強者弱者(53)

角力

 雪解けの土新しき庭の片隅に蕗の薹を見る。
 露路を入りて裏通に出づ。水道栓皆藁の防寒衣を着けて立てり。日短く光微かなるに、洗濯する人の話弥よ出でゝ弥よ長きもをかし。
 大角力春場所、新聞紙皆其大部分を割きて勝負の記事に当つ。興がる人こそよけれ。興なき者にとりては何となく趣味を強ひらるゝ心地す。此頃、何処も同じ回向院の噂、九段、白山の花角力にて常陸山を知ったほどの男までが大多数の趣味に同じての高話、『社会』と名づくる暴君の行ふ趣味の専制政治、恐ろしとも恐ろし。

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「水道栓皆藁の防寒衣」とありますが、確かに昔はそうでしたね。冬は今より寒かったし、水道栓はむき出し。当然ながら水が凍るのを防ぐために、皆水道栓に藁を巻きつけていたものです。

大寒と雖もこの季節には漸く日が長くなり、日の出も少し早くなったような気がします。井戸端会議も話題が豊富になり、時間も長くなったということですね。
現代なら、早朝に犬の散歩に出る人も増え、ペット愛好家の立ち話も長くなるということ。これ実感です。

「角力」は「すもう」。現在は相撲を当てることが多いようですが、角力も同じことです。

秀湖は角力が嫌いだったようで、新聞各紙が挙って角力の記事ばかり載せるのを「趣味の専制政治」と称して貶しています。
現在ならテレビがスポーツ番組ばかり報道するのと同じこと。

どうやら私も同じDNAを受け継いでいるようで、高校野球が始まると全国ネットの国営放送が一日中放送しているのに我慢がなりません。野球に興味の無い私にとっては正に「趣味の専制政治」に違いありませんな。恐ろしとも恐ろし。

 

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1件の返信

  1. すごく面白いブログですねっ!
    これからも頑張って下さい!

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