復刻版・読響聴きどころ(24)

今さらでもありませんが、第9の聴きどころです。この年の第9は下野竜也の指揮でした。

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12月の名曲シリーズは、「第9」です。交響曲第9番はたくさんの作曲家が書いていますが、「第9」と言う場合、ただ一つ、ベートーヴェンの交響曲第9番のことです。

最初に日本初演ですが、一応、以下のものが初演とされてきました。
1924年(大正13年)11月29日 奏楽堂 G.クローン指揮・東京音楽学校。長坂好子(ソプラノ)、曽我部静子(アルト)、沢崎定之(テノール)、船橋栄吉(バリトン)。

これ以外にも試みがあったようで、それをテーマにした映画なども作られていたと思います。手元にそうした資料がありませんので、ここでは上記を日本初演としておきます。

管弦楽編成は当時としては異様に大きいもので、ピッコロ、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、コントラファゴット、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、ティンパニ、打楽器3人、弦5部です。ティンパニ以外の打楽器は第4楽章にだけ登場し、大太鼓、シンバル、トライアングルが使われます。
もちろんこれにソリスト4人と混声4部合唱が加わるのはご承知の通り、これも第4楽章だけです。

ピッコロとコントラファゴットも第4楽章だけに使われる楽器ですし、トロンボーンは第2楽章と第4楽章だけに使用されることもよく知られていると思います。

ピッコロとコントラファゴットは専門の奏者が吹きますが、第1楽章から第3楽章までは只管待っているだけなので、指揮者によっては第3フルート、第3ファゴットとして演奏に参加させる指揮者もいますね。ささやかな見どころかも知れません。

さて聴きどころですが、ズバリ、第9は全部が聴きどころでしょう。それではトピックになりませんので、私なりにいくつか列記しておきます。
まず、第2楽章のティンパニでしょうか。弦合奏に続いて、タン・タタン、というソロが出ます。これ、ファのオクターヴなんですが、そもそもティンパニを1オクターヴで使うこと自体、ベートーヴェンの発明じゃないでしょうか。実は第8交響曲の終楽章で実験済みなのですが、それは弱音で、でした。第9のようにフォルティッシモのソロというのは恐らく前例がなく、初めて「第9」を聴く人は必ず印象に残る聴きどころです。

これ、ティンパニ奏者を目指す人にとっては憧れの場面ですが、「てぃん・ぱに」と聴こえるように叩くのが理想だとか。人によっては「パン・タロン」と叩け、という話を何かで読んだ記憶があります。

これに続いて第2ヴァイオリン→ヴィオラ→チェロ→第1ヴァイオリン→コントラバスの順に入ってくるカノンは、当時の弦楽器の並び方で向かって右から左に順次聴こえてくる、今風の「ステレオ効果」を出したもの、と主張する人もいます。だから対抗配置が正しい、というのですが、それはどうでしょうか。

第3楽章は、やはり第4ホルンのソロですかね。中間部というか、第1主題がクラリネットとファゴットの絡みで出るところ、楽譜では4番ホルンが伴奏を受け持ち、やがてソロになるところがあります。昔の日本のオーケストラではほとんど間違いなく音がひっくり返る箇所で、ナマではハラハラしながら聴いたものです。
で、何故1番奏者じゃなく、4番が吹くのか(○番奏者というのは、決して上手い順ではありませんので、念のため)という疑問が生まれてきます。

それはこういうこと。

第9の第3楽章のホルンは、1・2番奏者がB管、3・4番奏者はEs管を使うのですが、ソロの箇所はフラットのたくさん付いた部分でEs管のホルンの方が吹き易いのですね。ですから仮にトップ奏者が吹く場合には替え管によって楽器の調を変えておく必要があるのです。

ところで、ベートーヴェン当時の楽器はナチュラル・ホルンでしたから、楽器の自然倍音では出せる音に制約がありました。特に低い方は出せる音が少なかったのです。そこで、右手を朝顔に突っ込んで調整することによって自然音以外の音を出すストップ奏法が考え出されたわけです。特に低い方を担当する下吹奏者にはストップ奏法に長けた人がいたようです。第9の場合、1番と3番奏者はそれぞれの調の上吹、2番・4番奏者が下吹を担当します。

以上のような理由で、あのソロはEs管のホルンを持ち、なおかつストップ奏法の得意な人、ということで4番奏者にお鉢が回ってきたのですね。ベートーヴェンのホルン奏者に対する配慮と申せましょう。

ところが現代は、ヴァルブ・ホルンが当たり前になりましたから、ストップ奏法に拘る必要はなくなりました。そこで現代の演奏では、3番ホルンが吹く例も多いようですし、1番奏者が担当した演奏も見たことがあります。もちろん楽譜どおり4番奏者で通す場合も普通に見られます。

ということで、今年の下野/読売日響はどうでしょうか。

他にも合唱とソリストをどこで舞台に入れるか、とか、どの版を使用して演奏するか、とか。細かな見どころ・聴きどころを挙げ始めるとキリがありません。

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