土曜日のトライアル

チェスター競馬場のトライアルが終わった翌日、今度はリングフィールド競馬場でトライアルが行われました。一連のトライアルでは新顔が次々と登場し、馬の本当の実力を見極めるのが難しいのが現状ですが、それもまた競馬の楽しみと言えましょう。

トライアルのレポートに入る前に、この日のリングフィールドの第1レースに行われたチャートウェル・フィリーズ・ステークス(GⅢ、3歳上牝、7ハロン)から行きましょうか。

2頭が取り消して7頭立て。1番人気は、久し振りにフランスから挑戦してきたアラン・ロワイヤー=デュプレ厩舎のレガーネ Reggane で5対4。去年ロイヤル・アスコットで行われたコロネーション・ステークスでガナーティ Ghanaati の2着に入ったことでイギリスでも馴染の一頭です。今シーズのデビュー戦となりますが、デュプレ師は一昨年のこのレースをサバナ・ペルディタ Sabana Perdita で制していることでもあり、期待を集めたのでしょう。

しかし、勝ったのは10対3の伏兵ピラー Pirrha 。4分の3馬身差2着にゴールデン・ストリーム Golden Stream が入り、本命レガーネは更に3馬身半遅れて3着敗退です。

ピラーの調教師はクリス・ウォールさん、騎乗したアラン・ムンロが有利なスタンド側に進路を取った好判断が勝利を呼び込みました。

このあとピラーは、2年前にサバナ・ペルディタが歩んだのと同じ道、1ハロン伸びるロイヤル・アスコットのウインザー・フォレスト・ステークスを目指す予定です。

さてリングフィールドのクラシック・トライアル第一弾は、オークスに向けたオークス・トライアル・ステークス(L、3歳牝、1マイル3ハロン106ヤード)。これはリステッド戦ですが、オークスに向けた貴重な情報ですので敢えて取り上げましょう。

1頭の取り消しがあり、出走馬は僅かに5頭。現時点でオークスの1番人気に上がっているセシル厩舎のタイムピース Timepiece が、ここは問題無く通過すると期待されて4対7の圧倒的一番人気。前走ニューマーケットでの4着負け(リステッド戦)はシーズン初戦が敗因と思われていました。

ところが期待のタイムピース、直線で先頭に立ったものの動きは鈍く、ダイナ・ワルツ Dyna Waltz の末脚には手も足も出ない完敗でした。
ダイナ・ワルツとタイムピースの着差は1馬身、更に2馬身半差3着にセリド・ハウス Cellidh House の順。

7対1でトライアルを制したダイナ・ワルツは、前走ネル・グィン・ステークスで9着に敗退していた馬。ゴスデン厩舎所属、ライアン・ムーアの騎乗でした。

敗れたタイムピースのヘンリー・セシル師、失望は隠せず、同馬が未だ赤ん坊であるためか、この距離をステイするだけのスタミナが不足しているためなのかは判断しかねる様子でした。

この結果タイムピースはオークス1番人気から陥落し、代わって同馬を前回のリステッド戦(4月15日の日記参照)で破ったルマウシュ Rumoush が押し出されるように1番人気に上がっています。

続いてダービー・トライアル・ステークス(GⅢ、3歳、1マイル3ハロン106ヤード)。ここはチェスターを回避してこちらに回ったスタウト厩舎のクラシックへの期待馬デザート・ミス Desert Myth が6対4の1番人気に支持されていました。

ところがこの本命も良い所なく5着に惨敗。代わってスタートから先手を奪って終始他馬を圧し、堂々の逃げ切り勝を演じたのは、皮肉にもオークス・トライアルで期待を裏切ったセシル厩舎/トム・クィーリー騎乗のブレット・トレイン Bullet Train でした。

2着は2馬身4分の1離されてデュバウィ・ファントム Dubawi Phantom 、更に1馬身半差3着にホット・プロスペクト Hot Prospect が入りました。
なお、このレースにエイダン・オブライエン厩舎が送り込んできた2頭のうち、ムルタが騎乗したキャプテン・ジェームス・クック Captain James Cook は坂の下りの直線入り口で骨折、そのまま殺処分となる悲劇も起きています。可哀そうなことをしました。

勝ったセシル/クィーリーのコンビは、1000ギニーでの降着、前のレースでの期待馬凡走の無念を晴らした形ですが、ダービーにはそれほど強気にはなっていません。まだ馬が若く、大一番で勝つには更なる今後の成長が必要なことを認めています。但し、エプサムのクラシックにはしっかりと追加登録を行いました。出走しなければ勝利は得られませんからね。

土曜日はフランスのサン=クルー競馬場でもオークス、ダービーへのトライアルが行われました。

クレオパトラ賞(GⅢ、3歳牝、2100メートル)はオークスに向けたトライアル。7頭が出走し、6対4の1番人気には絶好調ファーブル厩舎のバーハマ Baahama が推されていました。

レースは23対5の伏兵サンドバー Sandbar が2着に入ったパール・アウェイ Pearl Away に4分の3馬身差を付け、更に半馬身差でへヴンズ・ヴォー Heaven’s Vault が入りました。人気のバーハマは4着敗退。

しかしこのレース、オリヴィエ・ペリエ騎乗のバーハマがスパートしたとき、恰も勝ったサンドバーにぶつけられたように頭を急速に引くのが確認されました。
当然ながら審議となり、20分間の審議の結果、着順通りで確定。対象となったペリエ騎手が、アクシデントは自身の騎乗馬が原因であると審判に進言したことで真相が明らかになったのです。ペリエ騎手の正直さが勝馬を救ったと言えましょうか。

勝ったサンドバーはフランソワ・ロホー Francois Rohaut 厩舎、フランソワ=クサヴィエ・ベルトラス騎乗。
同馬はこれで今シーズン3連勝となります。
ロホー厩舎は今年のイタリア1000ギニー(レジナ・エレナ賞)をイヴェイディング・テンピート Evading Tempete で制していますが、サンドバーもイタリア・オークスに登録があるため、同馬でイタリアのクラシック・ダブルを狙う意向の由。

続いてダービーのトライアルとなるのが、グレフュール賞(GⅡ、3歳牡牝、2000メートル)。
このトライアルはアンドレ・ファーブル厩舎が目下5連勝中ですが、今年の出走馬ロイヤル・リヴァイヴァル Royal Revival は昨年9月以来の休み明けということもあり、4着に敗退しました。

8頭立てのレースを制したのは、13対10の1番人気に支持されたアイス・ブルー Ice Blue 。直線では行き場が無い窮屈な展開になりましたが、前が開くや末脚は強烈、一気に先行馬を捉えての圧勝です。

2着は4分の3馬身でハンサム・デヴィル Handsome Devil 、3着には更に1馬身でグリーン・ロック Green Rock の順。

アイス・ブルーはパスカル・ベイリー厩舎、ステファン・パスキエ騎乗。これで3戦2勝となり、フランス・ダービーの有力候補に名乗りを上げました。ベイリー師はこの馬で5回目の仏ダービー制覇を目指します。
パスキエ騎手もこの馬の末脚を絶賛、気性の良さも大きな武器になることは間違いなさそうです。

また2着に追い込んだハンサム・デヴィルの末脚も見所があり、こちらはむしろ距離の長いパリ大賞典を目標としているようです。

以上、英仏のクラシック(ダービー、オークス)を狙う新星たちの活躍でした。

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