愛セントレジャーはアランディ

英セントレジャーと同じ日、アイルランドのカラー競馬場でもアイリッシュ・セントレジャー(GⅠ、3歳上、1マイル6ハロン)が行われました。
セントレジャーと言っても、こちらは3歳馬限定の所謂クラシックではなく、古馬も出走できる単なるステイヤーのための一戦に過ぎません。
第二次世界大戦後の潮流である競馬のスピード化、早熟化、高興行化の波をモロに被った長距離レース。
英国に範を採ったアイリッシュ・セントレジャーは遂に1983年から古馬にも解放され、今日に到っています。それはフランス・セントレジャー(ロイヤル・オーク賞)とても同じ。
セントレジャーが未だにクラシック・レースとしての「格式」を残しているのは、本家であるイギリスと超保守的な日本の菊花賞だけになってしまいました。
さて今年の愛レジャー、8頭が出走してきましたが、肝心の3歳馬はオブライエン厩舎のペースメーカー? ムーン・インディゴ Moon Indigo 唯一頭です。
大方の理想は、古豪イェーツ Yeats が圧勝してアスコットの感動を再現することだったでしょうが、現実は極めて厳しいもの。
イェーツに付けられた4対1というオッズは4番人気でしかなく、鞍上も英国遠征中のムルタに替りへファーナン。前半こそ好位をキープしたものの直線ではバッタリ、何と勝馬からは60馬身も離された8着どん尻の完敗でした。このまま寂しく引退に向かうのでしょうか。
そんな中で実績を買われて1番人気(2対1)に推されたゴドルフィンの6歳馬シアパレルリ Schiaparelli もまた、ペリエ騎乗で3着敗退。ゴドルフィンの英愛セントレジャー同時制覇は成りませんでした。
勝ったのは3対1のアランディ Alandi 、去年のオークス4着馬クローワンス Clowance の追い込みを半馬身抑えての優勝です。
3着に5馬身離されて逃げたシアパレルリ。
アランディはジョン・オックス厩舎、ミック・キネーン騎乗ですから、あのシー・ザ・スターズと同じコンビです。
馬主は名門アガ・カーン。残念ながら殿下は競馬場には来られませんでしたが、辛抱強く同馬の成長を見守った甲斐がありましたね。
アランディはデビューが去年、しかも3歳の秋という奥手で、これで未だ7戦4勝の4歳馬です。父はガリレオ。
この後はロンシャンのカドラン賞を目標にし、来年のカップレースでこそ本格化する器ではないでしょうか。
そろそろ長距離戦も世代交代の時期に入ったようです。イェーツ、シアパレルリ、ジョーディランドなどに替って、このアランディやセントレジャーで1・2着したマスタリーやカイト・ウッドが台頭してきました。
土曜日のカラー競馬場では、GⅠ戦がもう一鞍組まれ、これが今年アイルランドで行われる最後のGⅠ戦となります。
ナショナル・ステークス(GⅠ、2歳、7ハロン)。この日は先日亡くなった名伯楽を偲んで「ヴィンセント・オブライエン・デイ」に指定されていましたが、ナショナル・ステークスも「ヴィンセント・オブライエン」が冠となっていました。
6頭の精鋭、半分の3頭がエイダン・オブライエン厩舎、イーヴンの1番人気も軍団の1頭アルフレッド・ノーベル Alfred Nobel という構成でしたが、本命馬はどん尻6着に敗退。オブライエン厩舎にとってはイェーツに続くどん尻負けの屈辱でした。
勝ったのは、新馬戦を楽勝したばかりながら2番人気を集めた素質馬キングスフォート Kingsfort 。首差2着も同じく1戦1勝のチャバル Chabal が入りました。
1馬身4分の3差3着には、オブライエン軍団のペースメーカーで最も人気の無かったベートーヴェン Beethoven が粘り込んでいます。
(この馬は名前負けでしょ)
キングスフォートはケヴィー・プレンダーガスト厩舎所属、デクラン・マクダナー騎手の騎乗。
このGⅠ勝利で、来年の2000ギニーに8対1のオッズが出されて1番人気に上がりました。
今シーズンはこれが最後のレースとなり、冬の間は夢を育てることになるでしょう。
カラーのもう一鞍はブランドフォード・ステークス(GⅡ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。
ここは5頭立てで、漸く1番人気(11対10)のチャイニーズ・ホワイト Chinese White が期待に応えました。
2着は2馬身でローマン・エンプレス Roman Empress 、3着に1馬身4分の3でシーズ・アワ・マーク She’s Our Mark の順。
デルモット・ウェルド厩舎、パット・スマーレン騎乗の4歳牝馬で、今シーズンはリステッドからGⅢへ、更にGⅡへと着実に成長してきた馬。次は当然ながらGⅠのオペラ賞を目指すことになるでしょう。
ところで今日の日曜日は、ロンシャン競馬場で凱旋門賞を目指す馬のトライアル戦がいくつも行われます。
3歳牝馬最強のスタチェリータ、牡馬の代表カヴァリーマン、古馬の筆頭格ヴィジョン・デ・タと・・・。
いよいよヨーロッパの芝コースが騒がしくなってきましたな。結果はまた明日。
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