N響第1659回定期の放送

この回については触れたくなかったのですが、折角続けてきたので書いちゃいます。11月20日にNHKホールで行われたCプログラム、サンティ指揮の2回目。

曲目は4曲で、①レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」 ②レスピーギ/森の神々 ③ヴェルディ/歌劇「オテロ」から「柳の歌」と「アヴェ・マリア」 ④ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版) というもの。
②と③の間に休憩が入り、②と③はソプラノのアドリアーナ・マルフィージ Adriana Marfisi が歌います。

この回はサンティのお国物であるレスピーギとヴェルディ、しかも珍しい②が聴けるとあって、個人的には最も興味あるプログラムでした。しかし・・・。

①で触れたくない事故が起きてしまいます。第2部「朝のトリトンの噴水」が始まって間もなく、フルート、クラリネット、ハープの旋律を弦楽器が引き継ぐ所で、何と弦楽器(両ヴァイオリンとヴィオラ)がスッポリと落ちてしまったのです。具体的にはリコルディ版ポケット・スコアの16ページ、練習番号5からですね。(一人だけ頑張って弾いていたように聴こえました)

ドキッとして録画ディスクを戻して何度も確認しましたが間違いありません。
これは想像ですが、サンティの振り間違いでしょう。4拍子の fff が3拍子に変わるところを勘違いしたと思います。音楽が止まらなかったのはコンマス(篠崎氏)の判断が良かったから。さすがN響と言うべきでしょうが、何とも青ざめた瞬間でした。

ナマ演奏には事故は付き物ですが、天下のN響がこれでは困りますし、堂々と放送してしまうNHKも凄い。仮に私が担当ディレクターなら、この回は放送中止にするか、翌日の公演を再度録画しますがねぇ~。
ということで、事故後は音楽がバラバラ。客席の拍手も躊躇い勝ちだったように見えました。

②は珍しい作品。私は初めて聴きましたし、こういう曲をレスピーギが作曲していたことすら知りませんでした。
原題は Deita silvane と言い、1917年にA.ルビーノの詩に付けたピアノ伴奏による歌曲集です。

今回取り上げられたのは、後にレスピーギ自身がオーケストレーションしたものの由。テレビで確認できたのは、1管編成(フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴット、ホルン各1)にピアノ、チェレスタ、ハープ、打楽器2人に弦楽5部と見えました。ティンパ二は使っていなかったと思います。

三省堂から出ている「クラシック音楽作品名辞典」によると、(1)牧神 (2)花園の音楽 (3)エグレ (4)水 (5)たそがれ の5曲構成とありますが、管弦楽版では(2)と(3)が入れ替わって演奏されていました。スコアが出版されているのか否かも判りませんので、詳しい事は判りません。
(この辞典には管弦楽版に関するデータは記載されていません)

サンティは珍しくスコアを見ながら振っていました。

ところでソプラノ・ソロは、名前こそ異なれサンティの娘だと聞いたことがあります。サンティの来日の度に何か歌っているようですから間違いないでしょう。
しかしこのソプラノ、私は感心しませんね。声そのものに全く魅力を感じないのです。それは②も③も同じ。デスデーモナを歌わせたらもっと優れた日本人ソプラノがいるでしょうに。指揮者のごり押しだとしたら噴飯ものじゃないでしょうか。

④も私には辛い演奏でした。数日前に広上/札響によるバレエ全曲版を聴いたばかりという為もありましょうが、何とも鈍重に聴こえてしまいます。全曲に比して組曲が聴き劣りするということもよぉ~ぉく判りました。

チェスター版だと思いますが、「カスチェイ王の踊り」を「子守唄」に続けず、最後を fff で終わらせてしまうのは珍しい選択です。確かにスコアには二通りの選択肢が書かれていますが、ここで休みを置く演奏はナマ演奏とレコードを通じても初めての体験。
此処と「王女のロンド」の前にも一呼吸開けてしまうので、尚更音楽の持続性が失われてしまいます。

こんな演奏でも盛大な歓呼喝采で迎えるN響ファンは暖かいですね。知らない人が聞いたら、余程優れた演奏だったのかと勘違いするのじゃないでしょうか。

マエストロとコンサートマスターが握手をしながら長々と話し込んでいたのは、最初の曲でのミスに関して?

 

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