最強マイラー決着?

一昨日の日記に書いたとおり、土曜日のアスコットで今年のマイラー最強馬決定戦になろうか、というクィーン・エリザベスⅡ世ステークスが行われました。早速、結果をチェック。
タイムフォームの予言通り、ここはレイヴンズ・パス Raven’s Pass に凱歌が上がりました。これで今年の最強マイラーは決定したのでしょうか?
出走馬は全部で7頭でしたが、オブライエン厩舎のオナード・ゲストとヘッド厩舎のラシンガーは、夫々のエースのためのペースメーカーです。
事前の人気では、アイルランドのヘンリーザナヴィゲイター Henrythenavigator とフランスのタマヤズ Tamayuz の一騎打ちという構図。
これに待ったをかけたのが、地元イギリスのレイヴンズ・パスですから、現場で馬券を買っていた人には複雑な感想だったかも。
レースはペースメーカーの2頭がぶっ飛ばしたようです。馬場は元々渋り気味の状態だった上に散水した結果、見た目以上に力の要る馬場になっていた由。
最初からタマヤズの動きが悪かったようで、結果は4着敗退。レースはヘンリー対レイヴンに絞られました。
いつもはヘンリーの後ろから競馬し、追い込み届かずを繰り返してきたレイヴンズ・パス、今回はフォーチュン騎手がライヴァルの前で競馬する作戦。これが見事に奏功したのでしょう。
勝負どころで一気にスパートして頂上対決に決着を付けました。GⅠ初制覇です。
ヘンリーザナヴィゲイターも主戦ムルタ騎乗で食い下がりましたが、1馬身の差を終始詰められず、前走ムーランに続く敗戦。
3着には先頭2頭から4馬身半離され、サバナ・ぺルディダ Sabana Perdida が入線しています。
アスコット競馬場の1マイルは、セント・ジェームス・パレス・ステークスでヘンリーザナヴィゲイターが出したタイムがレコードでしたが、今回はこれに僅か 0.24 秒差。馬場状態を考慮すれば、かなりの好タイム決着だったことが判ります。
レイヴンズ・パスがこれまでGⅠで惜敗続きだったのは、夫々に明らかな敗因があってのこと。これが実力と言えるでしょう。さすがにタイムフォームの「読み」は鋭い。
で、これで最強マイラーは決定したかと言えば、必ずしもそうでもないでしょうね。ヘンリーザナヴィゲイターにとっては、やはり馬場が最適ではなかったし、タマヤズも今回は原因不明の凡走。
3頭ともアメリカのブリーダーズカップ・マイルに出走する可能性があり、もし実現すれば、それが結論になる可能性も残されています。
この日、他にも重要なパターン・レースが二鞍組まれていました。
ロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ、2歳、1マイル)は、最近はクラシックに繋がることが少なく、GⅡとしては格下の感が否めません。
今年は10頭が登録していましたが、前に触れた馬場状態にクレームをつける形でオブライエン厩舎の2頭が取り消し、結果8頭で行われました。
勝ったのは8対1に支持されたジュークボックス・ジャリー Jukebox Jury 。ジョンストン厩舎所属で、騎手はロイストン・フレンチ Royston Ffrench という若手。Fが一つ余分じゃないかという珍しい名前ですが、勝馬にこれまで騎乗していたムルタ騎手がオブライエン厩舎の馬で登録されていたため、乗り替わった結果です。
2着は、4分の3差で1番人気だったシティースケイプ Cityscape 、3着には更に3馬身半遅れ、セシル厩舎のオン・アワ・ウエイ On Our Way が入線しています。
ジュークボックス・ジャリーはスタートであわや落馬か、というほどの出遅れ。その不利を克服しての追い込み勝ちでした。父はステイヤーのモンジュー Montjeu ということで、ダービーに向け33対1のオッズが出たようです。
敗れたとは言え2着惜敗のシティースケイプ。チャールトン調教師もガッカリながら、この馬はセルカーク Selkirk の産駒で、セルカークの子供は3歳になって更に良化するタイプが多いことを強調していました。
ところで、このレースの勝ちタイムは2歳馬のコースレコードになりました。次に紹介するフィリーズ・マイルより速かったのですから、案外レヴェルが高かったのかも知れません。
ジュークボックス・ジャリーとシティースケイプの名前、来年のクラシックでも覚えておいた方が良いかも知れませんよ。
フィリーズ・マイル(GⅠ、2歳牝、1マイル)は8頭立て。これは文句なくレヴェルの高い一戦と評価できるでしょう。そのまんま来年の1000ギニー、オークスに直結する感じ。
何しろ無敗馬3頭の激突。最後はそのうちの2頭で決着しましたからね。
勝ったのはこれまで3戦無敗、4対7で圧倒的1番人気に支持されていたレインボウ・ヴュー Rainbow View 。2着は2馬身半で2戦無敗だったファンタジア Fantasia 。更に3馬身4分の1差の3着にはドリームザインポッシブル Dreamtheimpossible が食い込んでいます。
2着に終わったクマニ調教師もデットーリ騎手も、ファンタジアの好走を称え、これを破ったレインボウ・ヴューの強さを素直に認めています。“フィリーズ・マイルを10回戦えば、ファンタジアは9回は勝てる。それを破った勝馬はスーパーホースさ”と。
そのレインボウ・ヴュー、これまでの3戦はどれも大楽勝。今回は勝負所で初めて本格的に追ったそうですが、結果は瞬時でした。ゴスデン厩舎所属、ジミー・フォーチュン騎乗。レイヴンズ・パスの勝利と合わせ、アスコットのGⅠダブル達成です。
彼女はレース前から1000ギニーの本命と目されていましたが、これで冬場の1番人気は確定。来年のクラシックが楽しみになってきました。
馬主のジョージ・ストローブリッジという方はアメリカ人なので、どうしてもアメリカでも走らせたい意向。ブリーダーズカップ出走の可能性も残されているようです。
ジョン・ゴスデン師にとってフィリーズ・マイルはこれが4勝目。2000年のクリスタル・ミュージック、2004年のプレイフル・アクト、2005年のナンニーナに続くものですが、レインボウ・ヴューは明らかに抜けた存在になりそうです。
ゴスデンさんによれば、彼女は小柄な牝馬。“真に偉大な存在は、決して体躯は大きくないもの”とか。それは人間にも当てはまりますねぇ~。
ところでもう1頭の無敗馬。なに、デビュー戦に勝っただけの1戦1勝だったんですが、シッカリ5着に食い込んでいます。
この馬の名前はゴールデン・ストリーム Golden Sream 。名伯楽スタウト師の調教、ムーア騎手が手綱を握りますが、オーナーは、かのエリザベス女王陛下でありますゾ。彼女もお忘れなく。

 

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