2010皐月賞馬のプロフィール

前回に続き日本のクラシック馬の血統考察。二回目は皐月賞馬ヴィクトワールピサです。
桜花賞馬アパパネがどちらかというと地味な牝系に突然変異のように開いた花だったのに対し、ヴィクトワールピサは勝つべくして勝ったという、正にクラシック・レースを勝つに相応しい牝系と言えるでしょう。

この馬については、アパパネとは逆に母からその母という具合に遡って見ていきましょうか。

先ず母はホワイトウォーターアフェアと表記されています。イギリス産馬ですから Whitewater Affair ですね。1993年生まれの栗毛で、父はミスター・プロスペクター Mr. prospector 系のマキャヴェリアン Machiavellian 。

ホワイトウォーターアフェアは、実は競走馬としても優れていて、4歳時にドーヴィル競馬場のポモヌ賞(GⅡ、2700メートル)、ニューバリー競馬場のジョン・ポーター・ステークス(GⅢ、12ハロン)と、二つのパターン・レースに勝っています。
それだけではなく、このシーズンはヨークシャー・カップ(13.9ハロン)3着、ヨークシャー・オークス(12ハロン)2着、アイルランド・セントレジャー(14ハロン)3着という入着実績もあります。

走ったレースの距離を見れば分かるように、典型的なスタミナ・ホースと言えるでしょう。父がスピード系のマキャヴェリアンですから、彼女のスタミナは牝系から来たものと考えてよいと思います。

ホワイトウォーターアフェアの初仔(1999年生まれ、父はジングシュピール Singspiel)は日本で生まれ、アサクサデンエンと名付けられます。
アサクサデンエンは安田記念に勝ちましたし、京王杯スプリングカップにも勝ち、天皇賞(秋)でも4着に入りました。

ホワイトウォーターアフェアは、その後2001年に生まれたスウィフトカレントが小倉記念を制し(この馬は2500メートルでも勝っていますね)、今年の皐月賞に勝ったヴィクトワールピサが3頭目の重賞勝馬となります。

ホワイトウォーターアフェアの母は、1982年生まれのやはり栗毛馬で、マッチ・トゥー・リスキー Much Too Risky 。
この馬は2勝馬ですが、父はステイヤーのバステッド Busted で、1996年に産んだリトル・ロック Little Rock (父・ワーニング Warning)がゴードン・リチャーズ・ステークス(GⅢ)とプリンス・オブ・ウェールズ・ステークス(GⅡ)に勝って、血統通りの活躍を見せます。

更に牝系を遡りましょう。

ヴィクトワールピサの3代母ショート・レイションズ Short Rations (1975年、父はローレンザッキオ Lorenzaccio)は1勝馬ながら、14頭の産駒のうち12頭が出走、10頭が勝馬という堅実な繁殖成績を残しています。
この中で1994年に生まれたアークティック・オウル Arctic Owl は、せん馬ながらトップ・クラスのレースで高齢まで活躍したステイヤーで、ケルゴレー賞やヘンリーⅡ世・ステークスに勝ち、何と6歳になってからアイルランド・セントレジャーで悲願のGⅠ制覇を果たしました。

ショート・レイションズの母ショート・コモンズ Short Commons は、グリーナム・ステークス、コーク・アンド・オルリー・ステークス、ハンガーフォード・ステークス(いずれもGⅢ)などに勝ったヒー・ラヴズ・ミー He Loves Me を出しましたし、5代母に当たるパデュス Padus は、アイルランド・オークス馬パンパリナ Pampalina の母でもあります。
そのパンパリナもアイルランド2000ギニー馬のパンパパウル Pampapaul の母となる、という具合。

この牝系からは他にもオーストラリアのGⅠに勝ったマルーンド Marooned が出ていますし、各世代に亘ってほとんどクズ馬が見当たらないほどの効率の良い牝系なのですね。

ザッと概観したように、世代を追うごとにスタミナ要素を強め、我がヴィクトワールピサに至っているという感じすら受けるではありませんか。

ましてやヴィクトワールピサは、重馬場の東京優駿(日本ダービー)を制したネオユニヴァースの仔。
仮にヴィクトワールピサがダービーで負けたとしても、血統から判断する限りスタミナ不足が原因とは考えられないでしょう。

ファミリー・ナンバーは、8-d 。

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