ヒガンバナ

チョッと早いようですが、ヒガンバナを取り上げます。
早い、というのは二つ意味があります。
その第一、この花は名前の通り秋のお彼岸に合わせたように咲きますね。お彼岸には未だ時間がありますが、早いものはもう咲き出しています。萎れた株もあるほど。
今年は例年より開花が10日ほど早いような気がします。これも気候変動の一例でしょうか。
第二は、やはり早いと言っても咲き出しているのは一部のようです。
ヒガンバナは割合普通に路傍や民家の庭などに出てきますが、住宅地のものは漸く莟が目立つ段階。
私が開花を確認したのは昨日、品川区民公園をぐるり一周した観察です。
「彼岸花」は別称が極めて多いことでも異常なくらいですね。有名なのは「曼珠沙華」(まんじゅしゃげ)。むしろこちらが正式な和名だと思っている人も多いでしょう。
この名前の由来は梵語です。梵語で「曼珠沙」とは朱華のことだそうですね。朱華とは赤い花のこと。
しかし梵語の本家インドにはヒガンバナは無いそうです。つまり日本人が独自に判断して、曼珠沙に華(花)の一文字を付け足して「マンジュシャゲ」と命名した、というのが答です。
これは私の独断じゃなく、牧野富太郎博士が書かれていること。その孫引きに過ぎませんからね。
一方、ヒガンバナの中国名は「石蒜」(せききん)。これは葉から来た命名で、葉がニンニク(大蒜)の葉にそっくりだから。しかも中国ではヒガンバナは石がごろごろしているような土地に生えるので、石場の大蒜=石蒜、というワケ。
牧野博士によれば別称は何十、山渓図鑑によれば500以上もある由。
曰く、シビトバナ(死人花)、痺れ花、地獄花、捨て子草、幽霊花、厄病花など、不吉なものが多いようです。
これは鱗茎にアルカロイドがあって有毒だからですが、あくを抜いて水にさらせば食べられます。実際、大昔は飢饉の際には食用にしたそうです。
「花見ず葉見ず」(ハナミズハミズ)という別名もあって、これは花の時期には葉が無く、葉は花が終ってから伸び出すためで、学問的考察を反映した名前。
学名は Lycoris radiata リコリス・ラディアータ。リコリスはギリシャ神話の「海の女神」で、豪華な美しさからの連想でしょう。
種名のラディアータは「放射線状の」という意味。花の形であることは明白です。
ところで「白花彼岸花」というものがあるのをご存知でしょうか。
かなり以前に牧野記念庭園を訪ねた時、この庭園に白い花のヒガンバナがあることを知りました。
その時は季節が違っていたので実物を見ることは出来なかったのですが、何と昨日、品川区民公園を歩いていて偶然に白花に遭遇しました。
運良くカメラを持っていたのでパチリ。掲載した写真がそれです。 
                                     ヒガンバナ 037
実物に遭いたい方は品川まで遠征するか、牧野記念庭園を訪ねてみることをお薦めします。(牧野庭園に今もあるか否かは保証の限りじゃありませんけど・・・)
牧野記念庭園は、西武池袋線の大泉学園駅で下車、石神井公園の方に向かって少し南下したところにあります。
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