京都市交響楽団・第559回定期演奏会
一昨日と昨日は京都にいました。京都市響の7月定期を聴くためですが、若干の観光も兼ねて。但し祇園祭はスルーですよ。
旅程の関係から、20日は丁度昼頃ののぞみで京都入り。いつもより遅い出立でやや気が抜けた感じ。東京の予報は午後から雨、家を出た時は傘は不要でしたが、車窓から見る城南の景色は雨でけぶっていました。
2時半ごろ京都着。こちらも雨が降り出していて、バッグから傘を引っ張り出します。取り敢えずホテルにチェックインし、昼夜兼用の食事を摂ってから北山に。コンサートの後は食事をしない計画。
で、こういうプログラムです。
R.シュトラウス/13管楽器のためのセレナード変ホ長調作品7
モーツァルト/交響曲第36番ハ長調「リンツ」K425
R.シュトラウス/交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」
R.シュトラウス/歌劇「ばらの騎士」組曲
指揮/広上淳一
コンサートマスター/泉原隆志
フォアシュピーラー/渡邊穣
如何にもモーツァルトとシュトラウスの関係にスポットを当てたプログラムに思えましたが、それは偶然のことで、曲目を選んだ時点ではそこまで拘っていなかったのだとか。
京響は演奏会に先立ってプレトークがあるのですが、今回はスペシャル・ゲストとして音楽評論家・奥田佳道氏が登場、広上とのトークで進められました。
今回のプログラムに掲載された曲目解説は、奥田氏の文章。そのこともあって突然マエストロから氏にプレトーク出演依頼があったとのことで、氏は“のぞみを1本前倒しして来ました”とバラしています。
もちろん奥田氏はプログラム執筆とは無関係でこのコンサート行を予定していたそうですが、他にも東京から駆け付けた評論家に遭遇。最近の広上/京響の充実ぶりは、音楽界でも密かな話題になっているのでしょう。このコンビ、やはり京都で聴くのが本筋と思います。
演奏会、特にオーケストラの定期は現地で聴くのが一番で、ホールの響きのほか、聴衆の反応も演奏会の一部と思慮します。その意味でも、当夜の雰囲気は名コンビを讃える暖かい雰囲気に満ちたもの。京都の夏の執拗なまでの蒸し暑さを忘れさせる一刻でした。
作品はどれもマエストロが得意とするもの。改めて作品のツボを的確に示し、オケにプレッシャーを掛けずに自分の思う方向に音楽を導いていくこの指揮者の才能に舌を巻きます。
冒頭のセレナードはシュトラウス18歳の若書き。もちろんモーツァルトのグラン・パルティータに対するオマージュが籠められたもので、京響管楽器セクションの豊かな音色が美しく作品を音にしていきます。
これを聴いたハンス・フォン・ビューローが若き作曲家に注目、シュトラウスの未来を拓いたのでした。
モーツァルトと違って単一楽章、ソナタ形式によるコンパクトな一品。余り演奏される機会はありませんし、私もナマでは初体験でしたが、スッキリと纏められた形式美も聴き所の一つでしょう。
続いては、広上による名録音が残されているモーツァルトのリンツ。ノールショピングとのCDは若き広上を代表するアグレッシヴな演奏ですが、現在のマエストロはあれほどの強い個性を表に出したりはしません。
人によっては温厚になった広上と聴かれるかもしれませんが、作品の肝を的確、適切に指摘して行く姿は、更に円熟味を加えていると聴くべき。例えば第1楽章再現部、第235小節のヴァイオリンの跳躍音形が何故このように書かれたのか。モーツァルト演奏の醍醐味でしょう。
この演奏を聴いてモーツァルトへの愛を感じないとすれば、その人は一生モーツァルトとは縁のない人と考えざるを得ません。そういうブリオのあるモーツァルト。全ての繰り返しを譜面に忠実に実行するのですが、決して長さを意識させません。むしろもっと聴いていたいモーツァルトの真髄。
後半はモーツァルトに魅せられた最大の一人であるリヒャルト・シュトラウス。モーツァルトに共通した音楽のツボ、肝を持った作品です。
最初のティルは、広上がコンドラシン・コンクールの本選で演奏した一品。私は長い間聴くことを待っていた交響詩ですが、今回の京都行で夢が叶った思いでした。
それにしても京響ホルン・チームは腕を上げましたね。1番だけでなく3番奏者にも難しいソロが要求されますが、今回の演奏は、広上マエストロが主兵の実力を世に問う意味でも取り上げたものと確信します。
最後のバラ組曲。少し前に日本フィルで聴きましたし、その演奏もCD化されています。何も付け加えることはないでしょう。
恐らく京都のファンは初めて聴くマエストロの十八番。客席も最大級の反応で応えていました。
今期の広上/京響、1月と3月にも定期演奏会を控えています。季節は寒くなりますが、2時間掛けて聴きに行く誘惑を我慢するのには無理がありそう。雪の京都を見たいから、とか、桜の開花を見られるかも、という理由をこじつけてまた京都に行くことになりそうですな。
ここから先のことは省略しますが、今回も未知のスポットに遭遇するなど、この街の魅力が次第に分かってきたメリーウイロウです。
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