トライアル最終便

ヨーク競馬場の二日目、注目はダービー・トライアルの最終便と言うべきダンテ・ステークスですが、その前に見逃せないパターン・レースから行きましょう。

ミドルトン・ステークス(ＧⅡ、４歳上牝、１マイル２ハロン８８ヤード)は１９９７年創設の古馬牝馬のための一戦。２００４年からＧⅢで行われてきましたが、今年からＧⅡに格上げされました。

当初は去年のオークスの１～３着が登録していましたが、３着のハイ・ヒールド High Heeled が取り消して僅か４頭立て。
とは言いながらサリスカ Sariska とミッドディ Midday の対決はＧⅡに相応しいメンバーと言えましょう。

ミッドディは去年のブリーダーズ・カップ優勝のペナルティーがあり、サリスカより４ポンド重い負担重量を背負わねばなりません。そのためもあって１番人気はサリスカの１０対１１。ミッドディは１５対８で２番人気です。

レースもこれを反映し、サリスカがミッドディに１馬身４分の３差を付けて優勝、３着は更に２馬身４分の１差でフライング・クラウド Flying Cloud の順。

スタートではやや出遅れたサリスカですが、直ぐに先頭に立っての逃げ切りがちです。内から２着に追い上げたミッドディのエイハーン騎手は、ムチの過剰使用で２日間(５月２７・２８日)の騎乗停止処分を受けています。映像を見ましたが、２着に押し上げるまでに１０回以上ムチを使っていましたね。

管理するマイケル・ベル調教師は、サリスカは古馬になって更に良くなる馬と語っていましたから、それを実証した形。
しかし騎乗したジェイミー・スペンサーは勝っても浮かぬ顔。馬場が硬過ぎることに対する不平をぶつけました。この日サリスカが記録したタイムは、これまでのシー・ザ・スターズ Sea The Stars のタイムを０．５秒上回るレコード。
日本ではレコード・タイムが出れば馬場の良さを称賛するのが当たり前でしょうが、イギリスでは逆。レコードになるような馬場は、馬への悪影響が出ることを懸念するのです。

それでもサリスカは無事に完走、次走はエプサムのコロネーション・カップの予定。去年と同じローテーション(去年はミュジドラ→オークス)ですね。

続いて注目のダンテ・ステークス(ＧⅡ、３歳、１マイル２ハロン８８ヤード)。１９５８年創設以来９頭のダービー馬を生んでいますが、最も新しい記録は２００７年のオーソライズド Authorized 。

当初登録から１頭が取り消し、５頭立てで行われました。が、好メンバーで質の高いトライアル。サンダウンのトライアルで圧勝したシャバール Chabal が７対４の１番人気に支持されています。

しかし上記の馬場の固さが馬に影響したのでしょうか、シャバールは４着、しかも３着からは１６馬身も離される大惨敗です。騎乗したデットーリも失望の色を隠せません。馬の能力から見て結果は悪過ぎました。

優勝は９対２に支持されたケープ・ブランコ Cape Blanco 、２着に３馬身４分の１差でワークフォース Workforce が入り、３着は４分の３馬身でコーオーディネイティッド・カット Coordinated Cut 。

レースはサーカムヴェント Circumvent が弛み無いペースで引っ張り、コーオーディネイティッド・カット、ケープ・ブランコ、ワークフォースと続いてシャバールは最後方からの展開。

シャバール、早めにデットーリが仕掛けて前を伺いますが、反応悪く直線半ばでは完敗。デットーリが懸命に押している一方、ケープ・ブランコのムルタは手綱ガッチリ。余裕で先行馬を交わし鮮やかな勝利でした。

２着に入ったワークフォースは如何にも馬が若く、ふらついたレース振り。それでこの成績ですから、この馬の将来も楽しみです。

ケープ・ブランコはエイダン・オブライエン厩舎所属、ジョニー・ムルタ騎乗。何とオブライエン厩舎は、今シーズンこれがイギリスでの初勝利でした。１５連敗のあと漸く勝ち取った英国での勝ち鞍で、オブライエン師にとっては、これがダンテ・ステークス４勝目です。

ケープ・ブランコは３歳時３戦３勝。これがシーズン初戦で、無敗のままダービーを目指すことになります。
ブックメーカーもこのレースを高く評価し、４対１から５対１の２番人気に上がりました。
１番人気は変わらず同じオブライエン厩舎のセント・ニコラス・アベイ St Nicholas Abbey 、２０００ギニーの敗戦は本番前の一叩きとして評価されているようです。

両馬に騎乗してきたムルタ騎手、この日のケープ・ブランコを高く評価しつつも、セント・ニコラス・アベイを上位とし、本番ではこちらを選ぶことになりそうです。

混戦ダービーながら、前人気はオブライエン組の２頭が中心になることは間違いなさそう。

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