コリダ賞

フランスの大レースは日本と同じように日曜日に行われます。日本と異なるのは、フランスではビッグ・レースの翌日も競馬が開催されていることでしょう。いわゆる中央場所に相当するロンシャン、シャンティー、ドーヴィルとは主催団体が異なるのですが、主に平日に開催されるのはサン=クルーとメゾン=ラフィット。

私も遙か昔にフランス競馬行脚に出かけ、仏ダービーを見た翌日にサン=クルー競馬場を訪ねたことがあります。
月曜日ということもあって観客は疎ら、ゆったりとパドックで馬を見、ゴール板の真ん前でレースを観戦したものです。
平日とは言ってもジョッキーは一流、当時のスターであるサン=マルタン、ヘッドに交じってイギリスからはピゴットやエデリーも参戦。彼らの華麗なテクニックをタップリ堪能したものです。

コースは広く、ファンも静かなもの。まるで天国にいるような時間が止まってしまえば良いと思ったものですが、あれから35年も経ってしまいましたわ。

ということで、昨日はサン=クルー競馬場でもパターン・レースが行われています。コリダ賞(GⅡ、4歳上牝、2100メートル)。きっと静かな雰囲気だったんでしょうねぇ~。

去年はこのレースの紹介をしていませんが、フランスの産んだ名牝コリダ Corrida に因んだレースです。コリダは1930年代のチャンピオン牝馬で、凱旋門賞を2連覇するなど男勝りの名馬でした。
競走能力に優れた牝馬は繁殖牝馬としては失敗することが多いのですが、コリダは母としても仏ダービー馬コアラズ Coaraze を出して期待されます。

しかし時はヨーロッパ大戦。パリに侵入したナチ・ドイツ軍はノルマンディーの牧場を蹂躙し、多くのフランスの名馬を接収してしまうのです。
競馬ファンの目から見ると、戦争の目的は優秀なサラブレッドを強奪するためじゃなかったのかと勘ぐってしまうほど。

最終的にフランスは解放され多くの名馬もフランスに戻ったのですが、コリダだけは行方知れず。現在でもその運命を辿ることは不可能だそうです。

そんな名牝コリダの名を冠したレース、今年は1頭が取り消して6頭立て。人気はアガ・カーン所有、5戦無敗のダルヤカナ Daryakana と堅実なセリメーヌ Celimene が並んで6対4の1番人気に支持されていました。

レースはダルヤカナのペースメーカーを務めるシェミーラ Shemiyla の逃げで始まります。レース後にシェミーラのルメール騎手が語ったところでは、これは作戦ではなくスタートが良かったために咄嗟の判断だった由。
いずれにしても本命ダルヤカナは最後方で待機する作戦です。

しかしダルヤカナの動きは今一つ、先ずセリメーヌが、続いて11対1のプルーマニア Plumania が先行馬を捉え、結果はプルーマニアの差切り勝。1馬身半差2着にセリメーヌが続き、ダルヤカナの追い込みは短頭差届かず3着。同じく短頭差で逃げた同厩のシェミーラが4着に粘り込みました。

勝ったプルーマニアは何と20か月振りの優勝ですが、その間に仏オークス3着、ヴェルメイユ賞2着という実力馬でもあります。これまでは勝ち運に恵まれなかっただけ。

同馬を管理するアンドレ・ファーブル師はこのレース5勝目。騎乗したオリヴィエ・ペリエも4勝目。更に馬主であるウェルザイマー・ファミリーにとっても3勝目となり、調教師、騎手、馬主3者共にコリダ賞の最多勝記録更新となりました。

初めて土がついたダルヤカナに失望は無いでしょう。
これがシーズン初戦でしたし、左回りの競馬も初めて。騎乗したジェラール・モッセの話では、レース中何度も手前を変えていたそうですし、まだ本調子には一歩手前の状態でした。
距離の2100メートルも初体験で、これまでは2400メートル以上で使われてきましたから、彼女には短過ぎたとも考えられます。
次走以後に期待しましょう。

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