N響・第1655回定期の放送
ハイビジョンでN響10月定期の放送がスタートしました。今回は10月17日にNHKホールで行われたA定期から。
10月は3回とも今シーズンからN響きの首席客演指揮者に就任したアンドレ・プレヴィンの担当です。
個人的にはなんで今更プレヴィンなのか、という感想ですが、楽員から慕われているということでしょうか。
極めて保守的な傾向の目立つN響の定期プログラムですが、流石に首席指揮者登場ということで珍しい作品も出てきます。今回のリームとCプロのプレヴィン自作ですね。
正直に言って、私はこの2曲しか興味ありません。プレヴィン・ファン、N響ファンの皆様には申し訳ありませんが・・・。
ということで曲目は、①W.リーム/厳粛な歌 ②R.シュトラウス/歌劇「カプリッチョ」から最後の場 ③R.シュトラウス/家庭交響曲 です。②での独唱はソプラノのフェリシティー・ロット。
ヴォルフガング・リーム Wolfgang Rihm (1952- ) はシュトックハウゼンとクラウス・フーバーに学んだドイツの作曲家。カールスルーエの生まれです。前衛世代では最も「売れている」作曲家でしょう。
「厳粛な歌」の原題は Ernster Gesang 、N響でもお馴染のヴォルフガング・サヴァリッシュとフィラデルフィア管弦楽団によって委嘱された作品で、1996年作曲、1997年4月25日に委嘱者によってフィラデルフィアで世界初演されています。
スコアが手元に無いので詳しいことは判りませんが、ユニヴァーサルから出版されていて、同社のホームページによるとイングリッシュ・ホルン、クラリネット4、ファゴット2、コントラ・ファゴット、ホルン4、トロンボーン3、チューバ、ティンパ二、ヴィオラ12、チェロ10、コントラバス8という変則的な編成です。
要するにヴァイオリン、フルート、トランペットなど高い音色の楽器が一切使われていないのが特色。
演奏時間は13分と記載されています。スコアは売り譜みたいですから、気に入った人はどうぞ。
プレヴィン/N響は、いつもならヴァイオリンが座る位置に木管楽器8人を並べていました。予想した通り暗い曲で、イングリッシュ・ホルンがソロ的に使われている部分もあります。チョッとシベリウスの「トゥオネラの白鳥」を連想させる所も。
イングリッシュ・ホルンのソロは池田昭子? N響の看板娘ですね。
久し振りに見たプレヴィンは“歳取ったなぁ~”という印象。舞台にヨチヨチと登場し、眼鏡を近視用から老眼用に取り替えます(多分)。何事も動作がゆっくり。
指揮台に上るのはやっとの状態で、一人では降りられません。楽員が手を添えてやっとのこと。
でも音楽そのものは中々覇気があって良かったんじゃないでしょうか。
それでもN響とは何年契約か知りませんが、いつまで振れるのかやや心配ですね。
②は、練習番号258の管弦楽だけの「最後の場面」が演奏され、その後飛ばして265の1小節目の f から最後までが通して演奏されました。
歌劇「カプリッチョ」から最後の場、という表記の演奏は人によってカットの場所が異なりますが、今回のはネーメ・ヤルヴィのシャンドス盤と同じ選択です。
これも懐かしいロットは、姉御というよりはロットおばさんという感じ。ヤルヴィ盤も彼女ですから、十八番中の十八番ですね。手慣れたもの。暗譜で歌っていました。
③のようなフル編成の作品は放送では十分に効果が出ません。録音自体がダイナミック・レンジに配慮して音量を押さえていますから、演奏の雰囲気が判る程度です。多少アンサンブルががさついたり、細かいミスもあったりしましたが、演奏の流れは自然で、力演だったと思います。ナマで聴けばずっと楽しめたでしょう。
ただ、読響定期同様、サクソフォンはカットしていました。オーケストラの意向というよりプレヴィンの指示なんでしょうね。これは失望。
例のウィーン・フィルのティンパ二ストが叩いてシュトラウスも容認したというティンパ二の加筆は実行していました。尤も現代の楽器なら演奏もさほど難しくはないのでしょうが。
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