜定期は、いつもとは趣向が異なるプログラム、未だ電車遠征はしんどい躰に鞭打って桜木町に向かいました。
寒の戻りというのか、コートを羽織らないと風が冷たい午後です。

菅野祐悟/NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」
菅野祐悟/筝と尺八と管弦楽のための協奏曲~Revive~(世界初演)
     ~休憩~
ショスタコーヴィチ/交響曲第5番
 指揮/藤岡幸夫
 筝/遠藤千晶
 尺八/藤原道山
 コンサートマスター/木野雅之
 フォアシュピーラー/九鬼明子
 ソロ・チェロ/菊地知也

後半はまだしも、前半は全く馴染の無い作品。私はテレビは余り見る習慣が無いので、大河ドラマなるものも一度か二度見た程度で、その音楽もほとんど初めて耳にしたほどです。
プログラムによると、菅野祐悟は1977年生まれで東京音大の作曲家卒。2004年にドラマ劇伴デビューしたそうで、映画やドラマなどのメディアで活躍中の若手作曲家。客席で見かけましたが、確かに若いという印象。

冒頭の「軍師官兵衛」はメイン・テーマに続き「天才官兵衛」「官兵衛走る」「軍師官兵衛」というピースが4楽章制の組曲の様に続けて紹介されました。
テレビではメイン・テーマは広上淳一とN響、劇中の音楽はポーランドでワルシャワ・フィル(ミハウ・ドヴォジンスキ指揮)が演奏しているとのこと、今度改めてテレビのスイッチを入れてみましょうか。

続く邦楽器のための協奏曲はシアトル交響楽団からの委嘱作とのことで、2年前から取り組んで書き下ろした作品。プロジェクトリーダーの峰岸良彰氏の声掛けで世界に先駆けて初演される運びになったのだそうな。
筝も尺八もオケと対峙するには音量が足りないため、スピーカーを設置する裏方さんたちが大活躍していました。東日本大震災からの復興がテーマで、タイトルは文字通り「復興」の意味。「Sunrise」「Pray」「Future」の3楽章で構成されます。

第1楽章は筝のソロから、第2楽章が尺八のソロから始まり、第3楽章は管楽器やコントラバス奏者の手拍子(4拍子のシンコペーション主体)が頻繁に繰り返され、時には尺八奏者も手拍子に加わるリズミックな躍動に満ちたもの。
客席の反応も好評で、確かにアメリカで演奏されれば受け入れられるのは間違いないでしょう。ただ個人的には「軍師官兵衛」も含め、全ての楽章が大音量で賑々しく終わるのはやや単調にも感じました。私の感想がマイナーな部類に属することを期待しましょう。

最後のショスタコーヴィチ。特に言うことはありません。
藤岡は、渡邉暁雄氏の最後の弟子として日本フィルで学んでいた方。当時日フィルに度々客演していたサー・チャールズ・グローヴスが彼を認め、英国に留学した経歴があります。シャンドスで吉松作品を録音し、ニュー・ディレクションの一人として注目されたのもこの頃。言ってみれば、グローヴス卿の引きが無ければ今日指揮台に立っていることは無かったでしょう。
日本フィルにとっては駆け出し時代から育ててきた経緯もあり、藤岡氏としては現在も「振らせて頂く」というスタンスでしょう。オケとしても「少しは成長したかな」という立場。ショスタコーヴィチは、確か藤岡が日フィル定期にデビューした作曲家(第7交響曲)で、今回はその意味でも節目となるプログラムだったと思います。

客席には懐かしい藤岡パパ(蝶の大家!)の姿もあり、私としても些か感慨がありました。

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