デットーリも吃驚、1000ギニー

フランケル圧勝の余韻が未だ収まらない中、昨日の日曜日はクラシック第二弾の1000ギニー 1000 Guineas S (GⅠ、3歳牝、1マイル)が行われました。前日に続き good to firm のニューマーケット競馬場ロウリー・マイル・コース。

枠順発表のときにも書きましたが、19頭が登録を済ませ、9対2の1番人気にはフランスからフレディー・ヘッド厩舎が送り込んできたムーンライト・クラウド Moonlight Cloud が選ばれていました。2歳時に果敢にもジャン=リュック・ラガルデール賞(GⅠ)で牡馬に挑戦し4着、シーズン最初のトライアル(アンプルーダンス賞)では姉ヘッドが調教する冬場の1000ギニー本命エレボリーヌ Helleborine を破っての挑戦。牝馬同士のここなら負けないだろうという予想でしょう。

しかしレースは最初から波乱含み。先ず同じくフランスから遠征してきたコレ厩舎のインモータル・ヴァース Immortal Verse がゲートを入りを嫌い、結局は発走除外となってスタートが切られます。
ところが“各馬一斉にスタぁ~トぉ~” という訳には行かず、何と1番枠を引いた2番人気(6対1)のメモリー Memory がゲートから出ません。漸く走り始めた時は馬群は遥か彼方に・・・。去年のサリスカの悪夢を思い出します。
こうなってはヒューズ騎手も手の打ちようがありません。結局は1マイルをキャンターして帰厩するだけ。

2頭を置き去りにした17頭、サンダース騎乗のフーレイ Hooray が強いペースで引っ張ります。ニューマーケットの直線コースで争われる多頭数の競馬は内外の二つのグループに分かれることが多いのですが、このレースは一団。
馬場の中央を通って抜け出した人気薄のトゥギャザー Together (33対1)とマカーシド Maqaasid (22対1)の叩き合いで決まりかと思われた時、最もスタンド側のラチ沿を通ったこれまた伏兵(16対1)のブルー・バンティング Blue Bunting が鋭く追い込み、ゴールでは4分の3馬身差し切っての番狂わせ。
2着トゥギャザーと3着マカーシドの着差は1馬身4分の1。更に3馬身4分の1差4着のノヴァ・ホーク Nova Hawk (25対1)も、頭差5着のベアフット・レディー Barefoot Lady (16対1)もあまり人気の無い馬。2000ギニーとは別の意味でスタンドから大きな歓声が起こります。

本命ムーンライト・クラウドは後方に待機、一旦は伸びたものの7着敗退。人気になった馬では3番人気のハヴァント Havant の6着が最高という大荒れの1000ギニーになってしまいました。

勝ったブルー・バンティングはゴドルフィンの馬。管理するマームド・アル・ザローニ師は英国クラシック初制覇です。一方騎乗したランフランコ・デットーリは、1998年のケープ・ヴェルディ Cape Verdi 、2002年のカッツィア Kazzia に続く1000ギニー3勝目。英国クラシックは通算14勝目となります(2000ギニー2勝、1000ギニー3勝、ダービー1勝、オークス3勝、セントレジャー5勝)。
ゴドルフィン陣営ではブルー・バンティングはオークス向きと見ていて、ここではチャンスは少ないと考えていたのが正直なところ。騎乗したデットーリも、この勝利は“ボーナスみたいだ” とコメントするほどのサプライズ。ペースが速かったことと、強い風を避けて馬を馬群に沈めた判断とが奏功したのでしょう。

いずれ「クラシック馬のプロフィール」で紹介しますが、ブルー・バンティングの兄は3000メートル以上にならないと勝てない馬だし、母の兄弟も底なしのステイヤー。これにロベルト Roberto 系の父ダイナフォーマー Dynaformer という血統の同馬は、血統から判断してもオークス狙いが本筋でしょう。
(ダイナフォーマーの代表産駒は、去年メルボルン・カップに勝ったアメリケン Americain でしょうか)
各ブックメーカーは、この結果を見て早速ブルー・バンティングのオークスへのオッズを、それまでの25対1程度から7対2~5対2に一気に上げています。二冠の可能性が高くなってきました。

惜しかったのは2着のトゥギャザーでしょう。オブライエン厩舎所属で、人気は無かったものの2歳時はブリーダーズカップにも挑戦したほど能力を秘めた馬。マカーシドとの競り合いを制した後では勝馬の瞬発力に耐える脚は残っていませんでした。内外が離れていたのも無念か。
トゥギャザーはガリレオ Galileo の産駒。もし勝てば前日のフランケルに続いて父のクラシック・ダブルが実現したことになり、改めて逝ったばかりのサドラーズ・ウェルズ Sadler’s Wells の偉大さが偲ばれます。

さてこの日は1000ギニーの前にダーリア・ステークス Dahlia S (GⅢ、4歳上牝、1マイル1ハロン)も行われています。

11頭の古馬牝馬、実力拮抗で人気も定まりません。結局は5対1に4頭が並んでの1番人気、エレノラ・デュース Eleanora Duse 、コントルダンス Contredanse 、フィールド・デイ Field Day 、ミラー・レイク Mirror Lake がそのクァルテット。
ところがこの4頭は揃って討死、夫々6着、7着、4着、5着と枕を並べての敗退でした。

優勝は10対1のアイム・ア・ドリーマー I’m A Dreamer 、4馬身半差2着にシー・オブ・ハートブレイク Sea Of Heartbreak 、更に2馬身半差3着がチャチャマデー Chachamadee という結果。
勝馬を管理するデヴィッド・シムコック師は、最初から4歳になった同馬をイメージして調教してきた由。去年は成長したもののリステッド戦で入着するのがやっと。この日は初騎乗となるウイリアム・ビュイックの待機策に応えて、オッズを裏切る強さを見せ付けました。
当然ながらロイヤル・アスコット(ウインザー・フォレスト・ステークス)を狙うローテーションになるでしょう。

日曜日はフランスでもパターン・レースがありました。サン=クルー競馬場のミュゲ賞 Prix du Muguet (GⅡ、4歳上、1600メートル)。

10頭立て。6対4の1番人気は、去年の覇者バイワード Byword 。GⅠ(プリンス・オブ・ウェールズ・ステークス)勝ちのペナルティーを背負う不利、シーズン・デビューという死角にも拘わらず実力上位という見方でしょう。
そのバイワード、逃げるキングスフォート Kingsfort の二番手からキッチリ抜け出しましたが、外から追い込んだラジサマン Rajsaman の末脚に1馬身屈してしまいました。短首差3着はドイツからの挑戦馬セーレザド Sehrezad 。

勝ったラジサマンはフレディー・ヘッド師の管理馬。同厩のムーンライト・クラウドは残念ながらニューマーケットで期待に応えられませんでしたが、これは恰好のコンソレーションでしょう(時間的にはミュゲ賞の方が先にスタートしましたが)。
騎乗したティエリー・ジャルネ騎手は、1年前に同馬でフォンテンブロー賞を制しており、久々の騎乗ながら相性の良さをアピールしました。
陣営では元々同馬の実力を高く評価しており、今回初めて装着したブリンカーが功を奏したとも言えましょう。

一方7ポンドの斤量差と休養明けに泣いたバイワード、距離が延びるイスパハン賞(GⅠ)でのゴールディコヴァ Goldikova (ヘッド厩舎)との対決を心待ちにしている様子。

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