日本フィル・第595回東京定期演奏会

私が聴く予定の今月の日本フィルはこれだけ。正指揮者・沼尻竜典のマーラー第6。もちろん事前のマエストロサロンでたっぷり予習してましたから、聴きどころ、というか見所は押さえた積りです。演目は以下。

マーラー/交響曲第6番
指揮/沼尻竜典
コンサートマスター/扇谷泰朋
フォアシュピーラー/江口有香

そう、今月から3人目のコンサートマスターに就任した江口さんがフォアシュピーラーを務めています。なにしろ5管編成の大曲、舞台狭しと楽員が並びます。ハンマー(場所)はどこで叩くのかな。思わず探してしまいました。
沼尻氏自ら現地で調達してきたという、アルプスのカウ・ベル。なるほど小振り、これなら牛が首につけて歩けますね。本物ですわ。
首席ホルン、福川くんがイギリス留学を終えて帰ってきました。彼が加わるとホルン・セクションがレヴェル・アップする、ってサロンでも話題でしたね。実際、見事に安定したホルン、今日の最大の立役者でしょう。
しかし演奏は、こういうミーハー的な物見遊山をはるかに突き抜けた素晴らしいもの。沼尻氏の充実には改めて目を瞠ります。

沼尻竜典は、これまで知的な面が勝った指揮者というイメージが強かったのですが、最近は実に情感を大きく前面に出し、知と情が見事にバランスを取るようになってきたように思います。今回のマーラーもその典型。人事ではないロマン派への熱い想いが伝わってくるのでした。

プログラムに奥田佳道氏が一文を載せていました。この日の演奏を的確に予言したもの。まるでマーラーみたい。
“私たちはマーラー再発見の旅に誘われるのか。劇的高揚に胸ときめかすのか。それとも詩情や色彩の変幻に酔いしれるのか。”
三つのポイントが挙がっていましたが、私は挙げられた順に、感服しましたね。

マエストロは第2・第3楽章の順序について、明快な回答を用意していました。前の二つの楽章は、同じような楽想で始まります。調も同じイ短調。
それに対し、第3・第4楽章は、共にフラット三つのハ短調。ですから、第3楽章から第4楽章へは、ほとんどアタッカで入りましたね。更に、始めの二つの楽章は指揮棒を使いましたが、後半は終始、棒なしでリードします。

確かにこの方が座りが良いし、マエストロの作品に対する想いが的確に伝わります。第3楽章は素晴らしかった。でも、第4楽章はそれを更に上回り、まさに劇的高揚に胸がときめきましたよ。
実にいろいろな音が聴こえてきます。楽想も複雑に入り組みながら、何度も繰り返され、暗示が含まれている。CDなどで聴いていたのでは、見過ごしてしまうような些細な動きが耳に飛び込んでくる。こういう体験はナマでなければ出来ないし、マーラーのシンフォニーはレコードで聴くものじゃない。
思わずハッとするような場面がたくさんでてくること、それは即ち沼尻氏の読みが深い、ということでもあります。それこそマーラー再発見の旅。おぉ~、マーラーの第6を見直したゾォ。
そんな素晴らしい演奏。来週のツェムリンスキー、これは聴き逃せません。いざ、琵琶湖へ。

 

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