シーズン最初の2歳馬GⅠ戦ほか
8月2週目の日曜日、カラー競馬場とドーヴィル競馬場でGⅠレースが行われました。先ずアイルランドから。
この日はパターン・レースが4鞍という豪華版で、秋から来年にかけての主役を担う馬たちに注目が集まります。レースが行われた順に取り上げていきましょう。
ロイヤル・ホイップ・ステークス(GⅡ、3歳上、1マイル2ハロン)は僅かに5頭立てでしたが、ハービンジャー Harbinger の故障により凱旋門賞の中心的存在に祭り上げられたフェイム・アンド・グローリー Fame And Glory の登場が話題。
5頭中3頭までがオブライエン厩舎の馬とあって、フェイム・アンド・グローリーは1対12という驚異的なオッズで1番人気に支持されています。
レースはオブライエンのペースメーカーを務めるディクシー・ミュージック Dixie Music が逃げ、直線でも大差を付けて逃げ込み態勢に入ります。
しかし流石はジョニー・ムルタが御すフェイム・アンド・グローリー、スパートするやたちまちの内に差を詰めて逆転、キャンターのまま逃げ残るディクシー・ミュージックに3馬身半差を付ける圧勝です。
3着には1馬身4分の1差でグランド・アドミラル Grand Admiral が入り、オブライエン厩舎のワン・ツー・スリーという結果に収まりました。
コロネーション・カップのあと夏場の休養を取ったフェイム・アンド・グローリー、次はアイリッシュ・チャンピオン・ステークスか凱旋門のトライアル(フォワ賞)を使って本番に向かう予定です。先ずは順調な復帰劇。
続いてデビュタント・ステークス(GⅡ、2歳牝、7ハロン)。9頭立てで行われましたが、先にレパーズタウン競馬場で行われたシルヴァー・フラッシュ・ステークス(GⅢ)の再戦の趣。そこで勝ったオブライエン厩舎のトゥギャザー Together が6対4の1番人気です。
しかしここは逆転劇。シルヴァー・フラッシュでは1馬身差2着に甘んじたラーフィング・ラッシズ Laughing Lashes が雪辱を果たしました。5対1の2番人気。
2着には4頭出しのオブライエン軍団から、副将格のミスティー・フォー・ミー Misty For Me が1馬身差で続き、主将トゥギャザーは3馬身遅れの3着敗退です。
勝ったラーフィング・ラッシズは女流調教師ジェシカ・ハリントンの管理馬、鞍上はフラン・ベリー騎手。
これまで2戦して2着2回、これが初勝利という戦績になります。
この日のメインとして注目されたのが、フェニックス・ステークス(GⅠ、2歳、6ハロン)。当日記で扱うヨーロッパ競馬(英愛仏)ではシーズン最初の2歳馬によるGⅠレースです。
2頭取り消しがあり7頭立て。4対9の高い支持率で1番人気に押されたのは、イギリスから無敵ハノン厩舎が送り込んできたコヴェントリー・ステークスの覇者ストロング・スート Strong Suit 。無敗のまま3連勝でGⅠホースとなるかが注目です。
しかし一旦は先頭に立ったストロング・スート、最後の競り合いでは意外に伸びず一敗地に塗れました。
優勝は3対1、オブライエン厩舎のゾッファニー Zoffany の巻き返しです。半馬身差2着にはボルジャー厩舎の期待グロール・ナ・マラ Glor Na Mara が意地を見せ、ストロング・スートは短頭差抜かれて3着。以下、チーム・オブライエンのエンペラー・ヘイドリアン Emperor Hadrian とサミュエル・モース Samuel Morse が夫々4・5着の順。
エイダン・オブライエン厩舎のフェニックス・ステークスでの勝率は驚異的で、1998年以来13年間で11勝という独占状態。負けたのは2004年と2007年だけというから驚きです。
流石のハノン/ヒューズ・コンビも脱帽ですな。鞍上ジョニー・ムルタの選択眼も見事でした。
ゾッファニーは、これで6戦5勝。敗戦はストロング・スートの6着(8馬身差)だったコヴェントリーだけ。
この結果、来年の2000ギニーに向けたオッズは、これまで1番人気だったストロング・スートが10対1に下がり、替ってゾッファニーが7対1の1番人気に上がっています。
この日のカラー競馬場、最後のパターン・レースはフェニックス・スプリント・ステークス(GⅢ、3歳上、6ハロン)。1頭取り消して9頭立てです。
この日ここまで既にハットトリックを達成(第1レースの未勝利戦も含め)しているオブライエン/ムルタ・コンビのビウィッチド Bewitched が5対2の1番人気に期待されましたが、1日4勝は成らず。
優勝は9対1のヴェテラン(6歳馬)スネーフェル Snaefell でした。4分の3馬身差2着にルイサン Luisant 、頭差3着に本命ビウィッチドという結果。
スネーフェルは既に4歳時、5歳時にもGⅢに勝っており、パターン・レースは3勝目となります。
管理するのはマイケル・ハルフォード師。騎乗した若手のシェーン・フォレイにとってはパターン・レース初優勝となります。
前走で騎乗したパット・スマーレンのアドバイスにより、ブリンカーを使用したのが奏功した由。
最後は海を渡ってフランスの避暑地、ドーヴィル競馬場のモーリス・ド・ギースト賞(GⅠ、3歳上、1300メートル)です。
15頭立て、イギリスからは4頭が挑戦してきました。
このブログでも度々紹介しているように、スプリント戦は伝統的に強い英国。このGⅠレースも1984年にネヴァー・ソー・ボールド Never So Bold が制して以来8勝を記録しています。
言い換えればフランスのスプリンターは弱体ということにもなり、1998年には我がシーキングザパールが武豊の騎乗で勝ったことでも知られるレースですね。
今年も優勝は英国馬。ダンディ・ニコラス厩舎、エードリアン・ニコラス騎乗の親子コンビであるリーガル・パレード Regal Parade がゴール直前で勝利を攫いました。
2着は惜しくも首差で差されたフランスの3歳牝馬ジョアンナ Joanna 。ルジェ厩舎のジョアンナはスミオン騎乗で3対1の1番人気に支持されていましたが、あと一歩で地元の期待に応えられませんでした。4馬身差3着にもイギリスのハイ・スタンディング High Standing 。
リーガル・パレードは41対5のオッズ、去年のヘイドック・スプリント・カップに続くGⅠ2勝目の実力馬です。当然ながら、この秋はヘイドック2連覇を目指し、最終的には再度フランスに遠征してラ・フォレ賞を狙う予定。
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