モルニーとジャン・ロマネ

ヨーロッパ競馬日記、漸く昨日の結果まで追い付きました。日曜日にドーヴィル競馬場で行われたパターン・レース3鞍のレポートです。

この日の馬場は good 、土曜日からドーヴィルにも速い馬場が戻ってきたようです。最初はケルゴレー賞 Prix Kergorlay (GⅡ、3歳上、3000メートル)。
13頭と出走馬が揃い、9対5の1番人気には去年の覇者でメルボルン・カップも制したアメリケン Americain が推されていました。

しかしアメリケンはスタートで躓き、終始リズムに乗れない競馬。後方から進みましたが、馬場が乾いて時計が速い馬場になったのも裏目に出て、結局は10着大敗に終わりました。
優勝は、外枠から好スタートを切り、徐々に内ラチに進路を変えながらマンマと逃げ切った9対1のジュークボックス・ジャリー Jukebox Jury 。最後の1ハロンで中団から古豪(9歳)カスバー・ブリス Kasbah Bliss が追い込んできましたが、3馬身差の2着まで。更に半馬身差3着にブリガンティン Brigantin という結果。

ジュークボックス・ジャリーは、マーク・ジョンストン師が英国から送り込んだ5歳馬。騎乗したネイル・カランは今シーズンから同馬とコンビを組み、これがシーズン3戦目のレースでした。
同馬はパターン・レースの常連で、2歳時にはロイヤル・ロッジ・ステークス(GⅡ)、3歳時にドーヴィル大賞典(GⅡ)とドイツのオイロパ賞(GⅠ)、去年4歳時にもジョッキー・クラブ・ステークス(GⅡ)に勝っていて、これで4シーズンに亘ってG戦に勝ったことになります。
ジョンストン師によれば、次の目標は愛セントレジャーで、その後はカナダのインターナショナル遠征を視野に入れているそうです。

ドーヴィルの2戦目は、日本のファンも注目のモルニー賞 Prix Morny (GⅠ、2歳、1200メートル)。
1頭取り消しがあって7頭が出走してきましたが、ジュライ・ステークス(GⅡ)に勝ったフレデリック・エンゲルス Frederick Engels 、ボア賞(GⅢ)とロベール・パパン賞(GⅡ)を制したファミリー・ワン Family One 、そしてここドーヴィルでカブール賞(GⅢ)を勝った無敗のダバーシム Dabirsim の3強対決が焦点。人気も3頭に集中し、ダバーシムが7対5の1番人気、フレデリック・エンゲルスは5対2、ファミリー・ワンも14対5で譲りません。

レースはファミリー・ワンの逃げ、フレデリック・エンゲルスも好スタートから2番手に付けます。ダバーシムは手綱を抑えて4番手で控える競馬。
残り2ハロン、ファミリー・ワンが脚を伸ばして逃げ切りを画しますが、スタンド側から残り120ヤードで末脚を爆発させたダバーシムがあっという間にファミリー・ワンを捉えて3馬身差の圧勝。最後方からヴラディミール Vladimir も3着に追い込みましたが、2着ファミリー・ワンとの差は1馬身でした。フレデリック・エンゲルスは何故か好位からズルズル後退し、5着敗退に終わっています。

カブール賞のレポートでも詳しく紹介したように、ダバーシムは開業間もないクリストフ・フェルランド師の管理馬。今回は初めてランフランコ・デットーリが騎乗していました。この馬の能力に惚れ込んだデットーリ、陣営にミドル・パーク・ステークス挑戦を進言しています。
日本のファンにとって嬉しいのは、これまた既に触れたように、ダバーシムがハットトリック産駒であること。日本産馬を父に持つ馬が無敗でGⅠを制したのは、やはり快挙と声を大にすべきでしょう。
ブックメーカーは、早速来年の2000ギニーに14対1のオッズを出しました。ただ所属するのがフランスの地方小厩舎だけに、渡英する可能性はあまり高くないようにも思えます。現地に留まって仏ギニーを狙うか、ニューマーケットに冒険を求めるか、来年のクラシックが早くも楽しみになってきました。

最後も大一番、ドーヴィル最後のGⅠでもあるジャン・ロマネ賞 Prix Jean Romanet (GⅠ、4歳上牝、2000メートル)。僅か5頭立てでしたが、ここにもドラマが待っていました。

先ず、出走を予定していたスノー・フェアリー Snow Fairy が最終登録の前に除外されてしまったこと。詳しくは判りませんが、フランスの競馬規定に即しなかった由。単に事務的な手続き上のことかと思われますが、陣営はヨークシャー・オークスを取り消してこちらに回ってきただけに、真に残念なことでした。

レースは、9対5の1番人気に支持されたアンドレ・ファーブル厩舎のアナウンス Announce が、ゴール直前でサー・ヘンリー・セシル厩舎の3番人気(5対2)タイムピース Timepiece を短首差捉えて優勝。2馬身半差に2番人気(2対1)のリリー・オブ・ザ・ヴァレー Lily Of The Valley (去年のオペラ賞を制した4歳馬)が逃げ粘りました。
と、結果だけを言えば単純なのですが、実は1・2着は同じ勝負服。そう、ジャドモントのカーリッド・アブダッラー殿下の所有馬なのです。
アブダッラーのワン・ツー・フィニッシュといえば、先日ヨークで行われたインターナショナルで達成されたばかり。僅か5日の間に2度も、しかもどちらもGⅠレースで達成されたことは驚くべき快挙と言えましょう。

今回のジョッキーは、勝馬に騎乗していたのがマキシム・グィヨン、2着はセシル厩舎の主戦トム・クィーリー。クィーリーは前回に続きまたしても2着。
タイムピースは逃げるリリー・オブ・ザ・ヴァレーの2番手に付け、直線入り口で仕掛けて早目に先頭に立ったもの。セシル師に言わせれば、もう少しハナに立つのを遅らせれば結果は違っていた、とクィーリーに対しては辛口のコメントを発しています。

一方のアナウンスは速い馬場が適した馬。4番手から絶妙なタイミングでの末脚が活きました。この後は馬場次第ですが、オペラ賞でGⅠ連勝を狙います。

以上、10日ほど不在にしていた間の欧州競馬日記が追い付きました。次回からは今まで通り、レースが行われた翌朝には記事をアップする積りです。

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