凱旋門賞前夜祭

こういうタイトルにしておきましょうか。
いよいよ世界が注目する凱旋門賞が今日に迫ってきましたが、この週末は何も凱旋門賞だけがメインじゃありません。土・日の二日間に亘ってロンシャン競馬場で行われるパターン・レースは全部で11レース。
土曜日は1日8レースのうち、5レースがパターン・レースです。内訳はGⅠが1鞍、残り4鞍は全てGⅡ戦。日曜日は6つのパターン・レースの全てがGⅠですから、GⅢクラスが一つも無いという超豪華プログラムになっているわけですな。

ということで、土曜日の結果はレース順に取り上げましょう。

各レースの報告に入る前に、今年の開催は騎手に大きなドラマが生まれました。
即ち、前日の競馬でクリストフ・ルメール騎手が落馬して骨折、予定していた主力馬への騎乗が不可能になってしまったのです。
更に皮肉なことに、当初発表されていた出馬表でルメール騎乗が決まっていたパターン・レース5鞍のうち、何と4レースがルメールが乗るはずだった馬が勝ってしまったのです。もし落馬がなければ、何とルメールは1日で重賞4勝という快挙を達成したはず。病院で痛みを堪える同騎手にとっては、正に泣きっ面に蜂状態だったでしょうね。

さて、
ショードネー賞(GⅡ、3歳、3000メートル)は3歳馬のみによる長距離戦。フランスではセントレジャーに相当するロワイアル・オーク賞が古馬にも開放されてしまったため、実質的にはショードネーがセントレジャー的存在と呼んでも良いのじゃないでしょうか。

6頭が出走しましたが、優勝(17対10)は、そのルメールが乗ることになっていたマニガー Manighar 。2着は半馬身でロス・クリスティアノス Los Cristianos 、3着に更に2馬身半差でアイザフォスキ Aizavoski の順。
6対4で1番人気に支持されたクレアモン Claremont は伸びず4着敗退。

レースはアイザフォスキの速い逃げで始まり、3番手で追走したマニガーが直線で抜け出す展開。最後方から追い込んだロス・クリスティアノスは時既に遅し、という結果でした。

勝馬に騎乗したのは、乗り替わったジェラール・モッセ。マニガーは最近7戦で6勝、2着1回という上昇馬で、次の目標は当然ロワイアル・オーク賞になります。
アラン・ロワイヤー=デュプレ厩舎、馬主はアガ・カーンというコンビを良く覚えておいて下さいな。

続くはこの日のメイン、GⅠのラ・フォレ賞(GⅠ、3歳上、1400メートル)です。14頭が出走してきましたが、断然の1番人気は7つ目のGⅠ制覇を狙うゴールディコヴァ Goldikova で2対5。

今年の凱旋門開催で、オッズの左側より右側の数字が大きい馬、即ち日本流に言えば単勝2倍を切る馬はこのゴールディコヴァと凱旋門賞のシー・ザ・スターズだけでしょう。
それほどガチガチの本命と目されていたゴールディコヴァでしたが、意外や3着敗退。ロンシャンにショックが走りました。

替って栄冠を勝ち得たのは、196対10というヴァレナール Varenar 、2着にも60対1のスイート・ハース Sweet Hearth が短頭差で飛び込み、とんでもない配当になってしまいました。
3着のゴールディコヴァは2着から半馬身差は惨敗と言うべきでしょうか。

レースはウェルシュ・エンペラー Welsh Emperor が極めて速いペースで逃げ、ゴールディコヴァはこれを好位で追走していました。ところが直線でいつもの切れ味は不発、穴馬の後塵を拝してしまいます。
ヘッド師からは敗因不明のコメント、予定しているブリーダーズ・カップ参戦は微妙になってきたようです。

勝ったヴァレナールは後方待機策が奏功、初めてのパターン・レース勝利をGⅠで飾りました。
ヴァレナールはアガ・カーンの所有馬で、ロワイヤー=デュプレ厩舎。即ちこのコンビはこの日早々にダブルを達成したことになります。
更に2着のスイート・ハースもデュプレ師の管理馬。ここはデュプレ厩舎のワン・ツー・フィニッシュでもありました。
騎乗していたのは、当初の予定通りステファン・パスキエ。

次にロワイアリュー賞(GⅡ、3歳上牝、2500メートル)に行きましょう。
ここは7頭立て。勝ったのは19対10のダルヤカナ Daryakana 。2着に2馬身半差でパーンテュア・レア Peinture Rare が入り、3着に4分の3馬身で1番人気(6対5)のプルーマニア Plumania の順。

勝馬の名前からピンと来るように、これまたアガ・カーン所有、ロワイヤー=デュプレ厩舎の馬。このコンビにとっては、驚異のトレブル達成となりました。
この馬も負傷したルメールが騎乗予定でしたが、乗り替りの幸運は又してもジェラール・モッセ、彼にとってはダブルとなります。

ダルヤカナはパターン・レース初挑戦で初勝利ながら、これで負け知らずの4戦4勝。師曰く、エンジンの掛りが遅い馬だけれど、一旦スピードに乗れば素晴らしい末脚を発揮するタイプとの由。
この日もチャリティー・ベル Charity Belle に騎乗したデットーリがスローペースに落としたのも何のその、連勝街道を4に延ばしました。
当然ながら4歳となる来年も現役に留まる予定です。

かつてはロン・ポワン賞と呼ばれたダニエル・ウィルデンシュタイン賞(GⅡ、3歳上、1600メートル)。ダニエル・ウィルデンシュタインと言えば、名牝アレ・フランスの馬主で、パリを代表する画商として有名だった方。2002年からこの名前に変更され、1990年からはGⅡに格上げされた一戦です。

15頭の多頭数が揃いましたが、この日初めて1番人気の馬が期待に応えて快勝しました。
16対5の支持を集めたタマジルテ Tamazirte 。2着は1馬身差でダンス・グレック Danse Grecque が続き、3着には頭差でマーシーラゴ Murcielago という何とも読み難い名前の馬。

タマジルテはジャン・クロード・ルジェ厩舎の3歳牝馬。今シーズンはこれで終戦ですが、来シーズンも現役に留まる予定です。
この馬もルメールを予定していましたが、乗り替りは同じクリストフでもスミオンの方。いろいろ物議を醸すスミオンですが、彼もまた肘の故障で休養していた騎手。皮肉にもこれが怪我から復帰しての初勝利となりました。タマジルテでの最後方から一気の追い込みは、スミオンの得意技。名手健在をアピールしました。

この日のラストはドラー賞(GⅡ、3歳上、1950メートル)。何とも中途半端な距離ですが、歴史と伝統のある一戦です。
13頭立てのゴール前は大混戦。5頭が同時に流れ込んで、1着から5着までの着順が全て首、即ち首、首、首、首という珍しい記録になりました。

成績表に記載されるのは、1着パイプドリーマー Pipedreamer 、2着グリ・ド・グリ Gris De Gris 、3着フェイマス・ネイム Famous Name 、4着ストッツフォルド Stotsfold 、5着スターリッシュ Starlish ということになります。

勝馬のオッズは83対10、13対10の1番人気は、最後方から追い込んで結果3着のフェイマス・ネイムでした。

レースはグリ・ド・グリとスイーツ・ミー Suits Me の激しい先行争いで始まり、追い込んだ馬の差し比べになった形です。
勝ったパイプドリーマーは、去年7月以来の勝ち星。これまたルメールが騎乗予定だった馬ですが、ここではドミニク・ブフが乗り替っていました。
調教師はイギリスから遠征したジョン・ゴスデン。この日初めての遠征組による勝利です。

なお、この日はリオ・デ・ジャネイロを持つブラジルからも多くの馬が参戦して話題になりました(?)。
即ち、ラ・フォレ賞のオペラ・コミカ Opera Comica 、ダニエル・ウィルデンシュタイン賞のアンクル・トム Uncle Tom とオロヴェーソ Oroveso 、ドラー賞のエストレラ・アンキ Estrela Anki 。

残念ながらどの馬も着順掲示板には載らず、オリンピックの招致レースのようなわけには行きませんでした。2016年の巻き返しを期待しましょうか、ね。

あ、今日の凱旋門賞にもホット・シックスが出ていますね。この結果を待ってから最終結論としましょう。

 

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