カラー競馬場のダービー・フェスティヴァル

今週末、アイルランドのカラー競馬場はダービー・フェスティヴァルで賑わっています。日曜日に行われる愛ダービーをクライマックスとする3日間開催。初日(金曜日)はパターン・レースは組まれていませんでしたが、昨日の土曜日は3鞍のパターン・レースが行われました。

先ずGⅠ戦から紹介しましょう。プリティー・ポリー・ステークス(GⅠ、3歳上牝、1マイル2ハロン)。2004年からGⅠに格上げされたレースですが、去年は英国のダー・レ・ミ Dar Re Mi が制しています。

今年は9頭が出走、3歳クラシック世代の5頭に対し、古馬4頭というメンバー。7対4の1番人気に支持されたのは、愛1000ギニー4着、オークス3着と二つのクラシックで入着したオブライエン厩舎のリメンバー・ウェン Remember When でした。

レースはオークスで6着に逃げ粘ったアクダレナ Akdarena の逃げで始まり、古馬のチャイニーズ・ホワイト Chinese White が2番手、デットーリ騎乗のフライング・クラウド Flying Cloud が3番手追走の展開。本命リメンバー・ウェンはそのあと、4番手待機策です。

レースは淡々と進み、先行するアクダレナを交わしたチャイニーズ・ホワイトが、追い込むフライング・クラウドを1馬身4分の1抑えて快勝。3着は短頭差でアクダレナが逃げ残りました。リメンバー・ウェンは伸びず、更に6馬身離された4着に敗退しています。

勝ったチャイニーズ・ホワイトは4対1の3番人気。デルモット・ウェルド調教師、パット・スマーレン騎手のコンビは、この日のビッグレース・ダブル達成です(最初のインターナーショナルは後述)。
5歳の芦毛牝馬チャイニーズ・ホワイトを所有するオライリー夫人は、ウェルド厩舎のパトロン。師は彼女に最初のGⅠ勝利をプレゼントすることができました。

チャイニーズ・ホワイトはカラー競馬場が大のお気に入りで、去年はリステッド→GⅢ→GⅡのハットトリックを達成していました。この日のGⅠ勝利でサイクル優勝を成し遂げたことになります。
ところで彼女は、この春にケープ・クロス Cape Cross を受胎しており、これが最後のレース。この夜、現役を引退しました。
GⅠ馬という肩書を得ての繁殖入り、オライリー夫人にとっても最高の引退劇となりましたね。

続いてこの日最初のパターン・レースであるインターナショナル・ステークス(GⅢ、3歳上、1マイル2ハロン)に行きましょう。ころころと条件が変更されてきた一戦で、今年は距離が1ハロン伸びています。

僅か5頭立て。今シーズンはGⅠ戦(フェイム・アンド・グローリー Fame And Glory が勝ったトトソルズ・ゴールド・カップ)2着のあとリステッド戦に勝ったリチャージ Recharge が8対13で2倍を切る1番人気。

オブライエン厩舎のグランド・アドミラル Grand Admiral が逃げましたが、直線入り口で先頭に立ったプレシャス・ジェム Precious Gem が追い縋るシントー Shintoh に1馬身4分の3差を付けて優勝。3馬身差3着に逃げたグランド・アドミラルが粘り込んでいます。本命リチャージは良い所なく4着凡走。

先にも書いたように、ウェルド師とスマーレン騎手にとっては、メインのGⅠ戦とのダブルとなります。

9対2の3番人気だったプレシャス・ジェムは、今期ハンデキャップ戦→リステッド戦→GⅢと3連勝。次はドーヴィルのGⅠ戦を目指す予定とか。まだまだ成長が見込まれる4歳馬で、来季も現役を続行する由です。

この日のパターン・レースの最後は、長距離のカラー・カップ(GⅢ、3歳上、1マイル6ハロン)。
ここも5頭立ての少頭数で、1番人気(9対10)は去年の愛セントレジャー4着の実績があるプロフォンド・ビューティー Profound Beauty 。既にダブルを達成しているウェルド/スマーレン・コンビであることも期待を大きくしていたのでしょう。

しかしウェルド/スマーレンのハットトリックはならず、優勝は5対1のタクティック Tactic でした。本命プロフォンド・ビューティーは追い上げたものの2馬身差2着惜敗です。
3着は更に3馬身差でロージズ・フォー・ザ・レディー Roses For The Lady が逃げ残り、イギリスから挑戦したスタウト厩舎のサブタパディ Saptapady は、故障でも発生したのか、最後は馬を止めんばかりのドン尻に終わりました。

タクティックは英国のジョン・ダンロップ厩舎所属、タッド・シェアが騎乗していました。将来のカップ・ホースに成長してくるでしょうか。

ところで昨日は、イギリスでも小さいながらパターン・レースが二鞍行われています。
一つは、ニューキャッスル競馬場のチップチェイス・ステークス(GⅢ、3歳上、6ハロン)。この日のニューキャッスル競馬場の呼び物は長距離のハンデ戦として人気のあるノーザンバーランド・プレートで、GⅢレースは当日の前座(第1レース)に過ぎません。

7頭が出走、15対8の1番人気はノセダ厩舎のヒマラヤ Himalaya でしたが、勝ったのは16対1の穴馬バーニー・マグルー Barney McGrew でした。
2馬身4分の1差2着に本命のヒマラヤ、更に2馬身4分の3差3着がボニー・チャーリー Bonnie Charlie の順。
去年の同レース勝馬で連覇を狙ったナット・イン・ウッド Knot In Wood は4着敗退です。

勝ったバーニー・マグルーは、マイケル・ドッズ厩舎、フィリップ・メイキンの騎乗で、ドッズ師にとってパターン・レース初制覇となります。
この7歳せん馬は、後方からの差し脚が武器。最近は結果が出ていませんでしたが、この日はスタート良く飛び出し、そのまま逃げ切っての優勝でした。これまでとは全く異なる戦法での快勝です。

もう一つは、ニューマーケットのジュライ・コースで行われたクライテリオン・ステークス(GⅢ、3歳上、7ハロン)。19世紀に同名の2歳戦がありましたが、現在のクライテリオンは1978年に創設された、全く別のレースです。GⅢに格上げされたのは1986年のこと。

ニューキャッスルのチップチェイスと良く似た条件のため、両方のレースに登録していた馬も多かったのですが、最終的には2頭が取り消して7頭立て。13対8の1番人気には、2000ギニー(8着)にも出走した3歳のレッド・ジャズ Red Jazz 。

しかしこのレースも本命馬は勝てず、優勝を攫ったのは25対1の大穴プレミオ・ロコ Premio Loco でした。レッド・ジャズは4分の3馬身届かず2着、更に1馬身4分の1でドンカスター・ロウヴァー Doncaster Rover が3着です。

勝ったプレミオ・ロコはクリス・ウォール師の管理馬で、騎乗したジャック・ミッチェル騎手にとってはパターン・レース初優勝となりました。オーナーはニューマーケット生まれのニューマーケット在住の方、ニューマーケットでのホームチーム制覇でもあります。

プレミオ・ロコは、去年ドイツでGⅡ戦に勝った馬で、ペナルティーとして他馬より負担重量が重かったことに加え、冬場(2月)のドバイ遠征から戻っての休養明けだったことが人気を落としていた原因でしょう。ここでは力の違いを見せ付けた形です。

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