読売日響・第465回定期演奏会

休み明けに書く積りでしたが、興奮冷めやらぬうちに認めておきます。休日の読響定期は6時から、サントリーホールでの演奏です。
前日にみなとみらいホールでも聴いた、という知人に伺ったところでは、演奏も今一つ練り込みが不足、響きも箱庭的で物足りなかったということでした。しかし定期は素晴らしかった。ホールのこと、客席の位置など微妙なことで印象が変わります。それがまたナマ演奏の楽しみでもありましょう。

《ヴァンスカ・ベートーヴェン交響曲シリーズ?》
シベリウス/イン・メモリアム(葬送行進曲)作品59
ベートーヴェン/交響曲第1番 ハ長調 作品21
~休憩~
ベートーヴェン/交響曲第2番 二長調 作品36
指揮/オスモ・ヴァンスカ
コンサートマスター/藤原浜雄
フォアシュピーラー/小森谷巧

ホールに入るとコントラバスが第1ヴァイオリンの後にズラリ、今日は対抗配置ですね。以前ヴァンスカのベートーヴェン(第5交響曲)を聴いたときも対抗配置でしたから、ヴァンスカのベートーヴェン演奏のスタイルなのでしょう。
客席は空きが目立ちますね。このところ読響定期の入りが悪いようです。外来物に食われて日本のオーケストラまでお金が回らないんでしょうか。それじゃ本末転倒というもの、真のクラシック音楽ファンなら、何を聴くべきかをシッカリ選択して欲しいものです。

冒頭のシベリウス、二つある版のうち、改訂版が演奏されました。まぁ、妥当な選択でしょうね。ヴァンスカ氏、かなり思い入れ激しくオーケストラを咆哮させていました。時に荒過ぎやしないか、と心配になるほど。慟哭がホールを支配しました。
この僅か10分ほどの曲で、金管や打楽器のみならず、弦の後のパートも今日の出番は終了です。
本題のベートーヴェン、12型にコントラバス一人追加、という編成です。管楽器はもちろん楽譜どおりの2管編成、金管のアシスタントなどは使いません。ヴァイオリンについては少し注文を付けたいのですが、それは後ほど。

さてヴァンスカの指揮、アレッ、こんなに激しい指揮振りだっけ、と吃驚するほど、大きなアクションでオーケストラをドライヴします。
もちろんピリオド系の演奏スタイルとは無縁ですが、往年の巨匠風のドッシリしたベートーヴェンとも縁を切っています。颯爽としたテンポの中にも、激しいアクセントを強調し(特にsf)、アグレッシヴと表現したくなるほどの勢いで突き進むのです。前進また前進。
それだけでないことも事実で、緩徐楽章の弱音の美しさにも気配りが効いています。特に第2交響曲の第2楽章は、ボンクラ指揮者では退屈なだけの演奏に陥るものですが、ヴァンスカはシッカリと構成感を捉え、瞬時も退屈させません。さすが!

第1、第2共その終楽章の激しさ。弦楽器群のゴリゴリと擦る音が軋み、凡そ美しい合奏とは呼べない世界。このテンポでアンサンブルをキチンと揃えたり、音を美しく磨くなどは到底無理な話。返ってそのことが、ベートーヴェンの激しさを見事に表現した、というべきでしょう。
第1交響曲の第2楽章、第2ヴァイオリンからヴィオラ,チェロ、第1ヴァイオリンとメロディーが受け継がれていく様子は、対抗配置によって「ステレオ効果」がよく出ていました。
“あ、これって第9の第2楽章と同じだぁ。第9のアイディアの先駆けじゃないか”、と思い当たる余禄も。
ただし、第1ヴァイオリン6プルトに対し第2ヴァイオリンを5プルトと、タダでさえ音響的に不利な上に音量的にもバランスに問題がある、と聴きました。ここは一考を要すのではないか、と愚考した次第。

ま、それはともかく、ピリオド系はゴメンだけれど、肥満体のモッソリした演奏はなお困る、という方々には是非お薦めしたい、ヴァンスカのベートーヴェンでありました。今後の展開が大いに楽しみ。
 

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