仏オークスはアガ・カーンのワン・ツー

昨日行われた通称フランス・オークス、ディアーヌ賞(GⅠ、3歳牝、2100メートル)の結果が入ってきました。
枠順発表でも紹介したとおり、今年は海外からの挑戦がなく、9頭立てという寂しい顔ぶれ。少数精鋭と言えなくもありませんが、何となく物足りなさを感ずるメンバーです。

しかし結果は順当だったと言えましょうか。9頭のうち3頭を占めたアガ・カーン軍団、いずれもアラン・ロワイヤー=デュプレ厩舎の期待馬が1・2着を独占しています。

勝ったのは、軍団の中でもイーヴンの圧倒的1番人気に支持されたサラフィナ Sarafina 。後方待機から、クリストフ・ルメール騎手のゴーサインに応え、直線ど真ん中を突き抜けての快勝でした。
2着にも勝馬をマークして進んだロザナラ Rosanara が1馬身半差で続き、更に1馬身半差3着のサンドバー Sandbar も後方差しのケイバ。結局は後ろで我慢した馬の上位独占という結果になっています。
以下4着デラックス Deluxe 、5着ザゴラ Zagora の順。

アガ・カーン・チームのペースメーカーとして出走したヴァラシーラ Valasyra が強いペースで流れを作り、ブリッジ・オブ・ピース Bridge Of Peace と掛り気味のア・メディア・リュズ A Media Luz の追走も澱みのない流れに貢献したことが順当な結果を生んだ、とも申せましょう。

唯一不運があったとすれば、内から延びる予定だったデラックスの前が塞がって十分に追えなかったこと。一応審議になりましたが、今回は降着などの処分には至りませんでした。

勝ったサラフィナは、これで3戦3勝の無敗馬。今年5月の新馬戦で2着に6馬身差で圧勝した後、前走のサン=タラリ賞(GⅠ、仏オークスのトライアル)でいきなりのGⅠ制覇。これでGⅠ2連勝となり、一躍フランス3歳牝馬の頂点に立ってしまいました。
まだまだキャリアの浅い馬ですから、今後の成長次第ではとんでもない大物に育つ可能性もあります。

勝利調教師と勝利馬主にとって、仏オークスは通算6勝目。即ち1993年シェマカ Shemaka 、1997年ヴェレヴァ Vereva 、1998年ザインタ Zainta 、1999年ダルヤバ Daryaba 、そして2008年のザルカヴァ Zarkava に続く快挙です。
オーナーのアガ・カーンの6勝は、19世紀のオーギュスト・リュパンと並ぶ史上最多勝となりました。

またルメール騎手にとっては、2005年のディヴァイン・プロポーションズ Divine Propotions (ベイリー厩舎)、去年のスタチェリータ Stacelita (ルジェ厩舎)に続く3勝目で、デュプレ厩舎とのコンビでは初勝利となります。

ところで記録では上には上があるもの。勝利調教師の記録は19世紀のヘンリー・ジェニングスの持つ9勝が最多。騎手部門では現役のモッセ、有名なサン=マルタンなどの5勝が最多記録です。

今後の予定について。2着のロザナラは血統的にスタミナが勝っており、躊躇うことなく秋のヴェルメイユ賞に向かいます。一方サラフィナに関して厩舎筋では2000メートル前後が最適距離と見ており、次走はこれから様子を見て決めたい由。いずれににしてもフランスの牝馬クラシック戦線には確固たる中心が生まれたようです。

さてこの日のシャンティー競馬場は、他にGⅢクラスのパターン・レースが3鞍組まれていました。それもレース順に取り上げましょう。

リス賞(GⅢ、3歳、2400メートル)は、7月14日に行われるパリ大賞典のトライアル。距離に着目すれば、むしろこちらがダービーに相当するレースとも言えましょう。

6頭立ての1番人気(4対5)は、前走のリステッド戦も含めて3戦無敗のゴールドワキ Goldwaki 。初挑戦となるパターン・レースも無事にクリアーして無敗を守りました。
2着は1馬身差でマシューア Mashoor 、更に2馬身半差3着にル・ラロン Le Larron の順。

上位3頭はいずれも地元フランス勢で、ドイツから挑戦して逃げたラモール Lamool 、イギリスから遠征したプライズファイティング Prizefighting とイントゥー・ウェイン Into Wain はいずれも後塵を拝しています。

1・2着は共にアンドレ・ファーブル厩舎所属。最後方から追い込んだゴールドワキにはオリヴィエ・ペリエが騎乗していました。

このレースに関してはファーブル厩舎が圧倒的に強く、これが何と13勝目に当たります。1984年のイリス・ノワール iris Noir から始まり、1995年のスウェイン Swain (キングジョージ・2連覇)、2003年のドワイアン Doyen (キング・ジョージ)、2006年のレイル・リンク Rail Link (パリ大賞典、凱旋門賞でディープインパクトを破る)など、間歇的ではありますが、大物を輩出しています。

今年のゴールドワキは未だ無敗。登録が無いためパリ大賞典には追加登録料が必要ですが、当然ながら狙ってくるでしょう。

ポール・ド・ムーサック賞(GⅢ、3歳、1600メートル)は、2000ギニーと同じ距離。2005年まではジョンシェール賞として知られていたレースで、オールドファンには旧名の方が馴染ある一戦です。

8頭立て。結果はサプライズで、優勝は17対1のソルミウ Sormiou 。1馬身差2着以下は大混戦で、短首、首、短首の写真判定の結果、これまた21対1という大穴ブルー・パニス Blue Panis が2着、漸く3着にイギリスから遠征したエメラルド・コマンダー Emerald Commander が入りました。
9対5の1番人気に支持されたチェイジング・ハロス Chasing Halos は2着争いにも加われず6着敗退です。

内から上手く伸びたソルミウは、クリティック・ダイアード厩舎の管理馬、騎手はアレクサンドル・ルーセル。共にこのレース初勝利ですが、私も初めて耳にする方々です。

シュマン・ド・フェル・デュ・ノール賞(GⅢ、4歳上、1600メートル)は10頭立て。
何と言っても注目は2頭。去年の仏ダービー2着のフュイッセ Fuisse が教養明けから2戦目でリステッド戦を制し、復調の兆しを見せていました。このフュイッセがイーヴンの断然1番人気。
そしてもう1頭、去年の仏1000ギニー馬イルーシヴ・ウェイヴ Elusive Wave も今期2戦目。こちらは3対1の2番人気でした。

レースはスリッキー・ロイヤル Slicky Royal が快調に逃げましたが、先行馬をマークして進んだ本命フュイッセの末脚が勝り、2着に追い込むヴェルティジヌー Vertigineux を4分の3馬身抑えて快勝。半馬身差3着にスリッキー・ロイヤルが逃げ残りました。
イルーシヴ・ウェイヴも掛り気味でしたが、最後追い込んで短頭差届かず4着という結果になっています。

フュイッセはクリティック・ヘッド=マーレク夫人の管理馬、クリストフ・ルメール騎乗で、共にこのレース初勝利となります。

ところで、日曜日にはアイルランドのコーク競馬場でもパターン・レースが行われました。ノーブレス・ステークス(GⅢ、3歳上牝、1マイル4ハロン)。
この競馬場もパターン・レースに使われることが少ないコースで、他にギヴ・サンクス・ステークスが組まれているだけ。

6頭が出走し、7対2のグレース・オマリー Grace O’Malley が見事に逃げ切ってしまいました。短頭差2着に追い上げたカラシーラ karasiyra も2番手追走の馬。日本で言う「行った行った」のケイバですね。
2対1で1番人気に支持されたユナイティー Unity は首差及ばず3着。

勝ったグレース・オマリー、実は去年もこのレースに勝っており、2連覇となります。
更に面白いことに、グレース・オマリーは既にこの春に種付けを済ませていて、シャマーダル Shamardal を妊娠中。この後も果敢にランカシャー・オークスに挑むことが決まっています。

妊娠中の牝馬は気性がドッシリしてくるのか、成績が安定する傾向があります。日本でも見習っては如何。

着目点はもう一つ。グレース・オマリーの父はリフューズ・トゥー・べンド Refuse To Bend 。この日行われた仏オークスの勝馬サラフィナも、リフューズ・トゥー・べンド産駒なんですねぇ~。

仏オークスでワン・ツー・フィニッシュを達成したアガ・カーン、アイルランドでもカラシーラでしっかり2着と稼いでいます。
アガ・カーンが如何に牝馬に重点を置いているか、それはいずれサラフィナのプロフィール紹介で取り上げましょう。

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