ニューマーケット「チャンピオンズ・ミーティング」のフィナーレ

「チャンピオンズ」ミーティングのメインはチャンピオン・ステークスですが、この日は7レース中6レースがパターン・レース、残る一鞍も伝統あるセザレウィッチ・ハンディキャップですから息が抜けません。
ここは行われたレース順に結果報告と行きましょう。

チャレンジ・ステークス(GⅡ、3歳上、7ハロン)は1878年創設の歴史あるスプリント戦。パターン・システムが導入された1971年からGⅢに格付けされてきたレースですが、1987年からはGⅡに格上げされています。当初6ハロンでしたが、1977年から現在の7ハロンに。

1頭取り消して9頭立て。ここは終始好位を進んだアラビアン・グリーム Arabian Gleam が抜け出しての勝利。オッズは7対1。2着は首差でウークバー Ouqba 、3着に4分の3馬身でドナティヴァム Donativum の順。
1番人気(7対2)に推されたゴドルフィンのアシュラム Ashram は5着敗退に終わりました。

ジェレミー・ノセダ調教師の管理馬、ジョニー・ムルタが騎乗。

続いて1875年創設の伝統ある2歳チャンピオン決定戦であるデューハースト・ステークス(GⅠ、2歳、7ハロン)。
今年は抜けた2歳馬がいないことを反映してか、15頭もの多頭数が揃いました。人気も未だこれが3戦目というチャバル Chabal で9対2です。

結果は大荒れになりました。アイルランドからオブライエン厩舎が送り込んできた3頭の中から主戦ムルタが選択したのは、1戦1勝のスタインベック Steinbeck 。
スタート良く飛び出したスタインベックがそのまま逃げ切りを図りましたが、ゴール前は4頭が並ぶ大接戦に。

写真判定の結果、首差で制したのは33対1の大穴、オブライエン勢の伏兵ベートーヴェン Beethoven でした。2着には、これもオブライエンのフェンシング・マスター Fencing Master が入りオブライエン厩舎のワン・ツー・フィニッシュ達成です。
3着はハナ差でエクステンション Xtension が食い込み、更に首差4着が逃げ粘ったスタインベックの順。本命チャバルは10着惨敗に終わりました。

オブライエン厩舎の3頭は1・2・4着を占めましたが、人気の無い順での入線。師の心境はやや複雑かも知れません。
勝ったベートーヴェンには珍しくもライアン・ムーアが騎乗していましたが、初めて着用した遮眼帯が功を奏したようです。

オブライエン師によれば、遮眼帯のアイディアは前走で同馬に騎乗した子息のジョセフ・オブライエンの提案だった由。
これまで一線級と手合わせしながら結果を出せなかったベートーヴェンですが、一戦毎に力を付けてきていることは間違いなく、漸く名前に恥じないGⅠタイトルを手にしたことになりますね。

この日の第3レースがメイン・イヴェントたるチャンピオン・ステークス(GⅠ、3歳上、1マイル2ハロン)です。
1877年創設で、凱旋門賞より遥かに歴史ある伝統のレース。1マイル2ハロンという微妙な距離ながら、その年の中・長距離路線(所謂クラシック距離)の総決算として知られるもの。

昨日の日記に枠順を紹介したように、今年は14頭と揃いました。人気は愛ダービーを制したオブライエン厩舎のフェイム・アンド・グローリー Fame And Glory に集まって6対4に支持されましたが、ここにも波乱が待ち構えていました。

オブライエンのペースメーカーであるセット・セイル Set Sail がハイペースで大逃げを打ちますが、多馬は全く無視した展開。スタートで出遅れたオークス馬のサリスカ Sariska は最後方から進みます。

ムルタ騎乗の本命馬が先ず動きましたが、意外に反応が鈍く、替ってトム・クィーリー騎乗のトゥワイス・オーヴァー Twice Over が先頭に・・・。
これをリチャード・ヒルズ騎乗のマワテーク Mawatheeq が追い詰める展開となりましたが、結局優勝はトゥワイス・オーヴァー、2着に半馬身でマワテークが入りました。3着に1馬身遅れ、後方から追い上げたサリスカの順。
4着にパイプドリーマー Pipedreamer 、5着シティー・リーダー City Leader 、フェイム・アンド・グローリーは6着の凡走。

2着入線のヒルズ騎手から進路妨害の申し立てがありましたが、審議の結果、入線通りで確定しています。

トゥワイス・オーヴァーは去年のチャンピオン・ステークスでニュー・アプローチ New Approach の2着に入った馬。漸くGⅠのタイトルを手にしました。

管理するヘンリー・セシル師にとっては、これがチャンピオン・ステークス3勝目。1988年のインディアン・スキマー Indian Skimmer 、1996年のボスラ・シャム Bosra Sham と懐かしい馬が思い起こされます。

このあとが有名なセザレウィッチ・ハンデ(2マイル2ハロンのマラソン・レース)で、32頭立てながら1番人気(9対2)のダーレー・サン Darley Sun が2着を5馬身も離して圧勝しています。

さてパターン・レースに戻り、4つ目は1981年創設という新しいレースのロックフェル・ステークス(GⅡ、2歳牝、7ハロン)。1986年からGⅢ、1998年からGⅡに格上げされています。

今年は11頭立て。圧倒的1番人気(4対6)に支持されたタバッサムTabassum が逃げ切りを策しましたが、最後方から満を持して追い込んだミュージック・ショウ Music Show の差し切り勝ち。
首差2着にもアイルランドから遠征してきたアタサリ Atasari が追い込み、本命タバッサムは更に4分の3差及ばず3着。

勝ち馬は25対1という人気薄でしたが、このレースは1000ギニーに直結することの多い重賞だけに注目しておく必要があるでしょう。

ミック・シャノン厩舎、今回は乗り替わったキーレン・ファロンが手綱を取っていました。

さてプライド・ステークス(GⅡ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。1946年に創設されたアスコット競馬場のプリンセス・ロイヤル・ステークスが前身で、1971年のパターン・システム導入時はGⅢ、2008年にニューマーケットに競馬場を移すと同時にGⅡに格上げさたレースです。
現在のプライド・ステークスという名称は、2006年の勝ち馬に因んで変更されたもの。

1頭取り消しの10頭立てでしたが、このレースも本命馬が勝てません。
7対4の1番人気に支持された去年のこのレースの覇者クリスタル・カペラ Crystal Capella が逃げ切って2連覇達成と思われた瞬間、強烈に追い上げたアシャランダ Ashalanda が最後の一歩で短頭差で差し切っていました。
3着は1馬身半差でサフィラズ・ファイア Saphira’s Fire 。

勝ったアシャランダは11対2。アラン・ロワイヤー=デュプレ師がフランスから送り込んできた新たなスターで、クリストフ・ルメール騎手の好騎乗が光りました。
アガ・カーン所有の馬で、これで4戦3勝。既に6月にマユレ賞(GⅡ)を制しています。重馬場の長距離を得意とするキャリアの浅い牝馬で、このあとは香港の大一番を狙う予定だそうです。

やれやれ、やっと最後です。ジョッキー・クラブ・カップ(GⅢ、3歳上、2マイル)はシーズン最後の長距離レース。歴史は古く1873年創設。パターン・システム導入(1971年)からずっとGⅢにランクされている重賞です。

今年は8頭立てで行われましたが、この日のパターン・レースで初めて1番人気の馬が勝ちました。9対4に推されたアクマル Akmal がスタートから先頭に立ち、徐々にペースを上げての逃げ切り勝ち。
2着は半馬身差でネハーム Nehaam 、3着も更に半馬身でアパヴ・アヴェレッジ Above Average の順。

勝ったアクマルは4連勝、今シーズンはこれで7勝という上がり馬です。もちろんパターン・レースは初勝利。

ところで同馬を調教するジョン・ダンロップ師にとってはこれがニューマーケット競馬場での250勝目。
師は1966年に最初の1勝を記録したのが、ここニューマーケットで、タミーノ Tamino という馬だったそうです。
師に記念の1勝をプレゼントしたのは、マイケル・ヒルズ騎手。

 

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