強者弱者(106)

西洋婦人

 今に忘れかねたるは、去る年の晩春、恵比須停車場のほとり、苜蓿の緑あざやかなるに、白き装ひせる西洋婦人の、同服の兒女うちつれて摘草したるを車窓によりて雲煙過眼の裡にうち眺めたる瞬間の印象なり。

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どうということもない文章ですが、100年前は西洋婦人を見かけることはあまり無かったでしょう。恵比寿で摘草する母子を車窓から見たのが印象的だったようです。
それにしても恵比寿でクローバー摘みとは、ね。

ここでは「恵比須」となっていますが、もちろん現在の恵比寿のこと。元々あの辺りは広大な原っぱだった所ですから、苜蓿(うまごやし、クローバーのこと)も多かったのでしょう。

雲煙(うんえん)とは雲や煙のこと。「雲煙過眼」(うんえんかがん)で、雲や煙が目の前を通り過ぎるのに動じないように、物事に執着しない様子のことを表現します。

山手線が全線開通したばかりの頃の光景です。

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