強者弱者(76)

 菫の花咲く。
 菫に種類多し。葉の心臓の形したるは梗長く、花淡むらさきにして森の下蔭などすべて遮蔽されたる地に咲く。葉の矢羽に似たるは、梗短く、ゆかりの色深く、香あり。耕地の畔など、すべて開豁したる地に咲く。素人の弁別し得るは普通此二種なり。

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菫(スミレ)は極めて種類が多いので、秀湖も素人が弁別し得るのは、と断っているように大まかに二つのタイプに分けられますね。

最初に挙がっている「葉の心臓の形したるは梗長く」は、現在ではタチツボスミレと呼ばれているグループでしょう。今でも東京都心で最も普通に見られるのがこれ。

一方「葉の矢羽に似たるは、梗短く」のはスミレやノジスミレのグループ。スミレは日本を代表する種類で、正式な種名が「スミレ」です。

素人の見立てでは、葉の形でタチツボスミレとスミレを区別できれば立派な植物学者じゃないでしょうか。

「開豁」は「かいかつ」と読みます。広々と開けている様子を表現し、このように土地の状態の他に人の心の状態を表す場合にも使われます。

 

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