読売日響・第523回名曲シリーズ

2月の読響は、4年振りとなる巨漢セゲルスタムの登場です。既に池袋と横浜でオール・シベリウス・プログラムを振り、昨夜と今夜行われるプロが二つ目。最後は定期でのマーラーという内容。

私の名曲シリーズ会員は今シーズン一杯ですから残り2回。何度曲目を見直しても趣旨が良く判らない選曲でしたが、折角ですから聴いてきました。そんな程度の期待感ですから、あまり信用しないで読んで下さいね。

ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」前奏曲と愛の死
ハイドン/トランペット協奏曲
     ~休憩~
セゲルスタム/交響曲第198番“Spring or winter, Winter or Spring”(世界初演)
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」第1幕への前奏曲
 指揮/レイフ・セゲルスタム
 トランペット/ルベン・シメオ
 コンサートマスター/藤原浜雄
 フォアシュピーラー/小森谷巧

私の中でハイドンとワーグナーはほとんど繋がりが無いし、ここに作曲者自作自演の初演曲が挟まれる意味も不明です。焦点が定まらないので、感想も取り付く島がありません。
どこから行きましょうかね。先ず協奏曲にしましょうか。

トランペット・ソロを吹くのは本当に若い人。1992年スペインのヴィーゴ生まれと言いますから、未だ二十歳にもなっていません。
プログラムに書かれたプロフィールによると、父親がトランペット教師だそうで、謂わば英才教育を受けた若者。現在はモーリス・アンドレの唯一の生徒として研鑽を積んでいる由。
会場では2008年にエイヴェックスから出たというCDも販売されていました。

確かにテクニックは素晴らしい人です。音色は軟らかしい、技巧にも無理がありません。オーケストラも可能な限りの軽快な足捌きでサポート。
第1楽章のカデンツァでは、滑るような音階を唖然とするような技で会場を唸らせました。

拍手が起こり、ソリストと指揮者が退場。次のカーテンコールでシメオは直ぐにアンコールを始めます。ハイドンじゃ物足りないと言わんばかりに、ね。
最初は自作のジャズかと思いましたが、そのうちに「熊蜂の飛行」であることに気が付きました。それほどにデフォルメされたアンコール。

ブラヴォーの歓声の中を退場し、再びコールに応えて戻ったシメオ。その手に楽器は無く、左手をズボンのポケットに無造作に突っ込んでいるのです。その後のコールも同じ。
私は演奏家が舞台でどんな作法をしようと気にする者ではありませんが、チョッとこれは感心しませんね。如何にもこんな曲は簡単なもの、と言わんばかり。トランペット奏者という肩書より、「ペット吹き」という称号を与えたいように感じましたな。

次は世界初演曲に行きましょうか。

セゲルスタムの交響曲は前回の来日でも聴きました。何番かは忘れましたが、その時と同様に作曲家自身は指揮台に立たず、オーケストラの中に入って第2ピアノ(舞台下手に置かれています)を担当します。
ピアノとハープが2台づつ左右対象に置かれ、ティンパ二を含めた4人で演奏される夥しい種類の打楽器が活躍する作品。
特に目立つのは、マーラーの第6交響曲で使われる木槌が何度も振り下ろされること。それにシュトラウスの得意とした雷鳴マシーンも派手に鳴らされていました。

演奏自体はコンマスがリードしていたようで、第1ヴァイオリンの1番プルトの譜面台の横に何やら小さな装置が置かれています。モニターなのかストップウォッチなのか、アンサンブルに必要な仕掛けなのでしょう。
時折コンサートマスター、フルート奏者、木管の首席奏者たちが立ちあがって演奏する個所もありました。

プログラムによれば、冬と春の境目にある季節の姿を描いた作品とのこと。6つの部分で構成され、3種類の鳥の鳴き声が主要な要素。「チチ・チー」は春がそこまで来ていることの前兆、「チチチ・チー」が運命が扉を叩くシグナル、「チチチチ・チー」はアジアの人にとって意味する死、と言うのですがねェ~。

私の感性が鈍い所為でしょう、どうも作曲家の意図したことが伝わりません。ただただ煩いばかりの25分間で、どうしてもこれが後世に残る作品という印象は受けませんでした。
それでもブラヴォ~を叫ぶ人、スタンディング・オーヴェイションをする人もいたのですから、キチンと評価した方もいるのでしょう。凄いもんです。

冒頭と最後に置かれたワーグナー。

セゲルスタムはその体躯同様にスケールの大きな音楽を創る指揮者です。オーケストラを何処までも豪快に響かせ、メロディー・ラインをタップリと歌わせて行く。
オーケストラも伸び伸びと楽しそうに自分のパートを歌い上げるという具合。

私には拍手の少なかったトリスタンの方が、緊張感も伴って優れた演奏だと感じられました。反対に名歌手はやたらに響かせる金管が時に弦合奏をもマスクしてしまい、些か食傷感を覚えます。
スケールが大きいということは、細部にはあまり拘らないということの裏返し。私には相性の悪いタイプの演奏と言っておきましょうか。

追い打ちをかけるように、ローエングリン第3幕前奏曲が最も派手な終止版でアンコールされ、シンバルの轟音が耳を劈くのでした。
確かにオーケストラのパワーは凄い。しかしそれだけでは、ねぇ~。

私にはほとんど縁のないチョコレート、この日のは思い切り甘さを強調したミルク・チョコレートにも喩えられましょう。
コンサート自体は短めで8時40分頃には終了しましたが、もうゲンナリです。定期はマーラーかぁ~!

尚、このコンサートはテレビ収録が入っていました。(何でこの会なんじゃ)
聴き損なった人、もう一度確認したい人は是非ご覧ください。

 

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