秋のロンシャン開幕

日曜日、いよいよフランスの平場競走がロンシャンに戻って来ました。一月後に迫った凱旋門賞フェスティヴァルのトライアルが本格的にスタートします。
その第一週、4鞍のパターン・レースが行われました。レース順に。

先ずはラ・ロシェット賞(GⅢ、2歳、1400メートル)。7ハロンという距離からして、2歳チャンピオン決定戦のジャン=リュック・ラガルデール賞(旧グラン・クリテリウム)へのトライアルとなる一戦です。

6頭立て。イーヴン(単勝2倍)の1番人気を集めたのはリステッド戦を含めて3連勝中のマイグリ Maiguri でしたが、勝ったのは31対10で2番人気のマイ・ネーム・イズ・ボンド My Name Is Bond
1馬身半差の2着にイギリスから挑戦した(トム・ダスコウム厩舎)ハング・パーラメント Hung Parliament が入り、本命マイグリは頭差3着に終わりました。

勝時計1分20秒5は、ロシェット賞のレース・レコード・タイム。騎乗したクリストフ・スミオン騎手はほとんど追う所の無い楽勝でしたから、結果以上に力を秘めた馬かも知れません。

マイ・ネーム・イズ・ボンド(父はムッシュ・ボンド Monsieur Bond)を管理するジャン=クロード・ルジェ師は、同厩所属の2歳馬の中でも最も能力の高い1頭と太鼓判を押しています。その能力を信じて、この日はスミオン騎手に後ろから進むように指示していたほど。
これまでの4戦はいずれもボルドーでのレースでしたが、ロンシャンでも高い能力を誇示しました。次走は、当然ながらグラン・クリテリウムになるでしょう。

続いてリュテース賞(GⅢ、3歳、3000メートル)。3歳馬限定の長距離戦です。

6頭立ての1番人気(これもイーヴン)は、アガ・カーンの逸材牝馬シャマノヴァ Shamanova 。これまで5戦2勝2着3回と、日本流に言えば「連を外さない」馬です。これまでは牝馬限定戦ばかり使っていましたが、今回は初めて牡馬とのレースとなります。

しかしシャマノヴァは2着癖がついているのか、牡馬相手に好走と評すべきか、またしても2着に終わってしまいました。
優勝は終始後方を進んだ12対1の伏兵ブリガンティン Brigantin 。ゴール前100ヤードで本命馬を交わしての差し切り勝ちです。2着シャマノヴァとの着差は4分の3馬身。更に4馬身差3着にパーミット Permit の順。

勝ったブリガンティンはアンドレ・ファーブル師の管理馬で、鞍上はピエール=シャルル・ブードーという人。ブリガンティンの馬主はファーブル夫人で、夫人は同馬の生産者でもあります。

6月10日に行われたスイス・ダービーの勝馬で、前走ヴィシーでは1着ながら失格になっていました。失格の理由が、負担すべき重量を間違えたから、という珍しい記録の持ち主でもあります。

このあとは10月2日のショードネー賞に向かう予定。そこで再びシャマノヴァと雌雄を決することになるでしょう。(あ、雌雄は決まっているか)

この日のメインは、1マイルの頂上決戦たるムーラン・ド・ロンシャン賞(GⅠ、3歳上牡牝、1600メートル)。せん馬には出走資格がありません。

6頭立てながらメンバーは強力。英国のハノン厩舎が送り込んだパコ・ボーイ Paco Boy が13対10の1番人気に支持され、フランスの2冠馬ロぺ・デ・ヴェーガ Lope De Vega が5対2で続きます。

しかしレースには波乱が・・・。

まずゲートインを嫌ったフュイッセ Fuisse が暴れ、ステファン・パスキエを二度も振り落としてしまいます。特に二度目はそのままコースを一周し、漸く係員が馬を制止してスタートに。イギリスならゲートインを嫌った段階で発送除外にしてしまうのが普通ですが、フランスのスターターは実に忍耐強い。このケースでも発走は15分遅れとなりましたが、フュイッセも無事にスタートを切りました。

レースはシユーニ Siyouni が飛び出し、スローペースに落とします。ゴドルフィンのリオ・デ・ラ・プラタ Rio de La Plata が2番手につけ、パコ・ボーイがいつもより早めに3番手という展開。
スタートのアクシデントに熱くなってしまったのか、ロぺ・デ・ヴェーガは前半で引っ掛かり、本来の走りが見られません。

最後の1ハロン、先行したシユーニとリオ・デ・ラ・プラタの2頭の叩き合いで決着するかと思われた時、最後方から大外を追い上げたフュイッセの末脚が爆発。3頭が並んでゴールする接戦となりましたが、1着はフュイッセ、頭差2着にリオ・デ・ラ・プラタ、更に頭差3着がシユーニの順で確定しました。
仕方なく内を衝いたものの前が開かない不利があったパコ・ボーイは1馬身半遅れて4着、競馬にならなかったロぺ・デ・ヴェーガは5着敗退です。

スタートでお騒がせのフュイッセは、99対10のオッズ。クリティック・ヘッド=マーレクが調教する同馬は、ヘッド姉御の両親が生産した馬でもあります。
今回は様々なアクシデントが味方した格好ですが、前走ジャック・ル・マロワ賞ではシッカリ4着に食い込んでいた実績のある馬です。

最後はデュ・パン賞(GⅢ、3歳上、1400メートル)。GⅠのフォレ賞の前哨戦と言えるレースですね。
1頭取り消しがあり、8頭立て。イーヴンの1番人気はダルガー Dalghar でしたが、このレースでも本命馬は勝てませんでした。本命馬にとっては厄日だったとしか言いようがありませんな。

優勝を攫ったのは、53対10のサープレザ Sahpresa 。去年の京都でマイルチャンピオンシップ3着の馬と言えば、我々にも馴染の牝馬ですね。(日本では「サプレザ」と表記)
1馬身半差2着が本命のダルガーで、更に1馬身差3着にエヴァポレーション Evaporation 。

勝ったサープレザはロドロフ・コレ厩舎所属。騎乗したクリストフ・スミオンは、逃げるダルガーをムチ一発で捉え、ほとんど馬なりの楽勝でした。スミオン騎手にとっては、ラ・ロシェット賞に続いてパターン・レースの「楽勝ダブル」達成です。

サープレザは当然ながらフォレ賞が目標になりますが、去年勝ったサン・チャリオット・ステークス連覇という路線もあり、選択肢は多様であると申せましょう。京都への再挑戦という目もあるかもね。
いずれにしても、能力を発揮できる良馬場を選んでのローテーションとなるでしょう。

ということで、愈々来週のロンシャンでは凱旋門賞のトライアルが行われます。ナカヤマフェスタにしてもヴィクトワールピサにしても、鼎の軽重が問われる試走となることは間違いないところ。

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