強者弱者(104)
更衣
七日 立夏。セルの単衣心地よし。銀座の宵、打水に草花の色一しほ映えまさる頃、瀟洒たる銀杏返しの飾気なきに、単衣の裾にしろき素足の夕暗に鮮やかなるはうれし。北東京の人の此一刻を頭髪にあらん限りの装ひして、マフラーなど纏ひたる一目にそれと肯かれて見苦しとも見苦し。近年の流行にてマフラーばかり無意義なるはなし。日本服の美点を無視したる装飾、只呉服屋の創意にのみ依頼して只管に新しきを追ふ婦人の趣味、浅猿しき事の限りなり。
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今年は5月5日が立夏でしたが、100年前は7日がそれに当たっていました。
秀湖は和服にマフラーという女性のファッションを弾劾していますが、これは当時の呉服屋が流行らせようとして創り出したものだったのですね。
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