東京フィル・第53回オペラシティ定期
昨日も冷たい雨。初台の東京オペラシティ・コンサートホールで行われた東フィルの演奏会を聴いてきました。
モーツァルト/交響曲第32番ト長調K.318
ショパン/ピアノ協奏曲第1番
~休憩~
シューマン/交響曲第3番
指揮/広上淳一
ピアノ/金子三勇士
コンサートマスター/三浦章広
指揮の広上を追ってのことですが、前回のサントリー定期も真冬のような寒さの雨が降り頻っていましたっけ。
間に一日真夏のような暑さの日がありましたが、どうも今年は寒暖の差が激しくていけません。三寒四温という言い方はあるけれど、今年は五冷二暑ですな。
はるか昔のことのように感じられますが、広上淳一が日本フィルで次々と話題のコンサートを振っていた頃、彼が出演するときに限って天気が荒れたものです。
ブラームスのドイツ・レクイエムを取り上げた時など、夕方から天が俄かにかき曇り、車軸を流すような豪雨に・・・。ズブ濡れになった挙句、サントリーホールには辿り着けませんでした。
またあるときのマエストロ・サロンでは、会が始まる30分ほど前から東京は激しい雷雨に・・・。当時受付を担当していたS氏にそのことを告げたら、
“そうですよ、何しろ広上さんは嵐を呼ぶ男で通っているんですからネ” と言われたことを懐かしく思い出しました。
その後暫くは「広上=嵐」という方程式を忘れていましたが、4月の東フィルとの久し振りの共演では昔が戻ってきたような感じじゃありませんか。
オペラシティ定期は今回で53回ということですから、まだシリーズがスタートして間が無いのでしょう。私は初めて出かけました。
サントリー定期は空席が目立っていましたが、オペラシティは随分と客席も埋まっていました。批評家の顔もチラホラ見かけましたし、意外な人を客席に見つけたりして、注目度の高いコンサートだったようです。
(この日はN響や都響の定期も重なっていました。聴き手が注目したのは何にだったのでしょうか)
曲目は、広上がメッセージに書いているように「ヨーロッパの珠玉の名曲」。マエストロ得意のモーツァルトに、今年生誕200年を迎えるショパンとシューマンを配した選曲です。
今回ショパンのソロを弾いたのは、金子三勇士という若手。漢字では何と読むのか不思議に思っていましたが、「かねこ・みゆじ」と読むのだそうです。Miyuji Kaneko 。「さんゆうし」じゃありませんよ。
1989年生まれ、父は日本人ですが、母がハンガリー人の由。名前には、あるいはハンガリー語との繋がりがあるのかもしれません。
プログラムに掲載されていたプロフィールによると、6歳で単身ハンガリーに渡ったとあります。これってかなり大胆な行動じゃないでしょうか。もちろんハンガリーに親戚がいたのだろうと想像しますが、よほど強い想いがあったのでしょう。
11歳で国立リスト音楽院大学ピアノ科に入学というのも尋常じゃありません。11歳で大学、ですからねぇ~。
16歳で帰国、東京音大付属高校に編入し、現在は東京音大ピアノ演奏家コース3年に在学中なのだそうです。要するに未だ学生さん。
現在二十歳でしょうが、この日演奏したショパンの協奏曲は、正に作曲家がその年で作曲した作品。ショパンのデビューと重ね合わせたくなるような感慨がありました。
私はピアノはよく判りません。ましてやショパン1曲で三勇士君のピアニズム云々は野暮でしょう。これから何度も聴く機会が増えそうな若手ですから、初体験のこの日を長く記憶したいと思います。
モーツァルトとシューマンは、これまでも広上の指揮で聴いたことがある作品。オペラシティは比較的狭い空間にオケが鳴り響きますから、演奏の圧力がより近くに聴き取れます。
モーツァルトの推進力、シューマンの読みの深さと立体的な表現は健在。どのオーケストラを指揮しても広上は広上、という感想です。
流行のキーワードにこじつければ、広上は3D型指揮者でしょうかね。
推進力(Drive)、読みの深さ(Deep)、振幅の大きい表現(Dynamic)によって「立体的」な音楽を創る。
周りの若い聴衆が、“ナマの音楽って素晴らしいねぇ~、CDで聴くのとは全然違う!!” という感想を漏らしていましたが、正にその通りでしょう。
こういう演奏を聴いて若い聴き手が益々増えていくことを期待せずにはおられません。その意味で、珠玉の名曲を繰り返し演奏していくことの重要さを再認識した一夜ではありました。
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