強者弱者(13)
紅葉狩
十七日、神嘗祭。此ほど、官設の各停車場に回遊列車の如才なき広告を見る。紅葉の名所を描き出したるカード、儀容いかめしき役人の手の内とも覚えず。季に入りて雛妓、皆『紅葉の橋』といふをかなづ。雨さむし。更闌けたり。同じ子の『潮来出洲』は暮れ行く春の雨しめやかなる夜なりしかなと思ふにつけ、歓楽の日を思ふ哀感の転た切なるを覚ゆ。
コスモス満開。野路菊咲き初む。夜に入りて月明、帝都を氷壺の裡に照す。山の手の町々吟声頻なり。
晴天にもまた寒蝉の声を聴かず。
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今日は伊勢神宮の神嘗祭(かんなめさい)。参拝される方も多いでしょう。
この頃から鉄道各線の所謂公共サービスが始まったみたいですね。今では当たり前のことですが、当初は鉄道も役人仕事で利用客の利便などは考えていなかったようです。
「雛妓」(すうぎ)とは、未だ一人前にならない芸者のこと。
この方面は詳しくないので不案内ですが、『紅葉の橋』も『潮来出洲』も俗揺のタイトルじゃないでしょうか。
現在ならギャルたちが流行りのポップスを歌うという風情?
氷壺(ひょうこ)は、氷壺秋月(ひょうこしゅうげつ)から引用した表現でしょうか。「氷壺秋月」とは、心の極めて清く明らかなことの喩。
寒蝉はツクツクボウシのこと。当時は直前までこの蝉の声が聞こえたのでしょうが、流石に神嘗祭までには鳴かなくなるということでしょう。
現在でも郊外に行けば未だツクツクボウシも鳴くようですが、23区では無理。
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