強者弱者(115)

桐の花

 麦の畑の緩慢なる傾斜に沿ひて立ち並べる桐の梢にうす紫の花美しきを見るも此頃なり。巣鴨監獄の冷めたき煉瓦塀に沿ひて、桐の花咲けり。暮るゝ光、明くる日を待ち侘びて満期放免を指をり数ふる囚人の眼にうつる唯一の色彩、鉄窓の外はかくして春将に徂かんとす。

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東京では桐の花は既に散ってしまいました。淡い紫と仄かな香りが美しい高木です。監獄の窓からも遠く眺めることができたのでしょう。風向きによっては甘い香りが漂ったかもしれません。

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