読売日響・第519回名曲シリーズ

17日に行われた読響定期は、高崎遠征と重なったためにパス。同じプログラムが芸劇名曲にもありましたから振替も可能でしたが、何となく聴く意欲が沸かず、断念してしまいました。
その定期はメンデルスゾーン特集のⅢ。実は私はⅠもⅡも聴いていませんから、今回の読響メンデルスゾーン・チクルスは初めて聴いたことになります。

下野竜也も4月定期以降は聴いていないので、これまた久し振り。

《メンデルスゾーン生誕200年記念プログラムⅣ》
メンデルスゾーン/交響曲第1番
     ~休憩~
メンデルスゾーン/ピアノ協奏曲第1番
メンデルスゾーン/交響曲第5番
 指揮/下野竜也
 ピアノ/小菅優
 コンサートマスター/デヴィッド・ノーラン
 フォアシュピーラー/小森谷巧

暫く重厚長大路線が続いた読響ですが、今回はメインの14型が最大という編成。他は12型のスッキリした舞台が目に止まります。
とは言っても、いつもの読響パワーは健在、重厚な弦を中心とした音作りに変化はありません。

今回のプログラムは、名曲シリーズではありながら比較的珍しいメンデルスゾーン作品が並びました。もちろんメンデルスゾーンは少年時代から有名でしたが、この3曲は20代初めまでに出来あがった作品ばかり。本当の意味で大家になる前の若書きではあるでしょう。

その意味で、下野のスピード感溢れる、若々しい音楽表現にはピッタリの曲目ですね。特に第1交響曲では青年メンデルスゾーンの清々しい音楽を楽しみました。

ピアノの小菅も鮮やかなテクニックで好演。この人はスタインウェイの機能をフルに響かせるというタイプではありませんが、中間色を主体にした纏まった音色がメンデルスゾーンには適していると思いました。

第1協奏曲はモーツァルトやベートーヴェンの後継というより、むしろウェーバーの小協奏曲の弟分のように三つの楽章が続けて演奏されます。特に第2楽章に相当するアンダンテの抒情性から、第3楽章プレストの快活な表情への転換が見事。
カデンツァはありませんから、ピアノ好きにはやや物足りないかも。

そこに配慮したのでしょうか、小菅は同じメンデルスゾーンの無言歌を一つアンコールしました。作品38の6。第3巻の6番として整理されている「デュエット」というタイトルが付いた一品で、1836年の作品ですから、この日の曲目では最も後の作曲になるものです。それだけに音楽も深さを増した感じ。

無言歌のアンコールから休憩なしで第5交響曲というのは気の効いた流れですね。というのも第5の第3楽章はほとんど無言歌でしょ。
それにしても、メンデルスゾーンはこの美しいメロディーを一度出しただけで終わりにしちゃう。ここを聴くと、何て贅沢な作曲家だと思います。

メインの第5交響曲、下野の指揮は最後でサプライズがありました。それまではいつものように勢いの強い音楽を創って行きましたが、最後のコラールは寧ろオーケストラを真に柔らかく、フワッと心に沁み込むように響かせたのです。恐らくオルガンを連想させるような音が欲しかったのでしょう。ここは秀逸。
読響だってこういう音も出せるんじゃないか。

私には、下野は勢いと流れで音楽する指揮者という印象でしたが、「宗教改革」の最後を聴いて、少し方向転換の兆しがでてきたのかな、という印象も持ちましたね。

名曲コンサートですから、オーケストラもアンコールがあるかな、と予想していましたが、これは外れ。
この日はテレビ収録がありました。

最後に一つ。

配られたチラシに来シーズンの予定が入っていました。定期だけに限ると、全11回のうち常任のカンプルラン3回、正指揮者・下野2回の他、これまで首席を務めたブルゴス、尾高、アルブレヒト、スクロヴァチェフスキが各1回。残り2回がテミルカーノフとコルステンという人。これまでに比べてやや新鮮味に欠けるような気がします。

取り上げる曲目も例年に比してやや保守的。全部のシリーズを見渡しても、アッと声を上げるようなサプライズはありません。エッと思うのがアルブレヒトのシュポーア・プログラムくらいのものでしょう。
これまでの反動でしょうか、私としてはやや失望です。

 

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2件のフィードバック

  1. スネグル より:

    初めてコメントいたします。
    なるほど、来シーズンのプログラム、往年のファンの方にはあれでは保守的なんですね。
    私はクラシックを聴き始めてまだ日が浅いので、「読響はアグレッシブな内容だなぁ」と感心してしまいました。
    メインとは違うところに反応してしまって済みません。
    これからも楽しみに読ませていただきます。

  2. メリーウイロウ より:

    スネグル様
    コメントありがとうございます。
    ご指摘の通り、来期の読響のプログラミングはアグレッシブと感じられるかも知れませんね。
    ただ、私の感覚では、ここ数年のアグレッシブ度に比較すると大人しくなったかな、と感じたものですから・・・。
    失望というのは言い過ぎかもしれません。
    カンプルランの3種には3人の作曲家による「ペレアスとメリザンド」が組まれているのは興味を惹きますし、7月のメシアンやデュティユーはカンプルランならでは。ドビュッシーの幻想曲も素晴らしい作品ながら、滅多にナマで聴くことはできません。
    7月定期は必聴の回でしょうね。
    11月のコルンゴルトも落とせません。私のようなロートルには懐かしい曲ですし、これまで不当に無視されてきました。これまたカンプルランに拍手。
    2011年2月のシュポーア・プログラムはサプライズですね。シュポーアは現代の指揮者の先駆けとなった作曲家ですし、確か楽譜に「練習番号」を導入した最初の人物だったと思います。
    アルブレヒトがシュポーア・リヴァイヴァルの口火を切るか。
    早速私も第3交響曲のスコアを海外に発注したところです。
    ということで、読響のプログラムはN響とは比較にならないほどアグレッシブですね。
    ただ、私にとって新たにスコアを取り寄せて予習しなければならないのはシュポーアだけなんです。

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