古典四重奏団・ショスタコーヴィチ・ツィクルスⅡ

10月3日の第1回に続く2回目。このところロシア音楽ばっかりだなぁ、と思いながら晴海へ。それもチャイコフスキーとショスタコーヴィチ。
日曜の日本フィルは二人の作品を並べたコンサートでしたし、月曜の読売日響はオール・チャイコフスキー。そして今日はオール・ショスタコーヴィチ。

ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第4番 二長調 作品83
ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第5番 変ロ長調 作品92
~休憩~
ショスタコーヴィチ/弦楽四重奏曲第6番 ト長調 作品101

元々ロシア音楽は、明治期にクラシック音楽が輸入された頃から、日本には深い関わりがありました。現代の演奏会でもロシア音楽、ロシアの演奏家が人気を博しているのは、やはり精神的に共感できる部分が多いのでしょうね。政治的なことは解りませんが、音楽的には日露は同盟国と言ってもいい。

古典四重奏団は二日目も好調。最初の一音から物凄い集中力と速目のテンポ、緊迫した演奏スタイルで惹き付けます。
演奏会は、必ずしも最後に向かってクレッシェンドするものではありません。特に今日のプログラムは、作曲順という配列も手伝って、むしろ穏やかな方向に導かれる様に構成されています。聴き手は、そのことを事前に予習しておくべきでしょうね。熟練した聴き手なら曲目を一瞥しただけで納得するでしょうけど。
ですから古典四重奏団は、いわゆる「受け狙い」の演奏態度とは完全に無縁です。彼らが明かしてくれたショスタコーヴィチの裏技とは、

第4番
これは明らかにユダヤ・シリーズの1曲。とは言いながら全体は極めて構成的に書かれています。二音のドローンがホ音のドローンに変わる間のフレーズが、1・2・4楽章で再現する。
終始弱音器を付けて奏される第3楽章は一種の革命歌で、そのひたひたと迫る緊迫感がたまりませんね。
圧巻はフィナーレです。手拍子を連想させる伴奏に乗って歌い上げられるユダヤ風主題。それが狂乱にまで上り詰めた後、全体を貫くフレーズが気持を鎮めていきます。家内はこれが一番気に入った、と言ってました。初めて聴く人にも強いインパクトを与える作品です。
(ショスタコーヴィチは何故ユダヤに拘ったか。理由は明らかなように思いますが、自身では明言していません)

第5番
冒頭でヴィオラが奏するのは、ショスタコーヴィチの音名暗示DSCHを入れ替えて組み合わせたもの。この主題が作品全体の核になっているのです。
練習番号29から fff で絶叫するヴァイオリンの主題は、弟子でもあり愛人でもあったウストヴォルスカヤのクラリネット・トリオの主題。このあとチェロにも繰り返されますが、コーダで第2ヴァイオリン以下のピチカートに乗って、第1ヴァイオリンが虚脱気味に囁く個所のほうが聴き取り易いでしょうね。
ウストヴォルスカヤはフィナーレの第3楽章でも ff で激しく主張します。このとき同時に鳴らされるのはショスタコーヴィチの主題。これ、何を意味するんでしょうねェ。
第2楽章の中間部には、「カテリーナ・イズマイロヴァ」からの引用も顔を出します。ここを切々と弾く川原さんの表情、ショスタコーヴィチに見せたかったなぁ。
(ショスタコーヴィチとウストヴォルスカヤの関係。ウスウスは判っていますが、自身では明言していません)

第6番
前2曲とは雰囲気がまるで違います。憑き物が落ちた、というか、リラックスしたショスタコーヴィチ。確か自分の誕生祝として自ら書いた作品じゃなかったかしら。
従って全篇にユーモアが満ち溢れている。あからさまじゃなく、隠し味。
出だしが良いですよね。ヴィオラの同音に乗って軽やかな主題、ミファソ~~ミファソ~~。この展開が第4楽章のコーダにも再現してくるでしょ。でもひっくり返して、ミレド~~、ミレド~~。
それだけじゃないです。この四重奏曲、全部で4楽章あるんですが、楽章の終わりは全部同じフレーズなんです。この手品、ハイドンが似たようなことをしていましたっけ。確か作品76の1(これもト長調!)。ハイドンは第1楽章を始めるフレーズを楽章の終わりで再現し、ご丁寧に第4楽章の終わりでも登場させています。私の勝手な想像ですが、ショスタコーヴィチはハイドンを手本にしたのじゃないでしょうか。
もう一つのオマージュはバッハ。第3楽章はパッサカリアですね。この主題、第4楽章でも謎解きのように再現されます。何処か判るかな、というように(練習番号80からのチェロですけど)。
という具合で、これはバッハやハイドンの裏技をショスタコーヴィチ風にアレンジし、隠し味として使いながら、見事に1曲の弦楽四重奏曲の中に封じ込めている。音楽として表現された最高に上質なユーモア。
(4・5・6の各曲は、夫々が作曲者の自画像のように聞こえてきます。ショスタコーヴィチの三つの顔。もちろんそんなこと、自身では明言していません)

曲の配列の所為でしょう、極めて重い音楽を聴いたあとでも、爽やかな聴後感が残るコンサートでした。また言っちゃいます。
ブラヴォ~、古典四重奏団。ブラヴォ~、ショスタコーヴィチ。

 

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